日本のスマホ代は海外と比べてこんなに高い! 菅官房長官が「4割下げられる」と語る根拠は?

ビジネス

公開日:2020/9/9

『スマホ料金はなぜ高いのか』(山田明/新潮社)

「日本のスマホ代は高すぎる!」米倉涼子が声高に叫ぶ楽天モバイルの一連のCMは、私たちの不満を代弁している。複雑な料金体系や、すぐにやって来る通信制限。大手3社であれば5GBで7000円程度かかるスマホ料金は、確実に私たちの家計を圧迫している。菅官房長官が「今より4割程度下げる余地がある」と発言したことも記憶に新しいが、それでも高止まりが続いている。スマホ料金は、なぜ下がらないのか?
 
 その背景には、大手3社による寡占市場や顧客の囲い込みに加え、官民の癒着構造などのさまざまな要素が絡んでいる。『スマホ料金はなぜ高いのか』(山田明/新潮社)では、NTT出身の著者がその原因を徹底的に解説。これまでの通信事業をめぐる歴史から、楽天参入による変化の兆しまで、一般には報道されにくい事実も交えて語ってくれる。

海外は料金が下がっているのに、日本はそのまま…

 そもそも、日本のスマホ料金はどれくらい高いのか。まずは、海外と比較して実情をつかむ必要がある。たとえば、家計最終支出に占める通信費の割合だと、日本は3.7%。これはOECD加盟国36カ国中4番目に高い数字で、韓国の3.1%や米国の2.5%と比べても高い。

 また、ギガあたりの料金はどうだろうか。本書よれば、よく使われる5GBモデルの場合、シェア1位の事業者で料金を比べると、外国5都市の平均に比べて2倍ほど高い(東京:7562円。外国5都市平均:3696円)。近年の動向でも、東京のスマホ料金が高止まりを続ける中、ニューヨークやデュッセルドルフは6~7割程度下げたというから驚きだ。海外に目を向ければ、菅氏の「4割」発言にもうなずける。

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なぜ、日本のスマホ料金は下がらないのか?

 次は、料金が下がらない理由を見ていこう。まずは何より、大手3社の寡占状態だ。新規参入がしにくい市場のため、3社はそれぞれ高い営業利益率を維持し、自ら値下げをしようとはしない(営利企業としては、当たり前の選択ともいえるだろう)。また、2年縛りなどの料金のわかりづらさで顧客を囲い込み、高額な支払いを続けさせてきた。

 加えて、あまり知られていない事実もある。ドコモやKDDIと総務省との「持ちつ持たれつ」の癒着関係だ。例えば、NTT(持株会社)の取締役を見ると、3人が総務省の事務次官経験者である。ドコモにも17名が天下りしている。こうした官民の関係が、通信事業の肝となる「電波の割り当て」にも関わってくる。日本は、先進国で唯一周波数オークションを実施せず、官僚に権限を持たせて電波を割り当てる。詳しい説明は本書に譲るが、著者はこうした事情が高止まりするスマホ料金を放置し続けてきたのではないかと指摘する。

 本書を読めば、なぜこのタイミングで楽天が参入してきたのかという背景もわかるだろう。スマホ料金を下げるには、強力なプレイヤーの新規参入が欠かせない。今、楽天が打ち出しているプランは、大手3社からすれば考えられないほどの低価格だ。通信事業への調整は、莫大な投資がかかりリスクが大きい。成功するかどうかもわからない。それでも、一市民としては、楽天が今の市場に風穴を開けることに期待せずにはいられない。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7