【次にくるマンガ大賞 2021特別企画】過去の受賞作を振り返り!元アイドルの幽霊と現役アイドルが二人三脚でトップを目指す!『神クズ☆アイドル』

マンガ

更新日:2021/6/21

 ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める“ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目となる今年のノミネート作品が出そろい、6月18日(金)から投票がスタートする。ぜひ参加して推しの作品を応援しよう! ドキドキの結果発表を待つ間に、過去の受賞作品を振り返ってみてはいかがだろう。本記事では2019年にコミックス部門で第3位を獲得した『神クズ☆アイドル』(いそふらぼん 肘樹/一迅社)を紹介!

advertisement

 顔はいいがライブパフォーマンスは微妙でファンサービスも塩対応。クビ目前の男性アイドル・仁淀ユウヤ(によど ゆうや)の前に、美少女が現れた。彼女の名は最上アサヒ(もがみ あさひ)。元トップアイドルだったが、人気絶頂のさなか、交通事故で急逝していた。つまり幽霊である。ユウヤはたまたま彼女が見えて話すことができた。この不思議な出会いから物語は始まった……。

 なおこの作品のキャッチコピーには「アイドルコメディ」とあるが、本稿のライターは違うと思う。本作は元アイドル(故人)と現役アイドルが二人三脚でトップを目指す、激アツなスポ根系アイドルストーリーだ。

 仁淀ユウヤが吉野カズキと組んでいるアイドルユニットが、ZINGS(ジングス)。ユウヤは顔がいいうえ、歌もダンスもそこそこできる。だがそこまでだ。ライブでも常に目が死んでいて笑顔も見せない彼に、事務所の社長は「態度を改めないならクビ」と告げる。

 顔がいいから黙っていても稼げる! と言われてアイドルになったユウヤ。努力もしたくないし、仕方ない……と半ばあきらめていた時に目の前に姿を見せた最上アサヒの幽霊。成仏できずにいた彼女の望みは「死んでもアイドルをやりたい」だった。

 アサヒは“神”クラスのトップアイドルだった。“アイドルバカ一代”という異名をもち、そのストイックさに多くのファンが心酔、彼女に憧れるアイドルもいたほどだ。アイドル人生を全うしたかった彼女は、ユウヤと話し「(せっかくアイドルになれた)生きている人がそんなやる気がないなんて」と逆上し、つかみかかると偶然彼の中に入り込んでしまう。

 彼女はユウヤの身体を自由に動かすことができ、話もできた。出入りも自在だ。ここでユウヤは提案する。「アサヒがユウヤの身体で、再びアイドルとして歌い踊る」のはどうかと。もちろんアサヒが歌い踊れば、ラクに稼げるという“クズ”発想である。かくして、二人はwin-winの関係となった。全力で歌い踊り、ファンへ目を合わせたり指さしをしたりなどのレスもばっちり。人が変わったような彼に、古参のファンたちは困惑しつつ狂喜する。

 アサヒはある日「ユウヤに入れない」と嘘をつく。当然、頑張らざるをえないユウヤ本人。ただ実はユウヤには顔がいいだけではなく、短時間での異常な記憶力の良さという才能もあった。それが磨かれたのは、異様に面倒くさがりだからなのだが。

 それなりにこなしたライブ後、アサヒは「仁淀くんにステージに立ってほしいと思った」「今日のステージを見るために幽霊になったのかも…」と満足げに言い、消えかかる。そこでユウヤは叫ぶ。「今日のステージで満足してないで、俺と一緒にトップアイドル目指してくれよ!!」彼女は真剣(に見える)な眼差しに感動し、ほだされる。新たな未練ができてしまったが気付かず答える「はい!二人で天下獲りましょうね!!」と。

 それからも、レッスン、ステージ、握手会などで、ユウヤはアサヒをなだめながら自分に入り込ませる。もちろんラクをするために……。密かに3人となったZINGSはステージに立ち続ける。

 そして物語は超人気グループCgrass(シグラス)の登場から急展開。Cgrassのセンター瀬戸内ヒカルは、ユウヤのパフォーマンスの中にアサヒを見る。瀬戸内はアサヒの大ファンで、複雑な感情を正面からユウヤにぶつけてくる。

 そしてアサヒと同じアイドルグループにいた由良チカゲ(ゆら ちかげ)が、ZINGSの事務所に移籍してきた。実はチカゲには霊感がありアサヒが見える。彼女の目的は……?

 風雲急をつげる『神クズ☆アイドル』。アイドルにとってステージとは? 仲間とは? オタクとは? 心底考えさせられる作品だ。アイドルカルチャーに触れたい人なら間違いなくハマる作品だ。

文=古林恭