成功ビジネスのすごい仕組みをビジュアルで学べる! 情報編/『ビジネスモデル2.0図鑑』④

ビジネス

公開日:2019/7/22

 うまくいっているビジネスモデルにはどんな共通点があるのか? 「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と4カテゴリーに分けた全100事例を図解。すべてを同じフォーマットで比べながら、各企業の「すごい仕組み」を学べる一冊です。第4回目は「情報」カテゴリーから2社を紹介します。

『ビジネスモデル2.0図鑑』(近藤哲朗/KADOKAWA)

【情報】Amazon Go ~レジをなくして会計ストレスフリーに~

「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」は、Amazonがはじめた無人コンビニ。2016年12月に発表されて話題を呼んだ。1号店は今年2018年1月にシアトルでオープンしたばかり。

 これまで買い物客がストレスを感じやすかった「レジの行列」。会計はお店を出る前にするのが当たり前だったけれど、Amazonはテクノロジーを駆使してレジの無人化システムをつくった。そうすることで買い物客は店内で支払いをしなくてもよくなり、気軽で楽しい買い物体験ができる。入店するときにはコードを読み取るかたちで個人認証が必要になるが、一度入ったらお店を出るだけで、うそのように自動的に会計が完了する。

 Amazon Goのキモは、行動を解析するシステム。店内に人の動きをトラッキング(追跡)できるセンサーがあり、買い物中の行動を観察して、どの商品を購入したのかわかるようになっている。これらのシステムにはAIによるディープラーニングの技術も使われている模様で、特許も取っている。

 店舗の運営面では、レジ業務に関わる運営コストや人手不足といった問題を解消できるようになる。ただ、Amazon Goは単に効率性を追求したシステムではなく、レジ業務の自動化によって、店員はタイムラグのない在庫補充や買い物客とのコミュニケーションの機会が増えたり、または注文に応じた対面サービスができるなど、サービスの質をより高めることに注力できるようになる。そういった意味では、Amazon Goは小売業だけではなく、さまざまな対面サービスへの展開が期待できる。

 中国でも無人コンビニの開発が盛んで、アリババグループは「BingoBox」という無人コンビニをはじめている。Amazon Goは日本への参入予定を発表していないが、国内コンビニ各社が先にやるか、それともAmazonが先にやってくるか、もしくは中国が参入してくるか。この分野の競争はますます激化しそう。

【情報】クラシル ~「見る」から「つくる」にフォーカス~

「クラシル」は、2016年5月にスタートしたレシピ動画サービス。「クラシルシェフ」と呼ばれるプロの料理人による監修のもと、1日50本のペースで制作されており、2017年8月には「レシピ動画数世界一」を達成。豊富なレシピをアプリで見られる手軽さが、日々の献立に悩む人たちの心をつかみ、いまやレシピ動画界を牽引する存在になっている。

 レシピ動画といえば、BuzzFeed社の運営する「Tasty」をはじめ、日本では「DELISH KITCHEN」が、SNSなどの他メディア上で展開する分散型メディアで先行した。ブームが広がるにつれ、見た目に鮮やかな動画の数々がSNS上を賑やかしていたが、見た目に特化している分、その動画を参考に料理をするのは意外と難しい。

 クラシルはその点にいち早く目をつけて、「見る」から「つくる」へとフォーカスし、より実用的なアプローチで多くのユーザーを惹きつけた。料理をする際に重要なのは、レシピが探しやすく、つくりやすいこと。他社が分散型メディアで「拡散性」を高めていく一方、クラシルでは必要なときに、必要とされるものを届けられる「検索性」を重視して情報を集約するアプリへと注力した。分散型メディアのように見た目のインパクトを追うことから一線を置き、つくりやすく、実用性の高いレシピをストックできるのもポイント。結果、クラシルはアプリDL数、再生回数ともに日本一になった。

 レシピサイトは一般的に月額制のプレミアム会員費が主なマネタイズ手段になるが、クラシルはひと味違う。ユーザーの視聴と購買行動を集約し広告効果を可視化することで、企業からのタイアップ広告を集めることを可能にした。また、広告動画にはクラシルシェフも制作に関わり、動画に自然な形で企業商品を登場させている。これにより、ユーザーも広告に対してストレスなく視聴でき、従来のレシピサイトとは一線を画している。

 2018年1月には、ソフトバンクなどから33.5億円の資金調達を行い、7月にはヤフーが連結子会社化したことでも話題になった。ミッションに「70億人に1日3回の幸せを届ける」と掲げるとおり、「レシピ動画」が暮らしへ溶け込みつつあることは間違いない。

<第5回に続く>

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●プロフィール
近藤哲朗
株式会社そろそろ代表取締役。1987年生まれ。千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。ディレクターとして、Webサイトやアプリの制作に携わる。2014年、面白法人カヤックで出会ったメンバーと、社会課題の解決を目的とした事業や組織を応援するため、株式会社そろそろを創業。その一環で、noteで「#ビジネスモデル図解シリーズ」「#ビジネスワード図解シリーズ」を発表したところ、NewsPicksで合計20,000Pickを超えるなど、大きな話題を集める。現在は約50人体制の有志組織「ビジネス図解研究所」を運営し、「ビジネス×図解の追求」をコンセプトに、大企業やNPO法人向けにビジネス図解のコンサルティングを行う。

Twitter:@tetsurokondoh(チャーリー)
note:https://note.mu/tck