「愛してるけど、見られたくない…」口先ばかりで信用ゼロな残念男/『ざんねんな万葉集』③

文芸・カルチャー

2020/1/27

日本人は1,300年前からダメダメで美しかった…!
新元号「令和」の出典となったことであらためて注目を集めた万葉集。その収録歌数は、日本最大の4,516首!
中にはイマイチな歌もあって、カスな奴らが身勝手なイタい歌を詠んでいたりするのです。そんな万葉集から特にざんねんな51首を選抜。愛すべきダメ人間たちの歌に、思わずクスッと笑ってしまうはず!

『ざんねんな万葉集』(岡本梨奈:著、雪路凹子:イラスト/飛鳥新社)

きみを愛してるけど 二人でいるの 見られたくないんだ

 あぁ、僕はきみを命がけで愛している。嘘偽りのない愛を、きみに誓うよ。僕にとって、これが最後の恋になるだろうね。

 でもね……、今日、外に人が多い! 週末だからかな。だから、きみと会えないんだ。

 だって、恥ずかしいでしょ? 男女が二人で歩いているって、意味ありげに見られるでしょ?

 違うって! それは誤解だよ。きみのことは本気で愛してる。だから、人目が気になるんだ。

 あぁ、風になれたらなぁ。週末でも日中でも、どんなに人が多くても、誰にも見つからずに会いに行けるのになぁ。

 ……そんな目で見るなよ。

男だったら堂々としろ!
口先ばかりで信用ゼロです

二三五九 作者未詳

原文

息緒
吾雖
人目多社 吹風
有数〻 応相物

和歌

息の緒(を)に
我(あれ)は思へど
人目多みこそ 吹く風に
あらばしばしば 逢ふべきものを

現代訳

命がけで 私は愛しているが 人目が多いので 吹く風で あったならばたびたび 逢えるのになあ

解説

「人目が多いから」という理由で、会いに来ない男の歌です。

 見つかったら噂になるほどの有名人か、バレたらまずい不貞行為をしているのであれば理解できますが、もし、一般人で普通に付き合っているはずなのに、「人目が多いから」と気にされ過ぎてしまったならば、女性側としては「そんなに私イケてないのかな……」と少し傷ついてしまいそうです。

 人目を気にしなさ過ぎの人〔=公共マナーを考えられないような人〕も困りものですが、そんな理由で会いにこない男性は信用ならないですね。個人的には、そもそも「命がけで愛している」とか簡単に口に出す男性自体、信用できません。あ、ざんねんながら言われたことはありませんけどね。

 後半で、「もし風になれたならば、何度も何度も君に逢いに行けるのになぁ、ざんねんだな~」と詠んでいますが、この男の言うことですから、まったく嬉しくないですし、逆に少しイラっとくるかもしれませんね。口先だけで調子のいいことばかり言って、誠実さの欠片もない。こんな男の言うことを喜ぶ女性がもしいたら、それもざんねん。

用語

息の緒:命。通常「息の緒に」の形で「命がけで」の意味。

多み:形容詞「多し」の語幹+原因を表す接尾語「み」。「多いので」の意味。

あらば:未然形+ば=順接仮定条件。

ものを:詠嘆の終助詞。「~のになあ」の意味。

<第4回に続く>