注目の「折り畳みスマホ」は、電子書籍市場を拡げるのか?

ビジネス

2019/4/6

ジャーナリスト・まつもとあつし氏が、出版業界に転がるさまざまな問題、注目のニュースを深堀りする連載企画です!

■注目をあつめた折り畳み端末

 スペイン・バルセロナで2月にMWCが開催された。モバイル機器を中心とした世界的な展示会で今回注目をあつめたのが「折り畳みスマホ」だ。国内メディアもこぞって報じたのでテレビ等で見た、という人も多いはず。

原宿にあるGalaxy Studio Tokyoにて。MWC後「世界でここだけの展示」だというが、ガラスケースに収められ、まだ手に取って操作することはできない

 MWCで折り畳みスマホを展示したのは、韓国のサムスンと中国のHUAWEI。いずれも端末を真ん中で畳める点は共通しているが、画面サイズが異なり、折りたたんだ際、画面が内側に来るのか、外側になるのかが異なっている。

製品名 折り畳み方式 画面サイズ(展開時)
HUAWEI「Mate X」 外折り(畳むと画面が内側) 8インチ
SAMSUNG「Galaxy Fold」 内折り(畳むと画面が外側) 7.3インチ

※「Galaxy Fold」は折り畳み時も外側にサブディスプレイ(カバーディスプレイ)を備える。

 これまでも折りたためる端末は存在していた。2011年に登場したSony Tablet Pは2つの画面を持ち、中央部分に折り畳み機構を備えており基本的な設計は同じだ。

 最大の違いはディスプレイそのものが折りたためる点。紙のように丸めたり、畳めたりできる新型のフレキシブルディスプレイを採用している。そのため画面を開いたときも、切れ目のない1枚の画面になる。サイズ感としては、先日3年半ぶりにリニューアルしたiPad mini(画面サイズ:7.9インチ)をそのまま真ん中で畳むようなイメージだ。

■可能性と課題

全巻一冊商品ページより。見開き表示が可能だが、構造上、折り畳み部分にマージンが生じる

 フレキシブルディスプレイは、数年前から展示会などに登場しており、デモンストレーションの際、雑誌のようなコンテンツを表示させて、丸めたり畳んだりする様子が繰り返し紹介された。そのため、「未来の電子書籍デバイス」としての期待も高かった技術だ。

 本連載でも様々な角度で取り上げているように、電子書籍を楽しむデバイスはまだ「決定打」が登場していない。スマホの画面(5インチ前後)では書籍を読むにはやや小さすぎるだろう。タブレットや電子書籍専用端末は画面サイズは適切だが、スマホに加えてもう1つ端末を持ち歩くことに抵抗がある人も少なくないはずだ。

 折り畳みスマホは、通話やSNS閲覧に加えて電子書籍のような読み物コンテンツも楽しめる1台となり得るのだろうか? 筆者も実は期待を寄せているのだが、問題はその価格だ。現状、「Mate X」も「Galaxy Fold」も25万円前後と非常に高額なのだ。展示ブースには平日にもかかわらず人だかりができ、「絶対欲しい」という声も聞こえてきたが、果たしてこの価格を知ったときに、それでも「買う」という人はかなり限られてくるだろう。

 折り畳みスマホは、フレキシブルディスプレイや特殊なヒンジ、基板など最新技術の集合体だ。フレキシブルディスプレイはようやく今年に入ってから量産体制が整いつつあるともいう。逆に言えばこれらの部品が大量生産されるようになれば価格がこなれてくるはずだ。ただ価格がこなれてきても、まだ解決しなければいけない課題がある。

 それはバッテリー容量と重さの問題だ。画面サイズが大きくなればなるほど、またその大きな画面を活かして複数の作業を並行して行おうとすればするほど、消費電力は上がっていく。それを可能にするためには大きなバッテリーを積む必要があるが、そうすると端末が重くなってしまう。

 Mate Xの重量は295グラム、Galaxy Foldの重量はまだ公表されていない。展開時の画面サイズが近い新しいiPad miniは約300グラムだが、これは一般的なスマホや電子書籍専用端末(150グラム程度~)のちょうど倍くらいの重さだ。ここに折り畳み機構やサブディスプレイなどが加わるともう少し重くなるのは仕方がないところだ。しかし果たしてこの重さの端末をポケットに入れて気軽に持ち運べるだろうか? スマホの部品の中でも重さの決定要因となっているバッテリーについてはもう一段の技術革新が求められている。

 このように見ていくと、注目の折り畳みスマホだが、その価格の高さも相まって、電子書籍も楽しめる1台としてはまだ決定打とは言えない。ただ、理想の形に近づいたことは間違いなく更なる進化に期待したいところだ。

文=まつもとあつし