電子書籍で読書感想文はNG? 理由はもっともらしいけれど……

社会

2019/8/27

ジャーナリスト・まつもとあつし氏が、出版業界に転がるさまざまな問題、注目のニュースを深堀りする連載企画です!

■Twitterが騒然「電子書籍だと応募できない」

 夏休みも最終盤、宿題に追われる小中高生も多いはず。そんな中、Twitter(の一部)が騒然となる出来事が起こった。電子書籍では読書感想文コンクールに応募できない、と公式サイトに明記されていたことが指摘されたからだ。

 この注意書きを示しているのは、「青少年読書感想文全国コンクール」。公益財団法人 全国学校図書館協議会と毎日新聞が主催し、内閣府と文部科学省が後援する日本を代表する大規模なコンクールの公式サイトだ。

 Twitter上では「なぜ?」という批判が相次いでいる。電子書籍がこれだけ普及する中、筆者も合理的な理由が直ぐには思いつかないというのが正直なところだった。実はこの問題は2017年にも話題になったことがあり、当時ネットメディア「ねとらぼ」が主催団体事務局にその理由を尋ねていた。それによると、「感想文が本の内容に沿っているか、引用が適切に行われているかなどを確認」するためだという。

読書感想文を電子書籍で書くのはNG」ってどうして? 主催団体に聞いてみた (「ねとらぼ」より)

作品内容の変更により、応募者と同じバージョンを読むのが難しくなったり、更新履歴が明記されていないなどの原因から、そもそも内容変更があったのかどうか自体が確認できなかったりといったトラブルが発生する可能性も。電子書籍、ネット上の作品をすべて禁止するのには、こういった事態を回避して、読書感想文の審査ができる環境を守る意味合いがある

 このように記事では、一定の理解を示しており、将来的な応募要項のアップデートも検討されていることを紹介している。

 たしかに、このコンクールでは学年ごとに課題図書を示していることもあり、その審査にあたっては、「本当にその本を読んで応募してきたのか」を確認する必要はあると言えそうだ。

 しかし課題図書のページをみると、書誌情報は示されているものの、版を指定している様子は窺えない。課題図書となるような本が、応募者と審査者が異なるバージョンを読んでしまうような大きな改稿を行うといったことも相当まれではないだろうか? また、小中高生が書く読書感想文で引用箇所を厳密に示したり、研究者が書く論文のようにその正確性を審査の対象にしているとはちょっと考えにくい。そして、このコンクールでは課題図書のほかに「自由読書」という応募者が自由に選んだ本も対象となっている。そうなってくると、厳密な版や引用箇所が適切に行われているかの管理というのは果たして実効性があるのだろうか? 「読書感想文の審査ができる環境を守る」という意味がどのくらいあるのか、疑問は拭えなかった。

■本当に時代に即しているのか?

 青少年読書感想文全国コンクールの公式サイト「課題図書」のページからは、書籍販売サイトへのリンクも貼られている。honto、楽天ブックス、紀伊國屋書店など、いずれも電子書籍も販売するサイトばかりだが、リンクをクリックすると紙の本だけを扱う特集ページが用意されていることもあれば、楽天ブックスのように電子書籍も扱う通常の商品ページであることもある。

 例えば上記の例では、紙の本は品切れだ(記事執筆時点)。つい電子書籍に手が出そうになってしまう人も少なくないはず。いま町の書店もその数を減らしているし、児童書の入荷もかなり絞り込まれてしまっている。「紙の本しか応募できない」というのはもはや時代に即していないと言わざるを得ない。

 コンクールが「子どもや若者が本に親しむ機会をつくり、読書の楽しさ、すばらしさを体験させ、読書の習慣化を図る」という開催主旨を実現させるためには、むしろ電子書籍によって生まれた読書感想文も紙の本と同様に審査・評価ができる環境を早急に整えるべきであるはずだ。