ドラマ「半沢直樹」を原作小説と比べてみるとこんなにおもしろい! 新シリーズ開始前に読み比べ!

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公開日:2020/7/13

『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』(池井戸潤/講談社)

 42.2%という驚異的な高視聴率を記録した人気ドラマ「半沢直樹」がコロナによる延期を経て、ついに帰ってくる。前ドラマシリーズの前半で、東京中央銀行本部・営業第2部の次長へ華々しい栄転を果たした半沢。ドラマ後半では、その経験が買われ頭取直々に、巨額の運用損失を出した老舗ホテル「伊勢島ホテル」の再建を任されることに。120億円の損失を見抜けなかった法人部の責任を一手に負わされた上、ホテル内では同族経営でありながら経営者として優れた素質を持つ湯浅社長と、自分こそが社長にふさわしいと考えて乗っ取りを企む専務・羽根夏子という内部分裂も起きている最悪の状況だ。
 
 そんなホテルを、金融庁が“実質破綻企業”だと認定すれば、銀行はホテル倒産に備えて国に“引当金”なる保証金を支払わなければならない。この額は、銀行をも揺るがす大損失だ。半沢は、ホテルの要人の証言によって銀行内の何者かが“赤字経営をもみ消した”という事実を知り、その不正融資を手引きしたのが自分の上司・大和田常務だと突き止める。
 
 大和田といえば、かつて半沢の父が経営するネジ工場の融資を断ち切り、父を自殺に追いやった、いわば“因縁の相手”だ。今や大和田の目的は、羽根専務と結託し、銀行を巨額の引当金を支払わなければならない状況に陥れた現頭取を引責失脚させること。
 
 しかし、半沢と湯浅社長は、伊勢島ホテルを海外大手ホテルチェーンの傘下に入れるというそれまで誰もが予想しなかった手法で再建。その結果、羽根専務を更迭する。また、大和田の妻が経営する会社への迂回融資の事実を突きとめ、あわせて大和田を糾弾。鋭い舌鋒で大和田を土下座させ、半沢は「やられたらやり返す。100倍返し」を果たすのだった…。

【ドラマ『半沢直樹』前半のあらすじ振り返りはこちら

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流行語にもなった「倍返しだ!」原作ではどう描かれた…?

 放送当時、社会現象ともなった「倍返しだ!」という印象的なフレーズ。ドラマでは6回ほど口にしているようだが、原作で確認できるのはごくわずか。半沢が語る流儀、「オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それにこたえる」という流れで何度か登場するにとどまっている。

 このほか、原作とドラマでは異なる点が多々あって興味深い。原作本にはないトピックとして挙げられるのは、半沢の父が自殺する点や、金融庁の黒崎がオネエ言葉を使うなどのキャラクター設定だ。半沢の心強い味方である妻・花は、原作だと半沢に対してもキツく当たる“悪妻”として描かれ、ドラマ前半で大いに活躍してくれた東田の愛人・未樹の感動的に描かれていたネイルサロン融資の件も原作にはない。また、作品の象徴ともいえる大和田の土下座シーンもじつはドラマオリジナルで、原作では「微動だにしない」様子が描かれている。

 そして、物語の根幹を支えた半沢の良き同期である渡真利や近藤といった3人組だが、原作では書籍名『オレたち…』の通り、英語が堪能な押木や法務畑を歩む苅田など多くの同期が登場する。ドラマ2期では、キャスティングに苅田の名があるので楽しみにしたいところだ。

 つまり、ドラマでは極力登場人物を減らした上、キャラ設定を濃くすることで、あくまで視聴者にわかりやすくかつドラマチックに“リベンジ劇”を伝えたかったのではないだろうか。

 新型コロナウイルスの影響で撮影スケジュールに支障が生じ、放送開始日が延期されたこの人気ドラマ。いよいよ始まる新シリーズを前に、ぜひとも原作と比べながら一読してみてはいかがだろうか。

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