目標未達の部下にはどう接したらいい? パワハラにならない効果的なフィードバックとは

ビジネス

公開日:2021/3/15

リーダーの仮面
『リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』(安藤広大/ダイヤモンド社)

 会社に入ってから数年たつと、だんだんと部下や後輩を持つようになる。これまで自分がやっていた仕事を彼らに「振る」ことになるが、どうにも塩梅がむずかしい。「自分がやったほうが早いのに…」とモヤモヤすることもあるし、丁寧に教えすぎると成長の機会を奪ってしまわないか心配になる。「プレーヤー」から「マネジャー」へと役割が変わっていくとき、だれしもぶつかる悩みだ。

「マネジャー」になりたての若手は、優秀な人ほど2つの失敗をしてしまう――。本書『リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』(安藤広大/ダイヤモンド社)によれば、若手マネジャーの失敗パターンは大きく分けて次の2つだという。

 ひとつは、「手取り足取り指導する人」。一見いいリーダーに思えるが、メンバーの思考停止につながるという。もうひとつは、「部下についてこさせようとする人」。できるリーダーに思えるが、部下の成長を促す役割を果たせていないことがある。面倒を見すぎてもダメ。放っておいてもダメ…。では、若手マネジャーはどのように部下と接すればいいのか。

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5つのポイントに絞って“仮面”を被る

 著者は、マネジャーは“仮面”を被るべきだという。具体的には、次の5つのポイントを意識し、個人的な感情をわきに置いて振る舞うということ。本来の自分を仮面の裏に隠し、リーダーとして部下を成長させるための言動を心がけよう。

ポイント1 「ルール」
→場の空気ではなく、言語化されたルールをつくる

ポイント2 「位置」
→対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする

ポイント3 「利益」
→人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす

ポイント4 「結果」
→プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る

ポイント5 「成長」
→目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ

 本書は、この5つの項目に沿って章立てされていて、具体的にどんな行動をすればいいか教えてくれる。たとえば、ポイント2の「位置」では、上司から部下へ仕事の頼み方を解説。よく「お手すきで大丈夫なので、○○をお願いできませんか?」といった風に、仕事を“お願い”してしまうことがある。だが、これは①部下に決定権がある②責任の所在があいまいになる、という2点からNGだという。仕事を振るときは、「××までに、○○をしてください」と、期日とともに言い切ったほうがよい。責任の所在が明確になり、スピーディーに仕事が進む。

目標未達の部下にどう接する? 「言い訳スルー」

 仕事は、振った後の確認も悩ましい。とくに、目標に達していない部下への対応だ。むやみに厳しくすればパワハラになりかねないし、部下の言い訳を聞いているだけでは何も変わらない。本書によれば、まず部下が言う「言い訳」はスルーする。そして、次にどんな行動をするのか聞くと良いという。

「次は、どうしますか?」
「具体的にどう変えますか?」

 やりがちな失敗は、「あなたの仕事には、こんな社会的な価値がある」といった仕事論を語り、やる気を出させようとすること。仕事をする理由はそれぞれ違うから、その人に響くとは限らない。あくまでも事実に基づき、次にどんな行動をすべきか部下に考えてもらおう。

 本書で一貫しているのは、「やる気」や「モチベーション」といった感情的な要素を極力排し、「利益や結果のために何ができるか?」という視点で部下にフィードバックしていくことだ。本書のメソッドを実践していくと、「冷たい人」と思われることもあるかもしれない。だが、上司と部下のほどよい緊張感は、部下の成長につながるはずだ。

文=中川凌 (@ryo_nakagawa_7