街宣、ビラ配り、電話かけを体験して感じた、選挙へのギモン…“選挙のリアル”に迫る密着日記

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公開日:2022/1/14

選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記
『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』(和田靜香:著、小川淳也:取材協力/左右社)

「今の政治に不満はたくさんあるが、自分が選挙に行ったところで現状が変わるとは思えない」。そんなことを思っている人はきっと少なくはないだろう。だが、選挙の主役は政治家ではなく、主権者である私たち。選挙は、私たちの意を問う場だということを忘れてはならないのだ。

 そんなことを教えてくれるのは、相撲・音楽ライターの和田靜香さんによる『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』(和田靜香:著、小川淳也:取材協力/左右社)。和田靜香さんといえば、国会議員・小川淳也さんと1年間にわたって対話を繰り広げた前代未聞の政治問答本『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)が発売後1.5カ月で2万部を突破した話題のフリーライターだ。50代、独身、お金なし、コロナ禍でバイトはクビ。そんな生きづらさを、直接国会議員にぶつけた激論は、政治や経済を自分ごととして読める内容だったが、それは本作も同様。今回は、2021年10月に行われた衆議院選挙で香川1区の選挙活動に密着。“選挙のリアル”に迫った一冊なのだ。

 こんなに気楽に読める政治本はなかなかないだろう。和田さんは、決して政治の専門家ではなく、その視点は、一般市民に近しい。だから、実際の選挙で感じる和田さんの疑問は共感させられるものばかりなのだ。たとえば、公職選挙法の厄介な規定に和田さんは悩まされる。「11万枚もの選挙チラシになんでわざわざ1枚1枚シールを貼らなくちゃいけないの?」「電話かけってメールじゃダメなの?」。そうやってボヤきながらも、チラシ配りや電話かけ、さらには街宣まで実際に体験していくことになるのだ。そして、そこで見えてくるのは、候補者を支えるボランティアたちの姿。18年前、初めて小川さんが立候補した時から手伝いをしている人も少なくはないというそのエネルギーに和田さんは圧倒される。そして、同時に反省もするのだ。選挙のたびにその時々のフィーバーみたいなものに乗っかって投票し、それで負けてしまうとガッカリし、二度とその人には振り向かなかった自分を省みていくのだ。

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「密着」というのだから、四六時中小川さんに付き添うのかと思えば、和田さんは時間を見つけては適宜観光したり、休んだりし、そんな姿も面白い。「選挙にはなんで休みがないの?」という疑問はもっともだろう。選挙事務所では女性ボランティアのなかに溶け込んで「選挙で使われる言葉ってたいがいマッチョ!」とワイワイおしゃべりもする。確かに、選挙戦って言い方だって「戦?」って気になるし、「~を男にしてやってください」って言い方に違和感を覚えるというのも納得だ。選挙事務所でみんなで話しながら日ごろ疑問に思う社会の問題を、みんながのびのびと語り合う。そのような場を私たちはどれだけ持てているだろうか。そしてそういう場がいかに大切であるのか気付かされる。

 そう、選挙の主役は、主権者である私たちであるはずなのだ。自分が信じた政治家のためにあくせくと働くボランティアの姿や、街宣に行くたびに「みなさんの言葉を聞きたい」と繰り返す小川さんの姿がそのことを教えてくれる。人任せにしてもきっといい未来は訪れない。「何を言ってもどうせ変わらない」なんて諦めてはいけない。政治とは何なのか、選挙とは何か、政治家と一般市民との関係はどうあるべきなのか。改めて考えさせられる一冊。

文=アサトーミナミ

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