撮りたい写真のためにマナー違反をすることは、誰であろうと論外/うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真

暮らし

公開日:2023/11/18

 ケータイ、スマホのおかげで身近になった写真。カメラを買って本格的に始めたいと思っている人は多いのではないでしょうか。

 誰でも写真の才能がある。でも、多くの人が写真を誤解している――写真家・幡野広志氏が大人気のワークショップをベースに、写真の撮り方から心構えまでを書き下ろした「写真の本」が本書です。

 いい写真とうまい写真は違う。だめな写真とへたな写真も同じ意味じゃない。うまくてだめな写真もあるし、ヘタだけどいい写真もある。写真に対する価値観が変わる、写真初心者必読の1冊です!

※本作品は『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』(幡野広志:著、ヨシタケシンスケ:イラスト/ポプラ社)から一部抜粋・編集しました

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うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真
『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』(幡野広志:著、ヨシタケシンスケ:イラスト/ポプラ社)

写真のための社会じゃない

 写真を撮る前に意識しないといけないことがあります。それは写真のために社会は用意されているわけではないということです。当たり前ですよね。だけど写真を撮る人が集団化するとなぜかこれを忘れてマナーが悪い存在になりがちなんですよね。

 たとえば駅員さんや周囲に罵声をあげる集団。三脚禁止の看板が目の前にあるのに三脚を立てて花を撮る集団。観客の前に立ち塞がって花火大会を撮影する集団。個人個人の集まりなんだけど、競争意識が芽生えるのか市井の人からするとすごく迷惑です。

 写真学生の頃にカメラメーカーが主催する撮影会のアシスタントのバイトをしました。日給8000円とメーカーロゴの入ったTシャツをもらいました。モデルさんが20人ぐらい、おえらい写真家の先生が10人ぐらい、撮影会に参加した人は1000人ぐらい。休日の大きな公園に散らばって撮影会をしました。

 よく晴れた休日の公園なので、たくさんの利用者がいます。バズーカ砲みたいなレンズをつけていた中年男性が、自分のカメラの画角に入ったちいさい子どもをつれたご家族に「どけよバカヤロ─!!」と怒鳴ったんです。

 びっくりしました。こいつ人間終わってる。いや、人間がはじまってもいないと思いました。案の定、相手方のご家族とトラブルになりました。あまりにも酷かったのでぼくも怒りました。ご家族と一緒に運営責任者のもとにいきました。責任者は謝罪をしたものの怒鳴った本人はお咎めなし。

 カメラメーカーからすれば怒鳴った中年男性はお客様なわけです、怒鳴った中年男性からしても自分はお客様なわけです。もう20年ぐらい前のことなので中年男性は高齢男性になって、きっとコンビニや駅や病院で誰かに怒鳴ってると思いますよ。

 写真をはじめる前に、人間をはじめましょう。

うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真

 ぼくがいままで見てきた集団で最悪だったのはマスコミです。113ページの写真は8月6日の広島です。8月6日は広島に原爆が投下された日です。8月6日の夕方は原爆ドームのすぐそばの川に慰霊のために灯籠を流します。

 いつもはたくさんの灯籠を流すんですが、このときはコロナ禍のため規模を縮小して、十数名の市民の代表の方が流すというものでした。会場アナウンスの指示で中学生が灯籠を流そうとしたときに、現場で撮影をしていたマスコミ集団が大きな声で中学生の手を止めさせて、何度かやり直しをさせていました。

 ようやく流された灯籠を肩まで川につかったカメラマンがほとんど回収をして、1カ所に集めてみんなで撮影していました。この日の夕刊は各社おなじような写真でした。おなじ場所で固まって撮って、背景に原爆ドーム入れたいからアホみたいに短いレンズ使って、アホみたいにストロボたいて。写真がヘタでダメな上に行動がアホだから終わってるんですよね。

 写真のための社会じゃないということは、写真を撮る上で肝に銘じなければいけません。写真を撮るときは人の目を気にしたほうがいいです。

<第5回に続く>

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