SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第42回「トレンディドラマ」
公開日:2024/12/27
何が好きですか? と。かなり大枠な質問を受けた時に「食べ物の話ですか」とか「趣味の話ですか」とかを訊き返す前にとりあえず浮かんできてしまうものがある。おそらくそれはもう、自分にとって本当に心の底から愛してやまないものってことなのだろう。相手が投げ掛けた意図すら度外視して表立つ好きって、なかなかに稀有だ。
だから本より、落語より先に、まず出てくる「トレンディドラマ」ってやつは、絶大な価値を持って私の心の中心でピカピカに輝いているのである。
まずトレンディドラマってのはなんぞ? というところから始めなければならないと思うのだが、大まかに定義するなら80年代後半から90年代前半に制作、及び放映されたドラマのことを主に指す。内容は多岐に渡っているが、どのドラマもオールドスクールという言葉の礎の香りがして、伝統芸能と呼ぶに遜色無い確固たる強さみたいなものを感じる。
そして、自分の中では一つ先の時代に、その系譜として派生したようなドラマもまた「トレンディドラマ」と定義している。なので超主観的かも。それでいいっぽいし。これはそう、あれは違う、とかっていう他人との相違を大前提とした自由さも魅力の一つに挙げられるのかもしれない。まアもっとも、残念なことにそういった熱い議論を交わせたことは一度もないのだが。
ドラマの礎的な、そして伝統芸能的な魅力に取り憑かれているが故、昨今のドラマを観るにあたってしがらみが生じてしまうことが玉に瑕だが、それほどまでに私に及ぼした影響がでかいのだ。映像作品に関しての好きこのみはもちろんのこと、ライフスタイルとか、思考、発言に至るまで、私は全て影響を受けているのだなア、と自覚する瞬間が多々。
こうなると、何故こんなに好きなのだろう、どこにこんなに惹かれるんだろう、とついうっかり考えてしまう。好きの根っこについて考えることは、大事にしていたものを部品にまで分解して観察するような無粋さを感じるタイプの人間なので「考えてしまう」という表現を選んだ。しかし、トレンディドラマの魅力の正体を考察するのは案外面白く、ある程度のところまでなら踏み込んでも大丈夫そうだったので、考え続けてみた。
しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中