勇者と魔王が仲良くチャット!? 『もしロールプレイングゲームの世界にSNSがあったら』/連載第1回

ライトノベル

2019/6/5

 なぜかネットやスマホがあるファンタジー世界。暇さえあればインターネットばかりしている引きこもりの残念勇者が、SNSのメッセージを使って魔王に宣戦布告! しかし魔王は純粋無垢な争いを嫌う女の子。乙女すぎる魔王と勇者はチャットを通じて仲良くなり――。

 Twitter、Pixivで連載開始後に話題となり、ニコニコ漫画では脅威の800万再生を突破した新感覚チャットノベル。個性的なキャラクターたちが繰り広げる冒険と、SNSトークの一部を5回連載でご紹介!

第1回

 その世界には「魔王」という頂点が存在した。

 息をすれば草木は枯れ、歩けば地が腐敗し、空に浮けば雲が汚染され、駆ければすべての障害物を破壊し尽くす。全魔族の頂きにして統治者であり、まさに最強最悪、人知や神をも超えた正真正銘の悪魔の化身であった。

「はぁ……」

 ふと、魔王は自らが住まう城から外を見て、ため息をつく。

 まるで年頃の乙女が、遠方に住む愛いとしき恋人を想うように。

 その世界には「勇者」という頂点が存在した。

 息はとりあえずできるが、歩けばよく骨折するし、空に浮くことなんてまず不可能、駆ければ五秒で息があがる。全人類の中でも最弱クラスの強さで、暇があればインターネットしかしない正真正銘の引きこもりであり、性格もひねくれた底辺の代表格だった。

「はぁ……」

 ふと、勇者は自らが住まう家のベッドの中で目を覚まし、ため息をつく。

 まるで年頃の青年が、誰かに恋焦がれているようにというわけではない。ただ昨日ソシャゲをしすぎて大変に眠かったので、ため息というか、普通に欠伸をしただけだった。

 この世界にSNSが普及し始めたのは、およそ三十年前のことであった。

 人間族において魔法の研究に勤しんでいた魔術師「マーキー・ゴールドバーグ」が、ふとした瞬間にビビッときて、魔力の応用方法を思いついたのだ。

 具現化される蜘蛛の巣のような魔法技術を透明化し、それを空気中のマナ的なものと混合して一本化することでなんやかんやとかして、とりあえずその魔術は、テレパシー能力を超え、世界中のどこの人でも「PC」や「スマホ」という魔力変換機を持つことによって、情報発信の送受信をすることが容易となった。

 その時の様子を、当時若干調子に乗っていたマーキーはこう語っている。

「やば! 俺マジ天才すぎん!? これで世界のどこの人とも繫がれるやん。システム的には蜘蛛の糸みたいだし、これネットって呼ばね? インター的な感じだし、インターネットとかどうよ?」

 正直部下からは「いやインターどっから出てきてん」と激しいツッコミを食らったものの、彼自身が世界初のネット配信者としての力もあったことから、世には正式な名称として「インターネット」という名称の技術が普及した。

 その後さらに技術は進化していき、自分の書いた文章や日記などをネットで公開する「ブロッグ」、知り合い同士で顔写真を公開し繫がることのできる「フェイスリュック」、日常の愚痴を吐いたりできる「ツミッター」、リア充たちがリア充報告を写真つきで行う「インスパグラム」、さらには一対一やグループで連絡が取りあえる「RINE(リーン)」など、インターネットを介して様々な利便性の高いコンテンツが普及していった。

 ついには、知りたい知識をネットで検索すれば、それだけで必要な情報がすぐに出てくるという、まさに全世界において革新的な情報社会が生み出されたのである。

 そして世にネットが普及してから二十数年後。

 すでに高齢となっていたマーキーは、どんどん応用されていくネットの状況を見るたび、ツミッターで悲しそうに「あれは、わしが育てた」と発言するようになっていった。

 というか、それしか言わなくなってきた。

 しかし、寿命で世を去る際に彼が語った名言が、今も残っている。

「あのね。ネットでいっぱいコンテンツできたのは嬉しいのよ。ほでもね。色々ありすぎて今は正直、何が何かわからんのですよ」

 彼の生涯の部下であり最期を看取った妻は「いや、ほならどうせい言うん?」といつものとおり強気に聞き返す。

「呼び方、ひとつにまとめよ!」

「たとえばどういうの?」

「ほうじゃのぉ……」

 長考の後、マーキーは歴史に残る一言を発言した。

「すげえ、ねっと、すげえ!」

「……」

「だからSNS(エスエヌエス)で」

「また安直やねえ。ほでもあんたらしいわ」

 妻が優しく微笑むと、マーキーは生涯の夢であった「妻を笑わせる」という目的を果たし、この世を去った。まさに大往生である。

 こうして、世界で使われるインターネット便利コンテンツの総称は「SNS」と統一されてしまった。

 数年後、息子たちや孫に見守られつつ、彼の妻も天へと旅立ったそうだ。二人は天国で、今も仲良く夫婦漫才を繰り広げて、幸せに暮らしているらしい。

 ちなみに、今後このマーキーと妻は物語に出てこないので、忘れてもらっていい。

<第2回に続く>