DV夫と離婚してAV女優に。小6の娘に職業がバレた時、母子関係はどうなった? 『AV女優の家族』

社会

2020/7/2

AV女優の家族 (光文社新書)

著:
出版社:
光文社
発売日:
『AV女優の家族』(寺井広樹/光文社)

 かつてはAV女優という職業は後ろ暗いイメージや偏見を持たれることが多かったように思う。だが、近ごろではバラエティ番組やYouTubeにもAV女優が出演することが増えてきており、磨き上げられたその容貌は同性にとって憧れの対象になることもある。ポリシーやプライドを持って自分の職を貫こうとする姿に、理解が寄せられつつあるのだろう。
 
 では、彼女たちの身内は何を考え、家族としてどんな関係を築いているのだろう。『AV女優の家族』(寺井広樹/光文社)は、そういった視点からAV女優たちの人生を知る、斬新なルポルタージュだ。
 
 本書には「牛乳に相談だ」のCMで注目を浴びた白石茉莉奈さんのようなベテラン女優から、デビューして1年の新人・優月心菜さんなど、全5人のAV女優が登場。AV出演の経緯や、身内に職業を打ち明けた時の心境、家族の反応、そしてそれぞれの現状と未来への想いが収められている。

DV夫との離婚でAVデビュー。娘にはどう伝えた?

「この親子関係、すごいな」――そう思わされたのが、シングルマザーとして娘のつむぎさんを育てるためにAVの道を決意したという当真ゆきさんのエピソード。ゆきさんは高校在学中に妊娠。結婚するも夫のDVにより、出産から2カ月で離婚。職にありつくため上京し、AV女優になった。

 自分の職業が家族に知れたのは、つむぎさんが小学校6年生の時。ネット上に出回った画像を見られたため、経緯などをじっくり話した。すると、つむぎさんは「そんな思いをして育ててくれたんだ」と感謝の言葉を口にしたそう。

 だが、良好だった親子関係はつむぎさんの反抗期を機に、一変する。高校に行かなくなったのを注意したところ、思わぬ言葉が返ってきた。

「『ママなんて高校卒業したって、そんな仕事してんじゃん』って言われて。(中略)『そんな仕事って、簡単な仕事って思うなら、今すぐ高校辞めてママみたいな仕事をしてみろ!』って話になって」

 売り言葉に買い言葉となり、つむぎさんは実際に高校を辞め、リフレで働きはじめた。しかし、1カ月ほどしたある日、高校を辞めたことへの謝罪や苦労して育ててくれたことを知ったという感謝のLINEがゆきさんに送られてきて、親子関係は修復されたそうだ。現在、つむぎさんはいちゃキャバで働きつつ、通信制の大学に通う準備をしている。

 当真さん親子は、いわゆる一般的な親子関係とは違うかもしれない。例えば、現在デリヘルを兼業しているというゆきさんは、娘のつむぎさんがいちゃキャバで働いていることを話し、自分の客を回すこともあるそうだ。

 本人が納得しているなら応援し、サポートする。それは相手を信頼し、尊重していなければできないことだ。ざっくばらんに自分たちらしい親子関係を築き上げた2人は、単なる親と子というよりも、人と人として繋がっているように思えた。それは、本書に収録されているつむぎさんのインタビューからも強く伝わってくる。

 性産業に従事していることは、身内だからこそ言いにくく、聞きにくいもの。だが、世界中の人に分かってもらえなくても、自分の仕事に誇りを持っていることを身内の人間には分かってもらいたいと願う人も少なくない。その願いを叶えるには、AV女優という存在に向ける私たちの視線を変えていく必要があるだろう。

 AVへの出演を夢を叶えるステップにしたいという思いや、ゆきさんのように家族を養うためにという親心は、決して偏見の対象にされたり、蔑まれたりするべきものではない。自分の体を一商品として磨き続けることも並大抵の努力でできることではないだろう。だからこそ、AV女優が幅広いジャンルで活躍しはじめた今、自分がどんな目で彼女たちを見ているのかを心に問いかけたい。

 本書には、お笑い芸人からAV男優に転身した、出てこい中平くん2号のエピソードも収録されている。「結婚は諦めた」と語る、AV男優ならではの覚悟も必読だ。

 もしも、親や子ども、兄妹からAVに出演していたと聞かされたら、自分ならどう答えるだろう? その答えはすぐ出ないけれど、もし本人が納得しているのならば、その思いや歩んできた人生を受け止めたいと思う。人の職業を好奇の目だけで見たり、その人生を否定したりする権利は誰にもない。身内にしかできないサポートや応援の方法を見つけたい。

 そう考えるきっかけをくれた本書には、各家庭の家族愛と、自分の人生に誇りを持つ女優たちの信念が詰め込まれている。

文=古川諭香

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