「仕事を選ぶ〜自由裁量の仕事で成長する〜」『レア力で生きる』③

ビジネス

2019/7/25


社会の変化のスピードは速く、これまでの学びの貯蓄だけでは足りない。学び続けて「自分の市場価値」を上げないと生き残れない時代になった。自分の「好き」を追求して、今こそマジョリティを抜け出そう。教育×テクノロジー(AI)分野における第一人者が、自らの学び習慣を全公開!

【03 仕事を選ぶ 〜自由裁量の仕事で成長する〜】

 仕事を選ぶ時の条件は、自分が好きなこと、やりたいことができることが第一です。けれどもそれ以外の要因、たとえば年収がいいから、大企業だから、内定をくれたから、といった理由で就職先を選んでいる人は少なくありません。

 もちろん、将来やりたいことをやるために、あえて違う業界で社会経験を積むケースもあるでしょう。自分の目的のために、知っておいたほうがいい世界や、やっておいたほうがいい経験もあります。

 そのように、やりたいことから逆算して考えた職業選択であれば、まだ自分でも納得できます。けれども、待遇の良さや人気度といった好きなこととは関係ない理由で仕事を選ぶことは避けたほうがいいと思うのです。

 私は韓国留学で、自分が社会に出てまずやるべきことが明確になりました。それは、日本の政治を知る仕事です。

 韓国は日本と違って歴史教育が盛んですから、誰もが自国の歴史について詳しく知っていますし、政治への関心の高い人が多いのです。

 でも私は、「日本の政治はどうなっているの?」と聞かれた時も、まったく答えられませんでした。そもそもまるで関心がなかったのです。

 海外の歴史や文化には関心があるのに、日本のことをまったく知らない。そのことを痛感した時にこれはマズいと思って、まずは日本の政治を学ぶことにしたのです。

 そこで、政治の世界から日本の全体像を俯瞰して見るために、議員秘書のインターンをやってみようと思い立ちました。もちろん、その時も、将来的にやりたいことは、教育の機会を子ども達に平等に与えること、という思いは変わりません。

 ただ、教育の世界でやっていくにしても、一度、政治の世界からこの国の大きな地図を見たほうがいい。そのうえで、自分がどういうかたちで教育に関わっていくべきか考えていきたいと思ったのです。

 議員秘書のインターンを始めたのは、早稲田大学大学院時代の24歳の時です。議員秘書は、零細企業の社員と同じようなもので、基本的に何でもやります。来客があればお茶を出し、電話が鳴れば対応します。議員に指示されれば地方に飛んでいくし、イベントに駆り出されることもある。スケジュール管理もするし、陳情がくれば受け入れます。議員が委員会の質問を作成した後の「レク」と呼ばれる関係省庁とのミーティングのセットもします。つまり、臨機応変にやるべきことを処理しながら、人への適切な対応も求められる、何でも屋のような仕事なのです。このように、決められたことだけをきっちりやるだけの仕事より、任されたことを自分がやりたいようにやる自由裁量の仕事が、私には向いていました。

 そこで、2カ月間のインターンが終わって大学院を出た後、正式に衆議院議員の秘書として働きはじめたのです。いくら就職氷河期とはいえ、大学院まで出て議員秘書になったのは、世の中広しといえども数はかなり少ないでしょう。

 就活生の間でよく話題になる人気企業ランキングにも、他の同級生の就活にも、まったく関心がありませんでした。それより何より、今の自分にとって必要なことは何か? 将来やりたいことに向けて今は何をすべきか?について考え、議員秘書を選択したのです。永田町の事務所にいた秘書は私ともうひとり政策秘書がいました。ただ事務関係は私が一手に引き受けていました。最初はわからないことばかりだったため、議員から怒られたこともあります。議員の地元の選挙区へ行って、応援してくれている住民や労働組合の人と一緒に、朝昼晩食事をしながら、泊まり込みで選挙活動をしたことも。

 人としゃべるのはあまり得意ではなかった私が、そういうことができるなんて、自分でも驚きでした。でも人間は、自分が勝手に「できないと思い込んでいる」ことが多く、やってみると意外とできることはあるものです。選挙活動で、人を巻き込みながら、目標に向かっていくことの達成感も味わうことができました。

 担当する議員が代わるたびに、秘書に求められる仕事も変わるので、その議員の性格をなるべく早く把握する術も身につきます。議員秘書はトータルで4年半ほど続けたので、日本の政治の仕組みや政界の内情なども、現場感覚で学べました。

 また、今まで出会った方々は、「議員秘書をやっていたことのある小宮山さん」として、次にお会いした時も、私のことをよく覚えていてくれました。議員秘書の前歴がありながら、まったく違う領域で仕事をしているのは、よっぽどレアケースなのでしょう。

 人と違う少数派であることこそが、価値を持つ。そういう仕事はたくさんあります。

<第4回につづく>