LINEのグループトークに突然現れる怪異「LINEわらし」って、知ってる?

文芸・カルチャー

公開日:2021/8/29

21世紀日本怪異ガイド100
『21世紀日本怪異ガイド100』(朝里樹:著、裏逆どら:イラスト/講談社)

 僕にとって、夏といえば「ホラー」だ。幼い頃は、毎年夏休みに放送される「学校の怪談」シリーズや、恐怖映像の特番などが楽しみだった。今年はどんなお化けが現れて、どんな怖い話が聞けるのかワクワクしていたからである。案の定、それらを見てから数日は、夜中に1人でトイレに行けなくなり「見なければよかった」と後悔するのだが……。

 そんな僕も大人になるにつれ、お化けや怖い話といった類に疎くなっていった。ただその間も、それらは次々と生み出されていたようだ。『21世紀日本怪異ガイド100』(朝里樹:著、裏逆どら:イラスト/講談社)を手に取り読んだとき「21世紀には、こんなたくさんのお化けや怖い話が存在していたのか!」と驚いた。幼い頃にあった僕のホラーへの好奇心が再度湧き始めたのは言うまでもない。

 本書で紹介されている21世紀に誕生したお化けや怖い話・都市伝説のジャンルはさまざまだ。日本の昔話が起源となって誕生したお化けを中心に、西洋で語り継がれた話が日本様式にアレンジされたものや、多くの人が活用している“SNS”が舞台となる話まで数多くある。

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 例えば、「LINEわらし」というお化けの話。これはまさしくトークアプリ・LINEが舞台となっている。2015年、あるLINEのグループ内に、見知らぬ女児の名前が加わったことに気付く体験者。ただ彼は「きっと他のメンバーの友達なのだろう」と思い、その女児とグループ内で頻繁にやり取りを続けたという。しかし、やはり誰の友達なのか気になる。メンバーに「あの子、誰の友達?」と聞いてみたそうだ。しかし、彼女を知っているメンバーは誰もいなかった。そもそもLINEのグループに入るには、グループの参加メンバーからの招待が必要である。招待がなければグループには参加できない。誰も誘った覚えのない子がグループに入っていることを知り、一気に青ざめるメンバーたち。体験者は真相を確かめるべく、おそるおそるLINEを開いて本人に確かめてみることに。しかし、すでに彼女の名前は消えていたという……。

 この話、内容自体は「座敷わらし」の特徴と似ているように思える。座敷わらしというと「見たら幸せになれる」や「座敷わらしが棲みつく家には幸運が訪れる」といった特徴が有名だが、実は「楽しそうな子どもたちの輪の中に、いつの間にか混じっている」といった特徴もあるのだ。そういう点では確かに、LINEわらしと座敷わらしには共通点がある。このお化けが、座敷わらしのように幸運をもたらすかどうかは不明だが、このように古くから存在していたお化けが、現代に馴染むようにアレンジが加えられているケースは少なくない。

 また本書では、お化けや妖怪・怖い話の起源についても触れている。例えば近年、新型コロナウイルスの影響で存在が注目された妖怪「アマビエ」。現代では、疫病を“終息”させる妖怪として紹介されているが、明治時代のアマビエにはそのような力があるとは記録されていなかったという。「予言獣」の一種で疫病の流行を予言し、それを防ぐ方法を告げて消えるだけの妖怪だったそうだ。

 つまり現代のアマビエは、昔からの言い伝えにアレンジが加えられた、もしくは間違った方向に解釈され世に紹介されたものといえる。本書は、こうした起源に着目しながら読み進めてみても、面白いかもしれない。

 きっと本書を読了すると、怖さを感じるだけでなくお化けや妖怪・怖い話に詳しくなれるはずだ。暑い夏に少しでも凉を求めている人はもちろん、お化けや怖い話の起源に興味がある人も、手に取って読んでみていただきたい。

文=トヤカン

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