「お金は他者に提供した“価値”の対価」西野亮廣『新・魔法のコンパス』③

ビジネス

2019/7/7


“現代の革命家”西野亮廣氏の10万部のベストセラー、『魔法のコンパス』から3年。時代に対応し、西野氏が「1時間前後で読める本にする」という意図で執筆した文庫本が『新・魔法のコンパス』(KADOKAWA)だ。めまぐるしくルールが変わる現在、そして未来の歩き方とは?

【第1章 お金】

お金は「他者に提供した 労働の対価」ではなく、「他者に提供した 価値の対価」だ。

「仕事量と給料が見合ってない」という不満をよく耳にするんだけど、キミはどうかな?

 そりゃまぁ、どうせ働くなら、なるべく多くの給料を貰いたいよね。

 そう考えるなら尚のこと、押さえておかなきゃいけないルールがある。

 これだ。

 お金は「他者に提供した『価値』の対価」

 お金というのは、他者に提供した『労働』の対価じゃなくて、他者に提供した『価値』の対価なんだ。

 ……ちょっと難しい表現になっちゃってるね。

 でも、これは、すご〜く大事な話なので、頑張って耳を傾けてください。

 たとえばキミが「おむすび」を握ったとする。

 その「おむすび」を、お腹いっぱいの人に売るのと、お腹ペコペコの人に売るのとでは、「提供した労働量」は一緒なのに、「おむすび」一個あたりの値段が変わってくる。

 理由は、「提供した価値」が違うからだ。

 お腹いっぱいの人は30円でも買ってくれないけど、お腹がペコペコで今にも死にそうな人は1000円でも買ってくれる。

 これは、なんとなく分かるよね?

 山の上で売っている缶ジュースは、どうして高いの?

 山の上で売っている缶ジュースって、やたら値段が高いけど、その理由について考えたことがあるかな?

 よく言われるのは、「缶ジュースを山の上まで運ぶコスト(人件費)がかかっているから」なんだけど……でも、ちょっと待って。

 じゃあ、たとえば、今後、ドローンが自動で山の上まで缶ジュースを運んでくれるようになって、そこに「運ぶコスト(人件費)」がかからなくなったら、山の上の缶ジュースは安くなるのかな?

 答えは「安くならない」。

 山の上の缶ジュースは高いままだ。

 だって、お客さんは、地上にいる時よりも、汗を流して山を登った後のほうがジュースを欲しているから。

 つまり、「山の上の缶ジュースは高くしても売れるから高い」というわけだ。

 分かるよね?

 山の上で売られている缶ジュースは、「提供した労働」で高くなっているわけじゃなくて、「提供した価値」で高くなっているんだ。

 とにもかくにも「価値」なんです。かーち!

 こんな感じで、キミのもとに入ってくるお金というのは、「提供した労働」ではなく、「提供した価値」によって、増えたり減ったりする。

 もし、キミがキミの給料に不満を覚えた時は、職場環境を疑うと同時に、他者に対して「価値」を提供できているかどうかも一緒に疑ったほうがいいよ。

 お腹いっぱいの人に「おむすび」を握っている場合がある。

「お金が欲しければ苦労しろ」は言っちゃダメ

 ボクの友人で自分の一日を50円で売り続けている「何でも屋」のホームレスがいる。

 男の名前は「ホームレス小谷」。

 人生の時間のほとんどを格安で他人に捧げるもんだから、おかげで「金」も「名誉」も持ち合わせていないけど、ただ一つ、「他人からの信用」だけはたらふく持ち合わせていた。

 今から6年前。

 そんなホームレスが、クラウドファンディング(※インターネット上で企画をプレゼンして、支援を集める仕組み)を使って、自分の結婚式の開催費用を集めたことがあった。

 これまで50円で彼を買った人達が、「あの小谷さんが結婚するのなら」と次々に支援を贈り、たったの3週間で「250万円」というお金が集まった。

 すごいよね。

 なかなか夢のある話だと思うんだけど、これに対して、まったく関係性が無いサラリーマンの方から「楽をするな。他人からお金をもらうな。結婚式は自分で汗水垂らして稼いだお金でやれ!」と物言いがついた。

 批判の声をあげたサラリーマンは、「お金=提供した労働の対価」という考えで……もっと言うと、「お金=我慢の対価」という考えを持っていて、汗水を流さずにお金を手に入れることは『悪』としていたんだ。

 お金教育を受けてこなかった多くの日本人は、往々にして、「お金=我慢の対価」というマインドに陥っている。

「洗脳されている」と言ったほうが近いかな。

 このサラリーマンが言う「楽をするな。他人からお金をもらうな。結婚式は自分で汗水垂らして稼いだお金でやれ!」という発言を要約すると、

「お金が欲しければ労働量を増やせ」

 なんだけど、お金の本質は、そこじゃない。

 ボクはとても優しい男なので、「他人からお金をもらうなー!」という批判に対して、「……てことは、あなたの結婚式では御祝儀を受け取っていないんですね?」というトドメは刺さなかったよ。

 議論をする時は、相手の逃げ道を作ってあげることが大切だ。

 繰り返し言うけど、お金というのは「提供した労働の対価」ではなくて、「提供した価値の対価」だ。

 ホームレス小谷の結婚式を支援した人達は、日頃、他人の為に生きている彼から十分すぎる価値を頂いている。

 汗水を流して働くことは美しい。

 決して否定することではない。

 だけれど、「労働量」と「収入」は必ずしも比例関係にあるわけじゃない。

 ここは押さえておこう。

■まとめ
お金とは、「提供した労働の対価」ではなくて、「提供した価値の対価」。
「お金が欲しければ苦労しろ!」は言っちゃダメ!
議論をする時は、相手の逃げ道を作ってあげよう。

<第4回に続く>

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