猫好き歓喜のお仕事本!世界各国で働くにゃんこにインタビューした「猫のハローワーク」

文芸・カルチャー

公開日:2021/1/23

猫のハローワーク2
『猫のハローワーク2』(新美敬子/講談社)

 日頃、愛猫たちの姿を見ていると、猫はひとつのことに全力投球する生き物だとしみじみ思う。遊ぶ時はもちろん、甘えたり眠ったりする時も常に一生懸命。その必死な姿は時々、何かの職を全うしているようにも見える。

『猫のハローワーク2』(新美敬子/講談社)は、そんな愛くるしい猫写真がたくさん収められているユニークなフォトエッセイ。本書は2018年に発売されるやいなや、大きな話題となった『猫のハローワーク』(講談社)の第2弾だ。

 前作同様、今作も著者は世界中を巡り、一風変わった仕事に勤しむ猫たちを取材。それぞれの猫になりきって綴られたインタビューに触れると、つい顔がほころんでしまう。

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■マルチな才能を活かすお仕事にゃんこたち

 ヨーグルトを食べるのが大好きな筋肉トレーナーや髪型モデル、漬物職人など、個性豊かな職に就く猫たちを著者は「店員・勤め系」「芸術・研究者系」「観光・旅人系」「見守り・警備系」の4ジャンルに分けて紹介。その中には、猫ならでは能力を活かして働く子もいる。

 例えば、タイのサムイ島で暮らすリリーちゃんはバツグンの嗅覚をフル活用する臭気判定士。最初は調香師だったが、猫にとってあまり役に立つ仕事とは思えなかったため、臭気判定士に転職。においを嗅ぎ、「普通」と言ってあげることで他猫をホっとさせているのだとか。

 そして、東京・豊島区で活躍するトラくんとカメちゃんも猫ならではの才能を活かす、優秀コンビ。平衡感覚が優れていることから、水平測量士として奮闘しているようだ。

 このように、楽しみながら猫の特徴を知ることができるのも本書の特徴。フランクなインタビューにはその土地の歴史や特徴も記されているので、世界各国を猫旅しているような気持ちにもなれる。

 また、前作でインタビューした猫たちの“その後”を知ることができるのも嬉しい。貴重なオフショットを交え、休日の過ごし方も教えてくれた子もいる。例えば、カフェの跡取り息子として家業の手伝いをしていたドラ息子のピッドはなんと、その後、結婚。アンジーという美猫の奥さんと共に幸せな日々を送っていた。

 人間と同じように、時が経つにつれ、変化していく猫たちの日常。それに触れると、日々精一杯生きている世の中の猫たちが今日も明日も明後日もずっと幸せでありますように……と願いたくなる。

■面白いのに泣けもする猫フォトエッセイ

 ただ笑えるだけでなく、ホロっと泣ける。そんな楽しみ方ができるのも本書の醍醐味だ。これまでのニャン生がうかがい知れるインタビューに胸が熱くなる。

 そのひとりが、かっぽれ後継者になったポポちゃん。ポポちゃんは生後9週目くらいの時、死にそうな状態で保護された子。これから里親さんのもとへ行き、新しい生活を始めるのだが、今まで育ててくれたお母さんと同居猫たちとの別れを惜しみ、踊りを披露。新しい家に行ってもかっぽれを忘れず、時々、育ててくれた家を思い出しては踊り、里親さんに感謝の気持ちを伝えたいと語っていた。

 この子が今後どのように成長し、どんなニャン生を歩むのか……。そう考えたくなる子は、ポポちゃん以外にも多数いる。彼らにはぜひ次回作で、どんな道を歩んでいくと決めたのかを、思う存分語ってほしい。

 がむしゃらに目の前の任務をこなす猫たちは私たちに、「生きる楽しさ」を訴えかけてもいるようだった。もう立ち上がれないほど疲れたと思った時こそ、本書を開き、今を楽しむ無邪気さを補給してほしい。

文=古川諭香