「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門第4位『山田くんとLv999の恋をする』(ましろ/KADOKAWA)イケメン男子の攻略推奨レベルは999!?

マンガ

公開日:2021/8/26

 ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める“ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目となる今年、ついに受賞作品が決定しました! コミックス部門とWebマンガ部門を合わせたエントリー総数は3,582作品、投票総数は約51万票。その中からWebマンガ部門で第4位に選ばれた『山田くんとLv999の恋をする』(ましろ/KADOKAWA)を紹介!

 昨年の「次にくるマンガ大賞」に続き、2年連続でトップ10入りした本作。ネトゲ(ネットワークゲーム)で出会い、リアル(現実)でもつながりをもった大学生・茜(あかね)と、男子高校生・山田のラブコメディだ。その魅力とは?

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ネトゲでふられ、ネトゲで年下イケメン男子と出会う

 女子大生の木之下茜(きのしたあかね)は彼氏に誘われてMMORPG(大規模多人数参加型オンラインRPG)を始めた。しかしその彼は同じゲームで知り合った他の女性と付き合うことになり、茜はふられてしまう。

 ただ落ち込むのは性にあわない茜は、そのネトゲのリアルイベントが開催されると知り、「きっと元カレが来るはず! 私とふって惜しかったと後悔させてやる!」とヘアサロンとエステへ行き、意気込んでイベント会場へ乗り込んだ。

 そんなとき、人混みに押され転んでしまった茜に手を差し伸べたのは、誰からも二度見されるようなイケメン男子。「そうすか……興味ないすね」とどこか覚えのある言い回しの彼はネトゲ内でよく会い、たまにチャットで話す「山田」だった。しかも彼は高校生プロゲーマー山田秋斗(やまだあきと)だという。

 結局イベントで元カレと新しい彼女とのイチャイチャを見た茜は、居酒屋でヤケ酒をあおる。しかも勢いで山田を連れてきていた。不愛想ながらも優しくされて泣き出す彼女は意識を失い、気がつけば知らないベッドで朝チュンシチュエーションに。そこは山田の部屋で、まさか……はなく、嘔吐し眠り介抱されていただけだった。二日酔いのふられ女は早々に山田のもとから退散するのだった。

 最悪にも思えたこのリアルでの出会いから、2人は何度か会うことになる(最寄り駅が同じという偶然もあり)。茜は現実での山田の気遣いや、驚くほどの優しさに触れ、彼に心惹かれていく。ネトゲで終わった恋が、再びネトゲで始まる。

無理ゲー? この恋の攻略に必要なのはLv999…!

 ある日、茜はゲーム内で仲良くなった人たち(山田の知り合いでもある)とのオフ会に参加する。そこには山田になつき茜に敵意むき出しにする美少女・瑠奈(るな)がいた。だが彼女はまだ中学生。簡単に攻略することができ、仲良しになる。

 しかしその先には、山田の同級生の“ラスボス”椿ゆかり(つばきゆかり)が立ちはだかる。彼の過去を知り、数年にわたり想いをよせる椿は、ネトゲに現れ、リアルで大胆な行動に出る準備を進めていた。

 自分の気持ちに正直になれない茜は山田を攻略できるのか? なにせ山田は「恋に興味がない、女は苦手」という、高い防御力というか呪いにかかった強敵である。それこそ攻略推奨レベル「999」は必要かもしれない。これは無理ゲーだったかもと最初は思われたが……。

 本稿では2021年8月時点で単行本に収録されているストーリーを中心に紹介した。ただアプリで読んでいる方々が更新のたびに、山田にときめき、鼻血が止まらない、意識が遠のく、かっこよすぎて死ぬ、語彙力を失う……と呻いていることを伝えておく。

 本作の大きな魅力はキャラクターである。イケメンで、すでにプロゲーマーで、成績優秀で志望大学もA判定というハイスペック男子高校生・山田。ただ彼は不愛想で、女性に興味を持たないようにしてきた。それがネトゲ仲間たちとつるむうちに、心を開き明らかに表情豊かになっていく。本作のファンが歓喜している“天然たらし”というチートスキルが覚醒するので楽しみにしてほしい。

 そして茜は、ただのふられ女ではない。ネット上でもリアルでも、誰かと仲良くしようとする性格だった。「普段知り合うきっかけもない人と友達になれるかもって思うとさ、ちょっとわくわくするよね」とさらりと言ってのける。それが上手くいかず泣くこともあるが、仲良くなっていっしょに笑うために、誰かのことを知るために、積極的に行動していく。もちろん山田に対してもそうで、いきなり居酒屋に誘ったり、バイト先に呼んだりとガツガツと絡んでいく。

 山田はそんな茜を尊敬する。彼は自分と対極の彼女を「すげぇ」と感じているからだ。近づいていく2人の距離。“告白”というイベントもいよいよ見えてくる。これはもうニヤニヤしながら見守っていくしかない!

文=古林恭

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