今の時代なら「淫行」で逮捕!「お寺に連れ込んだ少女は、もう成人したかな」/『ざんねんな万葉集』②

文芸・カルチャー

2020/1/26

日本人は1,300年前からダメダメで美しかった…!
新元号「令和」の出典となったことであらためて注目を集めた万葉集。その収録歌数は、日本最大の4,516首!
中にはイマイチな歌もあって、カスな奴らが身勝手なイタい歌を詠んでいたりするのです。そんな万葉集から特にざんねんな51首を選抜。愛すべきダメ人間たちの歌に、思わずクスッと笑ってしまうはず!

『ざんねんな万葉集』(岡本梨奈:著、雪路凹子:イラスト/飛鳥新社)

昔お寺で抱いた少女は 大人になったかな

三八二二 作者未詳(男)

原文


寺之長屋尓
吾率宿之
童女波奈理波
髪上都良武可

和歌

橘(たちばな)の
寺の長屋に
我(わ)が率寝(ゐね)し
童女(うなゐ)放(はな)りは
髪上(かみあ)げつらむか

現代訳

橘の 寺の長屋に 私が連れ込んで寝た 髪を肩のあたりまで垂らした少女は もう髪を結い上げたであろうか

解説

「お寺に連れ込んでコトに及んだあの少女は、もう成人したかな」という歌です。椎野連長年(しいののむらじながとし)という人が、この歌にダメ出しをしています。

「寺は俗世間の人が寝るところではない」と。

 お坊さんや尼さんは、お寺で修行するために俗世のもの(親・恋人などの人間関係、地位、財産など)をすべて断ち切って「出家」しています。そんな場所に少女を連れ込んだら、ツッコまれますよね。

 しかも、「もう成人したかな?」ということは、連れ込んだ少女は未成年。現在なら「淫行」で逮捕です。ただし、こちらは、古文の世界ではセーフ。当時の価値観では、お寺でいかがわしい行為をすることのほうが断然アウトなのであります。

 ちなみに、この長年さん、「正しい決定案だ!」と修正した和歌を詠んでいますが、「改悪」とみなされています。ざんねんっ!

用語

長屋:棟割りになった長い建造物。ここでは、壁で仕切っている僧房。

童女:髪を肩の辺りまで垂らした少女の髪型。「放り」も同じ。

髪上げ:十二歳~十四、五歳くらいに成長した女子が、垂らしていた髪を結い上げて、後ろに垂らす成人の髪型にする儀式。

:完了の助動詞「つ」の終止形。

らむ:現在推量の助動詞「らむ」の連体形。

:疑問の係助詞。

<第3回に続く>