「塩なし」でもおいしい料理はできる! 日仏で大活躍の料理人、松嶋啓介氏が提唱

暮らし

公開日:2020/4/17

 最近、「塩なし」の食品が続々とコンビニやスーパーに登場して話題となっている。日本とフランスをまたにかけて活躍する料理人、松嶋啓介氏も塩なしを強く推奨している。塩なしがいかに体にとってよいのか? 塩を使わず食材のうま味をひきだすことで、美味しい料理をつくるのは可能だという松嶋理論がつまった1冊が『最強! 塩なし料理理論』(松嶋啓介/主婦の友社)。巣ごもり生活を強いられる可能性が高い現在、健康維持に必須な内容だ。

『最強! 塩なし料理理論』(松嶋啓介/主婦の友社)

食の便利さと引きかえに「健康」を失っている

 著者の松嶋啓介氏は20歳でフランスに渡り、25歳でニースにレストランを開業した。そして開業3年目のとき、外国人としては最年少でフランス・ミシュランの星を獲得したというキャリアの持ち主だ。「ミシュランの星を獲得したことは光栄ですが」と前置きした上で、松嶋氏は「日本人の食生活をどうにかしなければ」と真剣に考えている。そのキーワードは「塩なし」と「うま味」だ。

人はなぜ塩を求めるのか?

 我々の祖先たちは生き延びるために微量の塩にも反応するセンサーとして舌を利用してきたそうだ。そのうち、甘味やうま味にも塩分が含まれていると、脳がより強く反応し、「もっと食べたい」と考える仕組みができあがったと言われる。すいかに塩をひと振りする、おしるこに塩をひとつまみ入れるといったことは皆さんも経験があるはず。最近の研究によれば、甘味と一緒に塩を摂取したほうが人の舌の甘味を感知するセンサーは1.5倍も強く反応するそうだ。そうして塩分摂取過多になれば高血圧や動脈硬化、腎臓病をはじめとする病気も招きかねない。これこそ、松嶋氏が鳴らす警鐘だ。

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日本人の塩分摂取量は多い

 厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査」によれば、日本人の一日の平均塩分摂取量は男性10.8g、女性9.1gで、厚生労働省の推奨する「日本人の食事摂取基準」である18歳以上の男性8g、女性7gを軽く超えている。世界保健機関(WHO)が推奨する成人一日あたりの塩分摂取量(5g以下)や日本高血圧学会の推奨値6g未満と比べると、実に2倍近くオーバーしている。2020年には「日本人の食事摂取基準」が改訂され、塩分相当量の一日摂取目標量は7.5g未満に、18歳以上の女性が6.5g未満に引き下げられる予定だ。「減塩」の必要性がいよいよ深刻になってきたといえよう。

「うま味」を多いに利用して塩がなくてもおいしい食生活

「塩なしの料理なんておいしくない」と思う人も多いだろう。それに対して松嶋氏は、「難しいことは特にありません。誰にでもできるちょっとした工夫やコツがあるだけです。それさえ知っていれば、料理のプロでなくても、家でじゅうぶんおいしく作ることができます」として、3つの提案をしている。

1.「うま味」をおおいに利用する
2.火を味方につけ、低温調理で素材自体の味を引き出す
3.スパイス、薬味を上手にとり入れる

 どれも、ほんの少しの心がけでできることではないか。めんどうくさくなく、調味料をたっぷり使わなくても、心も身体も満足させる料理。そんな料理を作れたらこんなにハッピーなことはないだろう。

うま味は大きく4種類に分かれている

 一口に「うま味」と言っているが、大きく4種類に分かれている。アミノ酸の中に含まれるグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸とコハク酸だ。普通は最初の3種類のことを指すが、松嶋氏はコハク酸もそれに含まれると考えている。含まれている主な食材は以下となる。それぞれをかけ合わせて料理することでうま味の相乗効果も期待できる。

 またうま味をしっかり引き出すためには低温調理で時間をかける、スパイスをじょうずに使うことで塩なしでもおいしい料理が実現できる。

 スパイスには、カレーに含まれるクミン、ターメリック、ガラムマサラなどのほか、こしょう、シナモン、バジル、クローブ、セージ、オレガノ、パセリ、パクチーも含まれる。日本のさんしょうやわさびなども立派なスパイスだ。スパイスと玉ねぎ、にんにく、しょうが、トマトを弱火で炒めると、甘味がじわじわと引き出され、そこにうま味と苦味が加わることで塩がなくてもじゅうぶんに味を感じることができる。「味をつける」という表現があるが、調味料を入れることを意味するのではなく、本来は自然の味をどう引き出すか? ということにあるのではないか。自然な甘味なら、血糖値が急激に上がることもない。

塩を使わないでカレーも作れる!

 今年の3月3日からナチュラルローソンで、食塩・うま味調味料不使用の「玄米のダールカレー(レンズ豆)&ココナッツチキンカレー」が発売され大好評を得た(第1弾、近々第2弾を予定)。このカレーをローソンと共同開発したのが松嶋氏。本書でも塩なしレシピを紹介しており、カレーのレシピも掲載している。ひとつご紹介しよう。

◎ココナッツカレー
材料/作りやすい分量

玉ねぎ(みじん切り)…1/2個
にんにく…1/2片
しょうが(みじん切り)…1/2かけ
トマト(ざく切り)…1個
ココナッツミルク…1缶
チリパウダー…小さじ1
サラダ油…適量
鶏肉(もも肉、むね肉どちらでも。一口サイズにカット)、えびなど
A(以下)
フヌイユシード…小さじ1/2
カルダモン…1粒
シナモンスティック…1本
ローリエ…1枚
ターメリック…小さじ1

1 にんにくは包丁の背でたたきつぶし、みじん切りにする。鍋にサラダ油、にんにくを入れて弱火にし、香りが出てきたら、玉ねぎ、しょうがを加える。
2 玉ねぎが透き通ってきたら、Aのスパイスを加え、弱火で10分ほど加熱する。
3 2にトマトを加えて15分ほど煮込む。
4 3にココナッツミルクを加え、10~15分(ココナッツミルクにある程度濃度がつくまで)煮込む。
5 固形のシナモンスティック、ローリエ、カルダモンをとり除き、ミキサーでジュース状にする。
6 5に鶏肉を加えて弱火で10分加熱し、チリパウダーで味をととのえる。

ココナッツカレー(右)のほかにも本書では、ダールカレー(左)、ほうれんそうカレー(上)のレシピも紹介。塩なしを感じさせない、あとを引くおいしさ!

「健康のためにおいしくなくても仕方ない」、ではなくうま味を味方につけて、塩なしでもおいしい料理で自己管理をしっかりしたいものだ。