不機嫌なタクシー運転手。男を乗せ、目的地と全く違う場所へ連れて行くと…【タクシーの運転手】/意味がわかると鳥肌が立つ話 続③

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/3

意味がわかると鳥肌が立つ話 続』(蔵間サキ:編著、大志:絵/Gakken)第3回【全11回】

大ヒットしたショートストーリー集、「5分後の隣のシリーズ」『意味がわかると鳥肌が立つ話』の続編! 恐怖感がさらにパワーアップ!何気ない物語を読み進めると、“鳥肌”の立つような意外な展開が待っていた…。恐怖だけではなく、感動、笑いなど、どっぷりはまってしまう「鳥肌」ショートストーリーをお楽しみください。

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意味がわかると鳥肌が立つ話 続
『意味がわかると鳥肌が立つ話 続』(蔵間サキ:編著、大志:絵/Gakken)

タクシー運転手

 タクシー運転手はその日、最悪な気分で仕事へ向かった。

 深いため息をついて運転席につく。運転の邪魔になる指輪を指から外し、乱雑にダッシュボードに投げ捨てる。

 彼は心底イラついていた。しかし、仕事にそんな感情を持ちこむと、ろくなことにはならない。気持ちを切り替えて臨んでいたのだが、夕方、事件は起きた。

 彼は、大通りで手を挙げている男を見つけた。歩道のそばに車をつけ、ドアを開ける。電話をしながら乗り込んだ男が、ぞんざいに行き先の住所を告げる。運転手の表情は不機嫌なままだ。

「……かしこまりました。その住所ですと、○○駅の近辺ですね」

 返事はない。車内には男の話し声だけが聞こえる。運転手の表情に生気はなかった。

 電話に夢中になっていた男がふと気がつくと、タクシーは目的地とはまったく違う、人気のない場所を走っていた。

「おい、ここはどこだ!」

 男の怒号が響くや否や、運転手は急ブレーキをかける。シートベルトをしていなかった男は、頭を強く打ちつけた。ドアが開き、鬼のような形相の運転手が男をクルマの外に引っ張りだす。男は抵抗することもできず、何度も何度も運転手に殴られた。

意味がわかると鳥肌が立つ話 続

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