ムカつく友人、ダレ得な付き合いは「万能の決めゼリフ」で華麗にスルー! 本当はやめたかったことと決別して“自分のための時間”を取り戻そう

文芸・カルチャー

公開日:2020/10/24

ホントはやなこと、マジでやめてみた 誰にもジャマされない「自分の時間」が生まれるドイツ式ルール42
『ホントはやなこと、マジでやめてみた 誰にもジャマされない「自分の時間」が生まれるドイツ式ルール42』(アレクサンドラ・ラインヴァルト:著、柴田さとみ:訳、瀧波ユカリ:画/飛鳥新社)

 キラキラした女子会や街コンに参加するよりも、休日は家で自堕落に過ごしたい。年を重ねるにつれ、そう思うようになってきた。けれど、友人からの誘いを無下にするのはなんだか心が苦しくなるし、未婚のアラサーがこんな休日を求めていていいのかと、見えないプレッシャーも感じる。なんだか上手く自分の時間が楽しめない…。

 そんなモヤモヤをスッキリと解消してくれたのが『ホントはやなこと、マジでやめてみた 誰にもジャマされない「自分の時間」が生まれるドイツ式ルール42』(アレクサンドラ・ラインヴァルト:著、柴田さとみ:訳、瀧波ユカリ:画/飛鳥新社)。本書はドイツ発のエッセイ本。イラっとする友人と絶交したことを機に、「何となく受け入れてきたけれど、本心ではやりたくないこと」をどんどんやめていった著者の体験談がコミカルに綴られている。

 私たちはつい「理想の自分」になろうと根性論で努力するが、その一方で本当は気づいている。「頑張って努力すれば、どんなことも実現できる」が嘘であることに。美しいチョウチョになることを夢見て頑張ってみても、万年アオムシで、いつも何かに後悔している自分がいる。

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 それならばいっそ、可能性には限界があることを認め、今の自分を受け入れよう。そして、「どうにもできないこと」はサクっとスルーして、できる部分にフォーカスすればいい。そう語る著者は他人から「ムカつくヤツ」と思われず、いらないものややりたくないことを華麗にスルーするコツを教える。

友人からの気の乗らない誘いをスルーできる「万能の決めゼリフ」

 はっきりと断れず、気の乗らない誘いを愛想笑いでOKしては結局、後悔してしまう…。そんな負のサイクルを繰り返している人は意外に多いはず。相手が親しい友人だと、なおさら「嫌われたくない」「傷つけたくない」と思い、無理をしてしまうものだ。

 そんな人に、著者は「万能の決めゼリフ」を言うことで、誘いをスルーしようと訴える。気乗りしない誘いには「主義」を持ち出し、「私はやめとく。そういうのはしない主義なの」と断るのだ。

 長々と言い訳をしなくてもいいこのセリフには、不思議と「なら、仕方ない」と納得させられる説得力がある。相手からの連絡を無視したり、居留守を使うことに力を注いでいる方はぜひ活用してみてほしい。

 そうはいっても、心優しい人ほど友人をスルーすることに対して罪悪感を抱いてしまうだろう。だが、スルーは時として、相手のためになることもある。大事なのは、何をスルーするか見極めることだ。

 たとえば、著者はうつ病となった友人を「自分が何とかして助けてあげないと」と思い、奮闘したが、上手く助けられない自分に罪悪感を抱き、友人側も明るくなれないことを苦しく思ってしまった。

 そこで、著者は思い切って、相手や相手の病気に抱いていた「責任」を手放すことに。頑張る友人をただ見守り、進展に気づいたらその都度、感動を伝える方向にサポート法を変えた。すると、自分も相手も楽になれ、病と闘う姿から新たな一面を発見し、改めて友人に尊敬の念を抱けもしたという。

 身近な人が苦しんでいると、私たちはつい「助けてあげたい症候群」に陥ってしまうが、何かをスルーしてこそ、解決への糸口が見えてくる場合もある。「スルー」はネガティブな意味に取られやすいが、自分の心や相手との関係性を守るための武器にもなってくれるのだ。

“がんばって何かを克服する必要も、自分のケツを叩く必要も、期待も、「もっと◯◯な自分にならなきゃ」って焦りも、「変わらなきゃ」っていう思い込みも、ぜーんぶポイで。だって、そんな必要ないんだから。”

 こんなメッセージで心を明るくしてくれる本書では他にも、「義母に気に入られたい」という感情をスルーした時のエピソードや、ダレ得なアフターファイブの付き合いをスルーできた話など、多くの人が悩みやすい事柄にユーモラスな解決策を提示している。今の自分を振り返ることができるコミカルなチェックシートも随所に収録されているので、こちらもぜひ活用してみてほしい。

 自分が心から望むことだけを残して、それ以外はすべて捨てている著者の人生は張り詰めた心に、笑いと希望を与えてくれる。ここには、自分を好きにもなれない不完全な私たちがありのままで幸せを掴むコツが詰まっているのだ。

文=古川諭香