「今月のプラチナ本」は、猫沢エミ『猫と生きる。』

今月のプラチナ本

更新日:2021/12/23

猫と生きる。 (天然生活の本)

著:
出版社:
扶桑社
発売日:
今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『猫と生きる。』

●あらすじ●

シンガーソングライターとしてのデビューを間近に控えた、1996年5月初旬。26歳の猫沢エミは、マンションのゴミ捨て場で生ゴミと一緒にビニール袋の中に入れられた子猫を見つけた。「彼女を幸せにする」と覚悟を決め、その日から突然、猫と共に暮らす日々が始まった―。フランスと日本を行き来しながら、猫沢エミと猫たちとの運命的な出会い・別れと、“愛と命の教え”を綴った一冊。

ねこざわ・えみ●1970年、福島県生まれ。ミュージシャン、文筆家、映画解説者、生活料理人。9歳からクラシック音楽に親しみ、音大卒業後、シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。2002年に渡仏。07年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー『BONZOUR JAPON』の編集長を務める。帰国後、超実践型フランス語教室「にゃんフラ」を主宰。近著に『ねこしき 哀しくてもおなかは空くし、明日はちゃんとやってくる。』(TAC出版)。

『猫と生きる。』

猫沢エミ
扶桑社 1760円(税込)
写真=首藤幹夫
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編集部寸評

 

死にゆくものを見送って、生きていく

「毎日がそのときベストだと思う答え探しの連続だった。しかしその答えは、世界のどこにもなく、誰も知らないひとり禅問答だった」。人は自分が死ぬまでは、愛する相手が死ぬのを見送ることしかできない。厳然たる事実、しかし誰もが、なるべく考えないようにしていること。それを猫沢さんは考えて考えて、考え抜いた。愛する者を、いかに見送るか。そして見送った自分は、そこからまた生きていく。いつか自分が死ぬ日まで。この循環の中に、われわれ読者も生きていると知った。

関口靖彦 本誌編集長。自分より先に死ぬのが耐えられないと思って、生き物は飼わずにきた。死を考えることから逃げ続ける、自らの臆病さを突きつけられた。

 

思い出、まるごと抱えて生きていく

実家で飼っていた豆柴は、老犬となり認知症になって、ぐるぐると回り続けた。夜中にキャンキャン鳴くので抱いて外に出たら、私の腕のなかで静かになった。病気は悪化し、みるみる弱っていく愛犬の姿に安楽死も考えたけど、できなかった。本書のページを繰っていたらそんな過去を思い出し、泣いてしまった。イオちゃんへの「天国タクシー」という表現に救われる。最期、辛い記憶もいっぱいあるけど、大好きな「あの子」の思い出、まるごと抱えて生きていこうと思えた、大切な一冊。

村井有紀子 星野源さん『いのちの車窓から』の文庫化が決定!書き下ろし(長い「文庫版あとがき」)も収録されます。今号インタビューもぜひご覧ください!

 

猫だけじゃない。すべての命への応援歌

冒頭から最後の1行に至るまで著者・猫沢さんの猫愛に貫かれた本書を読むにつけ、思いの深さに圧倒される。我が子のように愛情を注ぎ、命が尽きるその時まで一切手を抜かず慈しむその姿は、力強く尊い。猫沢さんは言う。「どんな命もひとりぼっちで逝ってはいけないのだ。そして、できるだけ美しい姿で旅立つことが必要なのだ。それは送る側の自己満足ではなく、どんな形にせよ生をまっとうした命への祝福として」。本書はすべての命への、慈しみ深い応援歌でもあるのだ。

久保田朝子 本書を読んで小さい頃に飼っていた生き物たちを思い出しました。リス、インコ、カメ、カブトムシ、蟻etc。インコだけは懐いてくれたなぁ。

 

「セ・ラ・ヴィ」。そう思える日々を

「人間よりも短命な動物を愛することに伴う、最後の苦しみ」。動物でなくてもそうかもしれない。煤けた換気扇やメニューでさえも愛おしいし、食べられるものも集まる人も、日によって“顔”が違う(酒場の話をしている)。そして、ずっとそこにあるわけではない。セ・ラ・ヴィとは「これが人生(だからしかたがない)」という“悲劇を終わりにする言葉”だそうだ。やがて訪れる最後の日。エモーショナルでありながら、遭遇した未知を愛し抜く術が綴られた、極めて実用的な記録でもあった。

川戸崇央 『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』を担当しました。これはオードリー・タンという“異物”を愛し抜いた人たちの物語。記事は103Pからです。

 

「それでも私は、彼らと生きることを選んだ」

ほのぼのした本だと思っていて痛い目を見た。あたたかくしなやかな猫との日々は、その時間を愛するほど、身を引き裂かれるような痛みを伴う。でも猫沢さんは「哀しい過去と痛みの詰まった部屋に逃げ込めないよう、何度もそうした部屋に火を放ち、燃やしてきた」。何度も嗚咽しながら、それでも「彼らと生きること」を選び続ける。愛し切ることは、なんと凄絶な覚悟が要るのだろうと怯みながら読み進める。するといつのまにか、過去に逃げ込もうとする自分のための部屋も消えている。

西條弓子 猫を飼った人が次々と「愛してる。猫のためなら何でもする。猫が死ぬことを考えて泣いてる」という風になっていてビビる。猫ってなんなん……。

 

生まれた命と真摯に向き合う

本書を読み終わったとき、自然と指が222ページを開いていた。そこには横顔の美しい猫、イオちゃんの写真がある。私は無意識に、イオちゃんの写真を親指で撫でていた。会ったことはないけれど、猫沢さんを通じて知ったイオちゃんの日々は、私の心の中にも息づいたと思う。「この子」と思った子と出会い、食事を共にし、同じ家で眠る。そこに、人間と動物との差はないんだと強く感じた。いつか必ずくる別れも含めて、出会った命への愛と喜びが惜しみなく注ぎ込まれた一冊だった。

細田真里衣 5年間継続購入していた手帳がリニューアル。改変後のデザインが自分の好みに合わず、久しぶりに手帳ジプシーに。上製本の手帳が欲しい!

 

愛したぶんの、哀しみと涙とともに

涙なしには読めない一冊だった。特に著者と愛猫たちとの別れ。今は亡き愛犬の姿が重なり、ボロボロと涙があふれて止まらなかった。「言葉を介さない愛を一心に傾けてくれる彼らを亡くすことは、ほかのどの苦しみにもたとえようがない、特別な痛みがある」。初代愛猫・ピキを見送った著者の言葉に深く共感。計り知れない哀しみの中で著者は思う。「この哀しみと涙は、生前の愛の大きさがそのまま移行したものなのだ」と。深い哀しみと涙こそ、人生をかけて愛し愛された証明なのだ。

前田 萌 初めて共に暮らした愛犬との別れを思い出しました。無条件に“愛すること”の尊さを教えてくれたのは愛犬でした。改めてありがとうと伝えたいです。

 

猫たちの美しい生き様の記録

「ピキを拾ってしまった瞬間、幸せな苦労を覚悟したのは言うまでもなかった」。そうなのだ、動物を家族として迎え入れることは“幸せな苦労”なのである。一生を引き受けるほどの深い愛情がなければ飼い主は務まらない。本作で描かれている、著者と過ごした4匹の猫たちはとても自由で、気高く、美しい。それは、飼い主である猫沢さんが彼女らに対して一個人としての尊重をもって接していた証だ。猫たちとの穏やかかつ壮絶な日々の記録を垣間見て、動物と過ごす尊さを思い知る。

笹渕りり子 うちには犬がいます。家族からの愛情を一身に受けている彼女が腹を丸出しに寝る姿を見て、このまま幸せに生きておくれと切に願うばかり。

 

撮影協力:保護猫カフェ駒猫(https://koma-neko.com/)

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猫と生きる。 (天然生活の本)

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扶桑社
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ISBN:
9784594089177

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KADOKAWA
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