自分と親友の余命が残り100日を切っていた…生と向き合う、期限付き青春ラブストーリー

文芸・カルチャー

公開日:2022/3/11

余命99日の僕が、死の見える君と出会った話
『余命99日の僕が、死の見える君と出会った話』(森田碧/ポプラ社)

 あなたは、自分が後どのくらい生きられるか知りたいと思うだろうか。「余命が分かれば、残された時間を大切にできる」という人もいれば、「減っていく時間に怯えながら暮らしたくない」という人もいるだろう。だが、この物語の主人公には選択の余地もなく、ある時、突然自分と親友の余命を知ることになった。その物語とは『余命99日の僕が、死の見える君と出会った話』(森田碧/ポプラ社)。『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(ポプラ社)で知られる著者が「生きる」ことの意味を問う青春ラブストーリーだ。

 主人公は、高校1年生の望月新太。彼には、人の寿命が残り99日になると、その人の頭上に、残された日数が数字として浮かび上がって見えるという特殊な能力がある。ある朝、新太は鏡に映る自分の頭上に「99」という黒い数字が不気味に揺れているのを見てしまった。まさか自分の余命を知ることになるとは。動揺のあまり学校を休み、頭上の数字が「90」になった時、久しぶりに学校にいくと、同じ文芸部に所属する10年来の親友・野崎和也の頭上にも「85」という黒い数字が浮かんでいた。自分が死ぬ5日前に親友も命を落とす。新太は残酷な運命を前に、途方にくれてしまう。

 突然、自分に残された時間を知れば、誰もが「死にたくない」と思うことだろう。新太だって最初はそうだった。できることなら自分の死を回避して和也も救いたいと思っていた。だが、新太には、初恋の少女や自身の父親など、今までたくさんの人の死期を知りながら、その命を救うことができなかった過去がある。多くの命を見殺しにした自分だけが死を回避するなんて許されるはずがない。新太は自分と和也の運命を受け入れようとするのだ。

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 しかし、文芸部に新しく入部した黒瀬舞は、そんな彼を決して許さない。死期が近い人の背後に黒い靄が見えるという黒瀬は、新太の能力を知ると、「この力があるのは、人の命を助けるためだと思う」と言い、「2人を絶対に死なせない」と宣言する。死ぬ運命の人を救うのは自らを危険に晒す行為かもしれない。新太は黒瀬を止めようとするが、彼女は2人の運命だけでなく、死が目前に迫った周囲の人たちの命をも救おうと画策する。次第に、その計画に巻き込まれていく新太。そして、2人はあらゆる人の、生と死に向き合うことになる。

 人は何のために生きるのだろうか。この物語の中で、ある人は、「誰かのために生きてこそ、人生には価値がある」といい、またある人は、「叶えたい目標のため」という。そして、私たち一人一人も考えずにはいられなくなる。私たちは何のために生きているのか。どうやって生きるべきなのか。この本を読み終えた時、あなたは、ひとつの答えに辿りつくだろう。

 きっと人生は懸命に生きてこそ意味があるに違いない。新太の苦悩に、そして、99日のあがき続けた先の決断に胸がいっぱいになる。新太は自身の運命とどう向き合っていくのか。新太と和也、そして、黒瀬の、期限付き青春ストーリーをぜひともあなたも見届けてほしい。「生きること」と向き合い続けるこの物語は、きっとあなたの人生の時を、豊かにしてくれるに違いないだろう。

文=アサトーミナミ

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