結婚8年目、セックスレス5年。子供がいなくても仲良し夫婦? でも、大事なことは話せない――圧倒的リアリティで読者をゆさぶる『それでも愛を誓いますか?』

マンガ

更新日:2020/4/19

『それでも愛を誓いますか?』(荻原ケイク/双葉社)

 出産の明確なリミットを肌で感じている女性は「〇歳までに結婚」「子供をつくるなら〇〇しなきゃ」と逆算で計画しがちだが、男性がそれを重荷に感じるケースは少なくない。。

 マンガ『それでも愛を誓いますか?』(荻原ケイク/双葉社)の主人公・純(35歳)と武頼(39歳)も同じだ。結婚8年目、セックスレス5年。子供はいないけれど、仲はいい。だけど夫婦の幸せは、焦りを押し殺した純の試行錯誤と、武頼の見ないふりによって、成り立っている。

 子供が欲しいなら早くしないと間に合わない。間に合わなくなってから「やっぱり欲しい」と言われても困る。だったら「夫婦ふたりでも幸せになろう」と誓ってほしい。セックスできないなら、せめて抱きしめてほしい。

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 だけど武頼はいつだって、純の訴えにめんどくさそうな顔をするだけ。自分が悪いのかと悩み、SNSに投稿される子供の写真に落ち込んで、「なんで産まないの?」という無邪気な問いかけに傷ついている。そんな現状を変えたくて、純が派遣社員として働きはじめたところから、2人のすれ違いはますます深まっていく――。

 武頼が子づくりを避けるのには彼なりの理由があるのだが、あまりに純がけなげで、その葛藤にもわかりみが強すぎるため、どうしても「言えよ!」と思ってしまう。プライドもあるだろうし、純に嫌われたくないと思ってもいるのだろう。だけど、シングルマザーになった元カノ・足立さんとのLINEのやりとりに逃げ、危ないとわかっていて飲みに行き、まんまとキスされてしまうのだから「あほか!」と思わずにはいられない。

 というわけで、純がひとまわり下・コミュ障男子の真山にぐいぐい迫られるのを、読者が応援したくなるのも無理はない。だが、初恋で勢いづいている真山と、純が離婚して一緒になるというのも、はたしてそれが幸せか? 子どもが欲しい問題は解決しなくない? とも思ってしまう。武頼も悪い奴じゃないので、できることなら再構築してほしいのだけど、真山も足立も簡単には退いてくれそうもなく。ますます波乱を呼びそうな四角関係。その果てにいったいどんな“幸せ”が待っているのだろうか。

文=立花もも

【1話から読む】『それでも愛を誓いますか?』

(c)荻原ケイク/双葉社