【第14回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/手紙#3

文芸・カルチャー

2018/9/7

 八月の終わり。

 幸正さんが所属する劇団の本拠地である初美座。暑い夏の終わりの日に、あなたに最初の接近を試みることにしました。

 この日に向けて、いくつかのする準備は、まず、出演者と舞台の制作委員会のメンバーの名前をできる限り調べさせていただきました。

 そして、初美座での千秋楽のあとには決まって打ち上げをしているバーの写真からお店を特定するのに時間はかかりませんでしたので、わたしはお店の近くに引っ越してきたばかりというていで、あらかじめ一人でそこに通わせていただいて、ときには映画を一緒に観に行った友人も連れていき、何の不信感も抱かれずに店主さんとも仲良くさせていただいてます。

 私のように若くて可愛い女の子が居着くのはお店の方にとっても迷惑なことではなかったことでしょう。

 皆さんが打ち上げをする頃に、先回りして、いつものように、カーテンがかかった個室の3つ隣の席に、わたしは現れればよいだけなのです。

 8月31日はとても暑い日でした。私が頭の中ではとんでもない計画を企てているとは到底見えそうもない、栗色に伸ばした綺麗な髪を緩やかに巻いて、襟がついた上品なクリーム色のワンピースを身にまとって私は向かいました。

 幸正さんが出演する舞台は、見ても見なくても私にとっては良かったのですが、その後出会ったときの会話として、偶然にも舞台をみておいた方が良かった場合に備えて、観劇しましたが、その出来は素晴らしいものでした。

 遠くから、初めて見る幸正さんのお顔、声は私の胸を高ぶらせました。

 ずっとずっと目で追って、この人は身と肉が綺麗な人であることはよくわかりました。どんな中身を隠しているのか、早く暴いてみたい。

 いつものように店に入ると、マスターから、今日は奥の席が全部貸切になるから騒がしくなると告げられ、思い通りにことが運んでいることに安心して、笑みを捧げました。

写真モデル=シイナナルミ
撮影=飯岡拓也
スタイリング=TENTEN