お江戸ガールズ・コレクション開幕!? 江戸時代の着物文化を「カタログ感覚」で楽しめる、小粋なイラストブック『お江戸ファッション図鑑』

文芸・カルチャー

更新日:2022/2/8

お江戸ファッション図鑑
『お江戸ファッション図鑑』(撫子凛著、マール社刊)

 江戸時代の人は、どんなふうにファッションを楽しんでいたの?――そんな素朴な疑問に答えてくれる最高の資料は、もちろん「浮世絵」です。

 葛飾北斎や歌川広重といった流行りの絵師(今で言うところの“売れっ子イラストレイターさん”ですね)たちが活躍し、名所絵や歌舞伎の役者絵など、さまざまなジャンルが人気を集めた浮世絵の世界。その絵の中には、江戸時代の「服飾文化」のリアルな姿がたくさん描かれました。とは言え、浮世絵は「ファッションカタログ」ではないし、気になった着物のデータを詳しく調べられるような機能もありません――でも、もしもそんな便利なカタログブックがあったら、すごく楽しいですよね。

 本書『お江戸ファッション図鑑』(マール社)は、そんなあなたの欲望に応え、江戸時代の着物ワールドの魅力を「カタログ感覚」で楽しませてくれる、素敵なイラストブックです。もともと本書に収録されたイラストの多くは、著者の撫子凛(なでしこりん)さんが「お江戸スタイルブック」というタイトルのもと、SNSや同人誌上で発表していたもので、書籍には着物以外のお江戸ファッションにまつわる情報(髷の種類、帯の結び方、和傘、下駄の種類、などなど!)も収録。ただの着物イラスト集ではなく、江戸時代の多様なデザイン文化を網羅する総合ガイドとしても読み応え十分に仕上がっています。

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お江戸ファッション図鑑
『お江戸ファッション図鑑』(撫子凛著、マール社刊)以下同

お江戸ファッション図鑑

 構成は、4章仕立て。各章は登場人物の「職業別」に分類され、第1章では「市井の人々(町娘、若旦那、火消など)」、第2章では「武家の人々(大名、姫君など)」、第3章では「芸に生きる人々(役者、芸者など)」、第4章では「花街の人々(遊女など)」が描かれます。それぞれのイラストは、基本的にすべて、実際の浮世絵を「元ネタ」としていますが、画風やキャラ・デザインは思いっきり現代的にアップデイトされているのが嬉しいポイント。下のサンプルを見てもらえば一目瞭然であるとおり、そのまま額に入れて、部屋に飾りたくなるような可憐なイラストが満載です。

お江戸ファッション図鑑

お江戸ファッション図鑑

 そもそも「お江戸ファッション」のイラストをSNS上で公開し始めた理由について、著者の撫子さんは「大正~昭和あたりの着物は世間的にもてはやされているのに、江戸着物に興味を持ってくれる人がイマイチなことに納得がいかなかったから……」と、あとがきの中で説明しています。「老若男女を問わず、まさに、着物の全盛期は江戸時代だった!と言っても過言ではありません」とも書いていますが、本書のイラストを眺めていると、「確かにそのとおり!」と、激しく同意したい気になってくるはず。アニメやゲーム作品経由で時代劇ファンになった方はもちろんのこと、海外からも改めて注目を集めている「和×モダン」なスタイルに興味がある人にとっても、最高の「ネタ帳」として重宝しそうですね。

お江戸ファッション図鑑

お江戸ファッション図鑑

 ワイルドな戦国時代とは違い、わりと平和な時期が長く続いたこともあって、「衣食住」のさまざまな分野で小粋な文化が華麗に花開いた江戸時代。その「衣」の部分の奥深さをとことん味わい尽くせるイラストブックです。やっぱり、江戸カルチャーはポップで楽しい!

文=内瀬戸久司

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