「傭兵の給料はどれくらい?」「戦場では何を食べている?」──傭兵経験者が語るリアルな傭兵ライフとは!?

マンガ

公開日:2020/12/29

日本人傭兵の危険でおかしい戦場暮らし
『日本人傭兵の危険でおかしい戦場暮らし』(にしかわたく:イラスト、高部正樹:著/竹書房)

「傭兵」――この言葉を聞いて『エリア88』や『B・B』といった漫画が浮かんだ諸氏は、割と古参の漫画好きかもしれない。傭兵とは雇われの兵士であり、早い話が金などの報酬で戦闘を請け負う人々である。平和な日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、もちろん架空の存在ではなく実在する。そして日本においても僅かながら、傭兵を生業とした人々は存在するのだ。『日本人傭兵の危険でおかしい戦場暮らし』(にしかわたく:イラスト、高部正樹:著/竹書房)は平和な日本では想像できないような戦場暮らしを、傭兵の視点から時に楽しく、時に悲しく描き出している。

 この漫画で傭兵として描かれる高部正樹氏は、幼少から軍人に憧れていたという。パイロットを目指して航空自衛隊に入隊するも、訓練中のケガが原因で除隊。それでも歩兵ならばと考え、どうせなら実戦を経験すべく傭兵としてアフガニスタンへ渡ったという。そこから引退するまでの約20年間、高部氏は各国の戦場を転戦してきたのである。そんな氏だからこそ語れるリアルな傭兵ライフであり、驚きのエピソードも満載。その中でも特に気になったものを紹介しよう。

傭兵の給料って一体どれくらい?

 先述の通り、報酬で戦闘を請け負うのが傭兵なのだから、命に見合う対価として、例えば高額な金銭を想像する向きは少なくあるまい。ところが高部氏からは、驚きの証言が。アフガニスタンで戦っていたときに貰っていた給料は「月に8000円」だったというのだ! 見た目にはものすごい札束が手渡されるのだが、内戦が発生するような国は大抵スーパーインフレになるのだそうで、数えてみれば日本円で8000円程度……。しかも反政府軍で戦っていたので街にも入れないから、使い道はほぼなかったとか。紙幣の信用が低く両替もできないため、仲間に配っていたと語る高部氏なのであった。

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戦場では何を食べているのか?

 戦場で兵士は基本的に「レーション」と呼ばれる戦闘糧食が支給される。しかしジャングルで敵に包囲されたりして孤立すると補給も届かなくなり、まさに「狩猟採集生活」へと突入するのだ。自生している植物は当然、生き物は貴重なタンパク源として重宝したという高部氏。それでも山猫やネズミは悪臭がひどく、最後まで慣れなかったようだ。また一番まずかったのは「ミミズのスープ」だったというが、さらにヤバい品も。それは水牛の大腸を「中を洗わずに」そのまま輪切りにしてスープにしたもの。明記はしないが、それは事実上「アレ」のスープなのである。高部氏によれば「味は…ちょっとほろ苦くて…正直…そんなに悪くは…なかった」らしい。……合掌!

傭兵は現地ではどう思われているのか?

 一応、外国から来て現地の人々を助けて戦っているともいえる傭兵だが、現地での反応はどうなのか。比較的平和な都市では歓迎されることもあったそうだが、戦闘で被害にあった人々の難民キャンプでは「この戦争屋が!」みたいな目で見られたという。また現地兵からも「遊び半分で戦争をしに来ている」と思われ、トラブルは絶えなかったとか。さらに傭兵は現地兵とは違い「兵員」の数には入っておらず、危険な先遣隊など「捨て石」のように扱われるのだ。それでも高部氏らは「傭兵なんてそんなもんだ」と割り切っていたそうだが、彼がボスニア紛争でクロアチア側に参加したとき、当時のクロアチア大統領が「我が国の軍隊には他国の軍人などひとりもいない!」と宣言。さすがにそのときは情けない気持ちになったという。

 給料は安く、死と隣り合わせであり、現地民からは嫌われる……。かように報われない傭兵稼業をなぜ高部氏は続けていたのか。確かに理不尽だらけの稼業だが、それだけでもないのだ。同じ部隊となった各国の傭兵たちとのバカバカしくて楽しい交流や、現地の女の子から手渡された1枚のビスケットに感激するなど、命を懸けるだけの価値もまた、その場所にはあったのである。「戦争屋」と思われがちな傭兵だが、本書はそのイメージを払拭してくれるに違いない。

文=木谷誠