発売したばかりなのにドラマの原作!? ツイッターで大人気のレンタルなんもしない人、最新刊発売

文芸・カルチャー

2020/5/19

『レンタルなんもしない人の“もっと”なんもしなかった話』(レンタルなんもしない人/晶文社)

「レンタルなんもしない人」はサービス名であり、人名でもある。レンタルなんもしない人のツイッターでは、いちばん上にサービスの内容が記載されている。(2020年4月時点の内容)

「なんもしない人(ぼく)を貸し出します。常時受付中です。1万円と、国分寺駅からの交通費と、飲食代等の諸経費だけ(かかれば)お支払いいただきます。お問い合わせはDMでもなんでも。飲み食いと、ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます。」

 去年、あるパーティで本人に初めて会った。主催者が依頼したのだと思う。私たちが話しかけると、普通に会話してくれた。

 レンタルなんもしない人は、その名のとおり何もしない。私たちに何かを期待することもない。最初は緊張して気を遣おうとしていた私も、気遣いをやめた。期待されないって、こんなに楽なことなのか。何もしない人といることの居心地の良さを生まれて初めて感じた瞬間だった。

 そのレンタルなんもしない人が4月からNEWSの増田貴久さん主演でドラマになり、同時に新刊『レンタルなんもしない人の“もっと”なんもしなかった話』(晶文社)を刊行した。

 本書はレンタルなんもしない人のツイッターの投稿が載せられている。つまり全て事実なのだが、著者の何もしてなさと依頼内容の奇抜さが絶妙なコントラストを生み出している。

「現実は小説より奇なり」

 そんな言葉が頭に浮かんだ。ただ、その「奇」を呼び寄せているのが、レンタルなんもしない人自身だというのが逆説的で面白い。

 本書はレンタルなんもしない人がこれまでに出した本と、大きく異なる部分がある。2019年9月、それまで交通費のみでサービスをお願いできたレンタルなんもしない人が、有料化したのだ。

 これは依頼者の依頼内容に大きな影響を与えたように思う。事実、依頼内容が微妙に変化し始めたのだ。

“今日はホテルで呪いの人形アナベルと一緒に寝ます”

 この一文を読んだとき、私は寝起きで、一瞬ブラックジョークかと思った。だが実際にアナベルがベッドに寝そべり著者と過ごしている写真を見て目が覚めた。

 本書を読み進めていくとシリアスな依頼も多くなる。

“駅から労働基準監督署まで一緒に歩いてほしい”

“兄が自殺した場所を見に行くのについてきてほしい”

 レンタルなんもしない人が何もしないこと。無料でも有料でも、依頼内容のテイストが変化しても、その本質は変わらない。そして本人すら意図していないところで、誰かが「何もしてなさ」に救われる。

 レンタルなんもしない人の世界観にどっぷりと浸ると、不思議なことに新しい時代がやってくるような気がした。この本を読みながら、レンタルなんもしない人がこれからどのような依頼を受けるのか、もっと知りたくなった。

文=若林理央

この記事で紹介した書籍ほか