第2回「タイタニック二郎」/酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない②

文芸・カルチャー

公開日:2024/1/26

酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない

 小学校低学年の時、放課後にあそぶ友達もいなかった私はとにかく退屈していた。毎日少しずつ楽しみに読み進めていた月刊少女漫画誌も読み終えてしまい、まだ明るい時間から月9が始まるまでの時間をやり過ごすことは小学生にとって苦痛だ。

 おやつにチョコパイを一箱抱えて、お父さんのDVDボックスを散策し、たまたま手に取った1本が『タイタニック』だった。この作品との出会いが私をこじらせたと言っても過言ではない。

 みなさん知っての通り、1900年代豪華客船タイタニックで貧乏な絵描きの青年ジャックと上流階級の娘ローズが劇的な恋に落ちる話。

 盛大なネタバレになってしまうので本当は避けたいところだが、実際に船が氷山に衝突し沈没するまでの2時間40分に合わせて物語が進んでいく。最後まで演奏する手を止めなかった音楽家、最期までベッドの上で抱き合う老夫婦、頭にこびりついて離れない名シーンの数々。そして幼い私は、若かりし頃のレオナルド・ディカプリオを一目見て恋に落ちた。画面越しに恋に落ちたのはアンパンマンの愉快な仲間・しょくぱんまん以来だった。

 同志はいらっしゃいますか? あの人、本当にずるいですよね。もうそれからはクラスで一番人気者の男子ですらポテトにしか見えなくなっちゃって、大変だった。
 おかげさまで、女子同士の恋バナに1ミリも理解を示すことができず、20年ほど経った今でも恋愛話が苦手なまま。一箱食べ切ったチョコパイのせいかディカプリオの美貌のせいなのか危うく鼻血が出そうになったあの日のことは今でも忘れられない。就職活動のエントリーシートでも好きな作品を聞かれたら真っ先に『タイタニック』と答えるほど愛した作品だった。もちろん今でも大好きだ。

 しかし、大人になると事情は複雑で『タイタニック』を見られなくなってしまった時期が2度ほど訪れた。

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さかむら・ゆっけ、●酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。引っ込み思案で、人見知りを極めているけれど酒がそばにいてくれるから大丈夫。たくさんの酒彼氏に囲まれて生きている。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTubeにて酒テロ動画を発信している。気付けば、画面越しのたくさんの乾杯仲間たちに囲まれていた。
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