親子で楽しめる! まほうに振り回される少女たちを描く海外ドラマの原作本、待望の日本語版が登場

文芸・カルチャー

公開日:2020/11/28

まほうのレシピ
『まほうのレシピ』(シンディ・キャラハン:著、林 啓恵:訳/竹書房)

 Amazon Prime Videoでシリーズ3まで配信されている今人気の海外ドラマ「まほうのレシピ」をご存じでしょうか。まほうに振り回される少女たちを描き出したこの作品は、「ほのぼのとしていてクセになる」「『フルハウス』みたいで何だか懐かしい」「子どもと一緒に楽しめる」と、子どもをもつ親たちの間で話題のシリーズです。

 そんなドラマシリーズの原作本『まほうのレシピ』の日本語版(シンディ・キャラハン:著、林 啓恵:訳/竹書房)がついに刊行されました。ドラマも原作も、主要な登場人物は同じですが、ドラマでは原作をもとに新たな物語が展開されているため、原作にはドラマとは一味違った魅力が。ドラマのファンだという子も、ドラマとは違う展開にワクワクさせられることでしょうし、ドラマをみたことがない子も、不思議なまほうと少女たちの日々に惹きつけられるに違いありません。

 主人公は、料理が好きな12歳の少女、ケリー・クイン。ある日、ケリーは、お母さんから言われて屋根裏の掃除をしていたとき、不思議な本を見つけます。見た目は世界百科事典のTの巻。なのに、本を開くと、中には黄ばんだ便せんが貼られ、そこには料理のレシピがたくさん書かれていました。しかも、そのレシピは、おかしなものばかり。“お黙りコブラー”“呪いのベリーパイ”“愛のバグジュース”…。ケリーは、この本を手に入れたことをきっかけに、親友のハンナとダービーとともに、ひみつの料理クラブを結成します。そして、レシピ本の中に載っている料理をひとつひとつ試してみるのですが…。

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「まほうが描かれた物語」というと、空をホウキで飛び回るような大冒険を想像するかもしれません。ですが、この作品で描かれるのは、少女たちのごく普通のほのぼのとした日常。なんでも話せる親友もいれば、仲良くできない子もいるし、ちょっと気になる男の子もいる。近所には、どうしても苦手な、魔女のようなおばあちゃんもいる…。そんな悩みのつきない少女たちの日常に、不思議なレシピ本は、さらなる問題を招いてしまうのです。

 レシピ本の料理を再現しては、学校の友だちや家族を次々と巻き込んでしまうケリーたち。うるさい弟を黙らせたり、仲良くできない子に呪いをかけたり、好きな子に惚れ薬を飲ませてみたり…。ですが、どうやら、まほうは、掛けた方もただでは済まないようです。まほうを使うと、その分の「むくい」があり、ケリーたちにも、それぞれとんでもないことが起こり始めます。窮地に立たされたケリーたちは、結局は、まほうに頼らず、現実と向き合い、問題を解決する方法を考えなくてはならなくなるのです。

 この本を読んでいると、私たちが気づかないだけで、日常生活にも、たくさんのまほうが存在しているような気がしてきます。きっと、まほうのかかった料理で誰かを思い通りにしようとしなくても、もっと違う方法で人を動かす方法があるはず。子どもにありがちなトラブルの解決の糸口も、この本はさりげなく教えてくれます。不思議なレシピ本の巻き起こした問題のおかげで、ケリーたちは、日常にあふれた奇跡を少しずつ経験していくのです。

 まほうに振り回されながらも、確かに成長していく少女たちの姿に、子どもも大人も魅了されること間違いなし。また、本に登場するケリーのレシピが巻末についていて、作中のできごとに思いを馳せながらトライできる。混ぜるだけ、合わせるだけのものもあるので、子どもでもトライできそうだ。さらに、続巻も予定されているとのこと。この本の温かいまほうに、あなたもかけられてみてはいかがでしょうか。

文=アサトーミナミ