セックスの頻度と幸福度は週1回まで比例! 2回以上は…?『中高年のための性生活の知恵』②

恋愛・結婚

更新日:2019/7/8

■愛情を日常生活で表すことの大切さ

「顔を合わせるのは1日で朝の15分だけ」

「週末になってやっとまともに話ができる……」

 共働き夫婦になると、こんなことが珍しくなくなります。

 夫婦共に仕事を持っていると、コミュニケーションをとる時間の確保が難しくなりますね。セックスレスのカップルに日常でコミュニケーションをとっているかと聞くと、「とっていない」と答える方が多いという現実があります。時間的にも精神的にも余裕がないのでしょう。

 しかし、日常の会話がない夫婦が、セックスについて話すなんてできるわけがありません。

 例えば、「今度の週末は何をして過ごそうか」「たまには映画でも見に行く?」などとゆっくり話すこともできないカップルが、「自分はあなたを求めている」「ベッドの中でこんな時間を持ちたい」と話すことができるでしょうか。

 さらに言うと、日本の夫婦はセックス以外の触れ合いが少ないことも問題の一つだと思います。

 わたしたちの調査によると、「指圧やマッサージをする」という夫婦は全体の約4割と、高い確率で見られるのですが、一方で「キスをする」「手をつなぐ」「ハグをする」が極端に少ないことが分かりました。

 つまり、男女ならではの愛情表現を日常的に行っていないのです。恋人同士なら当然のようにしている男女のスキンシップがないのに、どうしてセックスができるでしょうか。いざセックスをしたいと思っても、そこへたどり着くまでの身体的な触れ合いが、普段の生活の中でとても乏しいのです。

 例えば、子育てのことを思い浮かべてみてください。赤ちゃんから幼児のうちは、誰しも、頬ずりしたり、抱きしめたりと密なスキンシップを親子で持っているはずです。けれども、子どもの成長に従って、スキンシップの機会は減っていきます。思春期のころになったらどうでしょう? ヨシヨシと頭を撫でることすら、しなくなっているのではないでしょうか。ある程度の距離感ができてしまったときに突然触れ合おうと思っても、とても難しいと感じませんか。子どもが何かの際にひどく落ち込んでいるときに、「抱きしめてやりたい」と思っても、すでにスキンシップをとらなくなっていると、やや抵抗を感じるかと思います。

 夫婦でも同じです。恋人時代や新婚時代にキスをしたり、抱きしめたり、手をつないだりといった愛情あるコミュニケーションをしていたのなら、それを維持する努力をぜひすべきだと思うのです。それが一度途切れると、先にもお伝えしたように、再開することがなかなか難しくなってしまいます。

 そう言われても、

「いい年になったら、そんなことは減るのが当たり前」

「日本人はスキンシップが苦手だから……」

 と受け止める中高年の方は多いことでしょう。

 しかし、それはある意味、間違った思い込みであるといえます。というのも、わたしたちの調査によると「ある程度の年齢になったらスキンシップが少なくなる」とはいえないことが分かったからです。

 2000年にこうした愛情表現としての身体的触れ合いについて調査した際には、わたしたちは触れ合いが少ないことについて、文化が影響していると考察しました。欧米ではあいさつとしてスキンシップを多々とるけれども、日本の文化はそうではないため、触れ合う機会が少ないのだと。

 ところが、2003年に行った単身者調査から、文化的な背景によってスキンシップの機会を失っているわけではないことがわかったのです。というのも、交際相手とどんなふうに触れ合っているかを尋ねたところ、「手をつなぐ」については5割以上のカップルが「行っている」と回答してきたのです。

 つまり、中高年であっても、単身者同士で付き合っているときには、「キスをする」「ハグをする」などの肉体的な接触を頻繁に持っているのです。

表ではあまり見かけないかもしれませんが、一度、家の中など私的空間に入ると、男女の触れ合いの時間は日本人にも確かにありました。

 そうなると、中高年夫婦の身体的触れ合いの少なさは文化のせいだけではないという見解になります。

 そこで次にわたしたちが考察したのが、父親的役割、母親的役割に伴う制約によるのではないかということです。

 多くの日本人は、家庭の中で自分たちの両親が目の前でハグやキスをしてスキンシップを図る環境で育ってきていませんね。わたしは2010年ごろに、当時教鞭をとっていた大学の学生たちにご両親についての質問をしてみました。すると、10人のうち、1~2人は両親が日常的にスキンシップをしていたり、二人で居酒屋に出掛けたりしていると答える学生がいました。しかし、8~9割の大多数は、両親がスキンシップをとっているのはあまり見たことがないという回答で、「そんなのを見たら気持ち悪い」と答えた学生もいました。

 つまり、日本では、父親・母親は、男と女であることを子どもの前で示さないという〝常識〟が依然として存在していると考えられます。

 実際に「パパ・ママになってからは、男女として向き合うことが難しくなった」と、わたしたちの調査に書いてきた方もいました。

 日本人の恥じらいや奥ゆかしさという特性は、とても美しいものだと思います。しかし、愛情表現を家庭の中で行わないという〝常識〟については、わたしは健全とは言い難いと感じます。わたしはもっと豊かな愛情表現を子どもの前でも行っていくべきだと思います。子どもたちも当然「夫婦は愛情表現をし合うことが自然なんだ」と無意識に学んでいくような環境の方が、幸せを感じやすいのではないでしょうか。セックスの維持が男女の精神的な結び付きを継続することにつながることを、先にお伝えしました。これは同時に、子どもたちに対してもプラスの形で伝播する──将来のパートナーに対して自然な形で愛情表現が行えるようになると考えられます。

 また、自分の両親の仲睦まじい姿を日常的に目にすることは子どもたちに安心感を与え、子どもたちの人格形成にプラスの影響をもたらすことは想像に難くありません。

「いまさら恥ずかしい!」

「相手に嫌がられるのではないか……」

 そんな戸惑いや不安感もあるかとは思います。でも、まずは「パパ」「ママ」と呼び合うことをやめて、恋人時代の呼び方に戻してみたり、肩が触れ合うようにして隣に座ったりするなど、小さなコミュニケーションを変えていくことからスタートしてみてはいかがでしょうか。

 徐々に触れ合う頻度を増やしながら、その一つ一つを新鮮な気持ちで楽しみながら、一から男と女の関係性を構築してみてください。

こうしたパートナーとの新たな関係性づくりを、中高年からの性愛の充実の第一歩にしてください。

中高年に訪れる体の変化