「次にくるマンガ大賞2021」コミックス部門第1位『【推しの子】』強力作家タッグが描く、アイドル転生物語!

マンガ

更新日:2021/8/25

 ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める”ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目の今年、ついに受賞作品が決定しました! コミックス部門とWebマンガ部門を合わせたエントリー総数は3,582作品、投票総数は約51万票。その中からコミックス部門で第1位に選ばれた『【推しの子】』(赤坂アカ横槍メンゴ/集英社)を紹介!

「今死んだら推しの子どもに転生できるかも」

 アイドルの結婚が発表されたときの、お決まりの冗談だ。結婚はできなかったが、子どもが生まれる瞬間に死ねば、推しの子どもとして生まれ変われるのではないか……。人気マンガ家がタッグを組んだ話題作『【推しの子】』(赤坂アカ横槍メンゴ/集英社)は、そんなオタクの願望を実現した物語である。

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 産婦人科医のゴローのもとに、ある日患者として“推し”が現れる。その名は、星野アイ。アイドルグループ「B小町」の絶対的エースで、完璧な笑顔を振りまく超絶美少女だ。しかし、彼女には世間に公表できない秘密があった。なんと、妊娠していたのである。ゴローは、“推し”の子どもを安全に生むことに全力を注ぐが、出産予定日に何者かに殺されてしまう……。

 目が覚めると、ゴローはアイの子ども――“推しの子”に転生していた。名前は、星野愛久愛海(あくあまりん、通称アクア)。だが、幸せな赤ちゃん生活もつかの間、“ある事件”が起こり、成長したアクアは転生前の自分を殺した黒幕の人物を探すために“芸能界”へ潜り込む。最新第3巻では、“恋愛リアリティーショー”に出演するのだが、これが今時の芸能界の裏側を覗くようでおもしろい。

 恋愛リアリティーショー(通称“恋リア”)とは、主に10~20代の男女が集められ、“台本なし”のうたい文句で、リアリティのある恋愛模様を撮影するバラエティ番組だ。よく疑われる“やらせ”は少ないが、“演出”は存在する。カメラを前にして、見られることを意識せずにはいられない。自らの知名度を上げたい出演者。刺激的な展開で話題にしたい番組側。SNSで好き勝手に語る視聴者。3者による共犯関係は、ときに制御できない“熱狂”を生む。

 アクアが出演する番組でも、事件は起こる。番組を盛り上げようと対立を演出した女優の黒川あかねが、共演者のモデル・鷲見ゆきにけがをさせてしまった。当人同士はその場で仲直りしたが、悪意ある編集は真実を歪める。結果、ネットではあかね叩きの大バッシングが起き、炎上は収まらない。たとえ“演出”していても、恋リアで批判の矢面に立つのは本人の人格だ。

 止まらない誹謗中傷に、アクアたちはどう立ち向かうのか。視聴者は普段、編集された番組しか見られない。けれど『【推しの子】』は、それぞれに葛藤を抱える出演者の、カメラ越しには見えない内面に迫る。私たちが何気なく見て、酒のつまみにしていた“恋リア”番組の裏に、実はこんな物語があったのかもしれない。恋リア編は、読者にそんな想像をくれる、とびきりのフィクションである。

文=中川凌 (@ryo_nakagawa_7

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