不倫男に弄ばれた傷心OLの前にクセの強い守護霊が登場! 珍コンビが繰り広げる痛快な祟りコメディー

マンガ

更新日:2022/1/31

ゴゴゴゴーゴーゴースト
『ゴゴゴゴーゴーゴースト』(蛭塚都/KADOKAWA)

 祟りや恨み、幽霊を題材にした漫画はシリアスなストーリー展開となっていることが多い。だが、『ゴゴゴゴーゴーゴースト』(蛭塚都/KADOKAWA)は、類似作とは一線を画している。なぜなら、“祟りコメディー”という新たなジャンルを切り開いた作品であるから。

 本作は不倫男に騙され自暴自棄になった主人公が、自分の守護霊に助けられ報復に乗り出すという、オカルト要素も盛り込まれたブラックコメディーだ。

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自暴自棄の傷心OLとクセの強い守護霊が繰り広げる「報復劇」

 主人公の明智ウシロは一流企業に就職したものの、妻子ある男との社内不倫が明るみに出て、逃げるように三流会社へ転職。しかし、転職先は手取りが少なく、嫌味な上司もおり、居心地の良い場所にはならなかった。

 おまけに、不倫の代償として支払い続けている毎月5万円の出費も痛い。ウシロは歯車が狂ってしまった現状に、頭を抱えていた。

 そんなある日、激しい胃痛を感じたウシロはアルコールで大量の胃薬を飲んだ際、頭を打ち、意識を喪失。その後、誰かの腕に抱かれているような気がして目を開けると、変なロン毛のおっさんに押し倒されていた。

 不法侵入者の変態だ。ウシロはそう思い、慌てるが、彼の正体はなんとウシロの守護霊。どうやらウシロは魂が抜け、幽体離脱のような状態になっていたよう。「正子」と名乗る、その守護霊は1年ほど前からウシロのことを守ってくれていたようで、今回も彼女を助けようと思い、姿を現したのだ。

 だが、人生に絶望しているウシロは正子に尋ねる。「このまま死んでもいいかな?」と。「離婚する」と口にした最愛の彼から裏切られ、拒絶された記憶を受け入れることも消すこともできないウシロは、ずっと死を思いながら生きていたのだ。

 そんなウシロに対し、正子は思わぬ提案をする。

“私があいつを祟るから アンタ生きてみなさいよ”

 その言葉を聞き、ウシロは自分を傷つけた不倫男に復讐しようと決意。意識を取り戻したウシロは手始めに、いつも嫌味を言ってくるパワハラ課長への恨みを晴らすことにしたのだが…?

 ひょんなことから始まった、傷心OLと守護霊の祟り生活。ふたりの復讐劇の先には、果たして、どんな結末が待ち受けているのだろうか。

ブラックユーモアもたくさん! 笑って泣けるホラーコメディー

 先が気になるストーリー展開であるだけでなく、ひとりひとりのキャラが立っているのも本作の魅力。ブラックユーモアに何度も笑わされ、独特な世界観にどんどん引き込まれてしまうのだ。

 特に、女性らしい言動をするジェンダーフリー守護霊の正子は魅力的なキャラクター。ノリも面倒見もいい正子と、いつでも全力なウシロのコミカルなやり取りを目にするたび、頬が緩む。

「報復」と聞くと、惨いシーンが描かれているのでは…と不安になる方もいるかもしれないが、ウシロと正子が行う祟りは、どこかに笑えるポイントがあるので、残酷な描写やホラー漫画が苦手な人でも手に取りやすい。

 また、作中には犬を置き去りにした飼い主への祟りなど、胸がギュッとなる報復エピソードも収録されており、涙腺が緩みもする。

 その恨みはらさでおくべきか――。そう口にするウシロと正子の姿から、あなたは恨みという感情への折り合いの付け方も学ぶかもしれない。

文=古川諭香

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