いよいよ春高開催! TVアニメも絶好調のバレーボール男子たちの激闘、冬の陣『2.43 清陰高校男子バレー部 春高編』

文芸・カルチャー

公開日:2021/3/4

2.43 清陰高校男子バレー部 春高編1
『2.43 清陰高校男子バレー部 春高編1』(壁井ユカコ/集英社文庫)

 2.43。それは高校男子バレーボール全国大会のネットの高さ、2メートル43センチを意味する数字だ。身近な例でいうなら、一般的な家屋の天井高とほぼ同じ。これを高いと見るか、低いと見るか。この高さの線上で激闘を繰り広げるバレーボール男子たちの姿を描く壁井ユカコさんの『2.43 清陰高校男子バレー部』(集英社文芸単行本/集英社文庫)シリーズが、熱い人気を集めている。

 中学時代に東京のバレー強豪校で問題を引き起こし、故郷福井に帰ってきた灰島公誓(きみちか)。抜群の身体能力を持ちながら、プレッシャーに弱い黒羽祐仁(ゆに)。身長の低さを、ありあまる情熱と技術で補うキャプテンの小田。そのクールな参謀である副将の青木。日光アレルギーで常に長袖長ズボンの棺野。ラグビー部から転向したバレー初心者の大隈……。

 一癖も二癖もある清陰高校男子バレー部は、死闘の末に強敵・福蜂工業を撃破(『2.43 清陰高校男子バレー部 代表決定戦編』シリーズ)。主将・小田の悲願である“春高”こと、全日本バレーボール高等学校選手権大会の福井県代表の切符を勝ち取った。

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 そして第3シリーズとなる今作『2.43 清陰高校男子バレー部 春高編1』(集英社文庫)では、5日間にわたる“春高”の闘いが、濃密かつ臨場感あふれる筆致で展開される。

 試合を司るポジションであるセッターの灰島と、アタッカーとして未知の可能性を秘める黒羽。このユニチカコンビを中心とする清陰メンバー以上に強烈な輝きを放つのが、ライバル校の選手たちだ。

 とりわけ魅力的なのは、福岡県代表・箕宿高校を率いる175センチの大エース、弓掛篤志。そして東京の新鋭・景星学園の冷静沈着な主将、浅野直澄だ。小学生の頃からの親友でありライバルでもあるこの2人のビハインド・ストーリーが随所に織り込まれている。

 第2シリーズの『代表決定戦編』で福蜂工業のキャプテン三村と、彼を支えるマネージャー越智の友情を読み応えたっぷりに描いていたのと同じように、著者は今作でも敵にあたるキャラクターたちをこそ丁寧に、敬意をもって綴っている。だから読みながらどちらも応援したくなり、ともすれば箕宿や景星に勝ってほしいとすら思ってしまう。

 ちなみに三村と越智の登場場面があるのもファンには嬉しい。代表戦には破れた彼らだが、それぞれの未来に向かって歩んでいる姿が描かれる。試合が終わっても人生は続くという普遍的な真理がさりげなく、しかし印象深く刻まれる。

 初出場ながら1日目、2日目を勝ち抜いて、ベスト16に残った清陰高校。次に対戦するのは「九州の弩弓」の異名を持つ弓掛のいる箕宿高校だ。さらに箕宿を破ったら、続いて景星学園との連戦というヘヴィ極まりない構成となっている。

 加えて、灰島の才能に目をつけた景星学園の監督が、大会中にもかかわらずスカウトをしてきて、ユニチカコンビの間にさざ波が立つ……。

 現在フジテレビ系「ノイタミナ」枠では、TVアニメーションが大好評放送中だ。観てから読むもよし、読みながら観るもなおよし。バレーに懸ける男子たちの青春と情熱のほとばしりが、たまらなく熱く、まぶしく、カッコいい。

文=皆川ちか