夏と花火と私の死体 乙一 / 集英社 読みたガール365 「もつ」 2013/09/12
公開日:2013/9/12
撮影:山本哲也
夏のある日、田舎のある村で少女が殺されるところから物語は始まります。この物語の一番の特徴は、その死んだ少女目線で話が進んでいくところです。
登場人物たちが感じた思いや匂い、温度までもが非常にリアルに描写してあり、まるでその世界に自分がいるかのように錯覚するほどです。世界観にどっぷりと浸かれるこの感じは、他の本では体験できない気持ちよさがあります。
この物語の視点である死んだ少女のキャラクターにも魅力があります。死んだというのにも関わらず、淡々と物語を進めていく少女。タイトルからは想像できない爽やかささえ感じられるお話になっています。
乙一さんの作品は、ブラックユーモアという表現がしっくりくるものが多いのですが、この本も例外ではありません。どこか皮肉ったような文章、それでいてなんだか切ない。ぐいぐいと引き込まれていく感じは快感です。