後輩にウケるのは“自分のリアルな失敗談”。成功話はただの自慢に聞こえることも/部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです

ビジネス

公開日:2023/11/20

 新卒の約30%が3年以内に離職する時代。厳しくしたらいいか、優しくしたらいいか…。最近の若手社員のことがよくわからず、接し方に悩んでいる方は少なからずいるはず。

 日頃から「どうすれば若手社員に火がつくか」と考えている、最近の若手は「自分から動こうとしない」と思っている、若手と仲良くなるために「趣味の話」から入っているーーそんな上司の方はいませんか? 実は、これらはNGです。

 若手社員育成専門コンサルタントである著者の伊藤誠一郎さんが、最近の若手部下の「傾向」と「対策」を教えます。いかにやる気を出して仕事に取り組ませるか、声のかけ方・動かし方・伸ばし方を解説! この本で若手を変えるのではなく、上司である自分を変えていきましょう!

※本作品は『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(伊藤誠一郎/日本実業出版社)から一部抜粋・編集しました

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部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す
『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(伊藤誠一郎/日本実業出版社)

他人の成功話ではなく、自分の失敗談を語る

最近の若手社員は「失敗談」に興味を示す

 仕事において大事なポイントを教える際に、次のような他人の成功話を用いることがあります。

□斬新な発想力と大胆な行動について論じるために
著名な企業や起業家のスタートアップから成功までのストーリー

□一意専心に物事に取り組む姿勢を論じるために
有名アスリートのトレーニングや試合での勝負の実話

□成果を出すこととそのためのプロセスの重要性を訴えるために
社内の要職に就いている上司がまだ若かった頃のエピソード

 上司である自分の成功話は、若手にとって聞いていてつらい自慢話になりかねないですが、他人の話なら嫌味なく聞いてもらうことができます。

 ただ、他人の話でも持ち出す例がひと昔前、ふた昔前の話は避けたほうがいいでしょう。上司世代からすると10年前の話でも、ついこの前の出来事と受けとめがちですが、若手社員はまだ小中学生だったのでピンとこないのが実際だからです。今をときめく有名アスリートの話であれば何とか共感を得ることもできますが、それ以外の話題は彼らには理解されないことも少なくありません。

 そこで、若手社員に対しては他人の成功話ではなく、自分の失敗談を語ることをおすすめします。これなら自分の体験談なので時代背景や人物に関する予備知識も不要となります。また、自慢話に陥ることもないため、聞き手がつらくなることもありません。

 何より最近の若手社員は、失敗談に対して強い興味を示し、自分の失敗を惜しげもなく披露できる人に信頼感を抱く傾向があります。

失敗談のほうが「人の振り見て我が振り直せ」でリアリティがある

 私自身も若手社員向けの研修で、大きなものから小さなものまで若い頃にやらかした数々の失敗談を紹介します。研修後のアンケートにおいても「講師が自ら失敗談を話したことに驚いた」という声が多く寄せられます。

 たとえば私が30代の頃、ベンチャー企業でシステム営業の管理職をしていたときに、新しいお客様との顔合わせ会議の場所を間違えた話もその1つです。原因は私がメールを最後までしっかり確認しなかったことですが、それは隣のビルや隣町というレベルではなく、なんと東京と大阪を間違えてしまったのです。

 開始30分前に先方から資料についての問い合わせの電話があり間違いに気づいたけれども、30分では大阪に行けません。気づいてすぐに私は東京駅に行き、新幹線に飛び乗って新大阪に向かいました。そして、在来線と地下鉄を乗り継ぎ4時間も遅刻して現地に到着しました。

 先方は相当あきれていたと思いますが、私はひたすら謝罪し、何とか夕方から会議をはじめていただき、最終的にはその案件を受注することができました。

 この私の失敗から、若手社員に次の四か条を伝えています。

一 たった1行の確認モレから重大な問題を引き起こすことがある
二 だから、いかなる仕事も細心の注意を払って当たらなければならない
三 それでも失敗したときには逃げない、言い訳をしない、できることをやる
四 失敗と向き合えるかどうか、そのときこそ人間性が問われる

 彼らは目を丸くして聞き入っています。そして、私からの四か条を深くうなずきながら熱心にメモを取っています。

 このように上司や先輩も自分の失敗談であれば、時代背景など関係なく若手社員にも共有することができます。何より自分自身の経験ですから、言葉に強い説得力が出てきます。その失敗を通して若手への学びとなります。

 また、若手向けの研修では次のような話も必ず添えます。

 失敗しないように真剣に仕事に取り組まなければなりませんが、人間である以上失敗する可能性は誰にでもあります。100点満点の人間などそう多くはいませんから、おそらくみなさんの上司や先輩も失敗したことがあるはずです。

 成功から学ぶことも多いですが、失敗からも多くのことを学ぶことができます。だから失敗を恐れずに思いきって仕事に挑戦していきましょう。大丈夫です! 私ほど悲惨な失敗をすることはそうそうありませんから。

 この話に若手社員からは「勇気が湧きました!」「明日から挑戦します!」という言葉が多く寄せられます。これも失敗した本人の言葉なので納得感が違うようです。

「失敗を恐れるな!」「思いきってやってみろ!」と日々声をかけるよりも、たった1つの失敗談を語ることのほうが若手社員を動かすこともあるのです。

上司の失敗談は、若手にとって大きな学びとなる

<第5回に続く>

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