互いを思いやるふたりの関係に、“嫉妬”が見えてしまったら――。野田彩子の『ダブル』第2巻は、不穏な未来を予感させるラストだった

マンガ・アニメ

2020/4/1

『ダブル』(野田彩子/ヒーローズ)

『潜熱』で注目を集めたマンガ家・野田彩子さん。その最新作である『ダブル』(ヒーローズ)の第2巻が発売された。本作は第23回文化庁メディア芸術祭「マンガ部門 優秀賞」を受賞し、いま最も熱視線を浴びている作品だ。

 主人公を務めるのは、鴨島友仁(かもしま・ゆうじん)と宝田多家良(たからだ・たから)のふたり。ともに役者として頂点を目指す彼らは、まさにダブル――ふたりでひとつの存在である。けれど、そこには絶対的な違いがあった。役者として群を抜く才能を持つ多家良に対し、友仁はただの凡人だったのだ。

 芝居以外のことがなにひとつできない多家良。友仁はそんな彼の才能を早々に見抜き、甲斐甲斐しく身の回りの世話をする。その姿はまるで、自身の夢を多家良に託し、崩れ落ちそうな自分の立ち位置をなんとか保とうとしているようにも見える。友仁にとって、多家良の存在はアイデンティティになっているのだろう。では、多家良は? 正直、友仁の代わりはいくらでもいるようにも思える。

 ところが、第2巻では、多家良にとっても想像以上に友仁が大切な存在であることがはっきりと描かれている。

 第1巻で芸能プロダクションにスカウトされた多家良は、周囲の期待通り、映像作品への出演を決めていく。第2巻で多家良は、なんと巨匠である黒津監督の新作映画へ出演することになるのだ。

 その現場で事件が起こる。

 一部始終を目撃したとき、読者はきっとこう思うはずだ。多家良のなかには、想像以上に友仁が根付いている、と。

 第1巻を読んだ時点では、友仁が多家良に“すがりついている”ようにも見えた。圧倒的な才能を持ち、きらびやかな世界へ羽ばたこうとしている多家良にしがみつくことで、友仁も同じ夢を追体験しようとしているのだ、と思った。けれど、ふたりの関係はそんなに単純なものではなかった。

 もしかすると、友仁よりも多家良のほうが、“自分の片割れ”を必要としているのかもしれない。その描写を目にしたとき、彼らの関係を美しいと感じる一方で、とても恐ろしいとも思ってしまった。いまはまだバランスがとれているからいい。しかし、その天秤の均衡が崩れてしまったら――。

 そんな不安を助長されるのが、第2巻のラストシーンだ。そこで多家良は、ひとつの真実に気がついてしまう。言うなればそれは、最悪で残酷な真実だ。この先、多家良と友仁の関係はどう変化していくのだろう……。

 野田さんは“他者との複雑な関係”を描くことに長けている作家だ。『潜熱』でもヤクザに恋をしてしまう女子大生の姿を通じ、常識や倫理観では制御できない感情を描ききった。野田さんの作品に登場するキャラクターには確かに血が通っており、だからこそ、こんなにも読み手の胸を打つのだろう。

 いよいよ物語が大きく転がりだしそうな『ダブル』。多家良と友仁の未来に破滅が待っていないことを祈りつつ、追いかけていきたいと思う。

文=五十嵐 大

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