真夜中の学校で確認したいことが…。家をこっそり抜け出した理人とアルク/歩く。凸凹探偵チーム②

マンガ

公開日:2024/3/2

歩く。凸凹探偵チーム』(佐々木志穂美:作、よん:絵/KADOKAWA)第2回【全4回】

自閉症の凸凹も、ひとつの個性――。小学6年生の理人と、いとこのアルクは毎日いっしょ。自閉症のアルクには色々なこだわりがあって、気をつけてないと辛くなるときもある。でもその代わり、アルクには理人が気づけない「ほんの少しのチガイ」が分かるのだ。ある日、理人はクラスメイトのオヅから【真夜中の学校に鳴るチャイムの怪異】のナゾ解きを持ちかけられた。アルクがポソリとつぶやいたヒントから真実はすぐに見えたけれど、でもこれってどういうことだ…? ぼくらみんなが探偵だ。みんなの個性をつなげて、大きな真実を見つけよう! 全員主役のニュータイプ・ミステリー『歩く。凸凹探偵チーム』をお楽しみください。

歩く。 凸凹探偵チーム
『歩く。 凸凹探偵チーム 』
(佐々木 志穂美(著), よん(イラスト)/KADOKAWA)

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 その日の真夜中。11時半。

 母さんはまだ起きている。

 ぼくの部屋から玄関へは、リビングを通らないといけない。

 ぼくはベランダに出る。

 3階だからそんなに高くはないけど、飛び降りるわけにはいかない。

 ひもをしっかり体にくくりつけて、ゆっくりと降りる―――なんてことも、もちろんしない。

 高所恐怖症だよ、ぼくは。

 じつは、もっといい方法がある。

 となりのアルクのベランダと、ぼくんちのベランダの間のしきりは、外してあるんだ。

 おじさんが出張のときも、アルクはよく、自分の部屋へ帰る。

 夜中、心配でも、いちいち合鍵で玄関をあけて、入っていくのは不便だし。

 アルクのほうからも、いざというときは簡単にぼくんちへ来ることができるよう、ベランダをつなげたんだ。

(それでも、朝はかならず玄関からうちにやってくるアルクだけと)

 靴はベランダに持ってきておいた。

 

 それを持って、ぼくはアルクの部屋へ入った。

 おじさんは、今日は出張でいない日だ。

 ぼくはアルクんちの玄関を通って、外に出るつもりだ。

 ベランダを通ってアルクの部屋へ。

 ベランダへのガラス戸は、いつも鍵を開けておくルールだ。

 起こさないように、そっと入る。

「〇▲※✖◎◇―――――!!!!!」

 痛い!

 大声を出さないようにするのに苦労した。

 フィギュアだ。

 本格的なやつではなくカプセルトイで出てくる小さな人形。

 アルクはプロ野球にハマっていて、いや、正確にはプロ野球選手の人形集めにハマっていて、ならべて遊んでいることが多い。

 それを片づけずに眠ったらしい。

 小さな人形のくせに、ふむと、とんでもなく痛い。

 

 声を出さずに悶絶しながら、それでもどうにか玄関へむかおうとしていたら、

「理人くん?」

 アルクがベッドから起きあがった。

「あ、起こしちゃった?ごめん、アルク。まだ11時半だよ。眠っている時間だよ。もう一度寝てください」

 と言うのに、アルクはてきぱきと着替えはじめた。

 アルクには、「こだわり」が多い。

 だれにだって、こだわりの1つや2つあるだろうけど、レベルがちがう。

 夕飯はぼくんちで食べても夜には自分ちへもどり、10時ちょうどに眠る。

 ほかにも「こだわり」は、たくさんある。

 そのうちの1つが、

麻田アルクは、有川理人といっしょに行動する」ということ。

 ぼくも、それはいやじゃない。

 

 アルクは、兄弟のようで親友のような、不思議な存在なんだ。

 だけど、今日だけはついてこなくていい。

 ただ真夜中の学校に行って、あることを確認したいだけなんだから……。

 

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