両親が2度目の離婚! アルコール依存症の父が驚きの行動に…/実家が全焼したらインフルエンサーになりました①

文芸・カルチャー

公開日:2020/6/16

実家が全焼したらインフルエンサーになりました

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:

実家は全焼、母親は蒸発、父親は自殺…。新橋で働くサラリーマン“実家が全焼したサノ”がインフルエンサーになるまでの軌跡を描いた、笑いあり・涙ありのエッセイ集。

『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』(実家が全焼したサノ/KADOKAWA)

父が8回転して離婚した話

 僕は、大阪のはずれの町で生まれました。

 物心がついた頃、父は小さなリサイクルショップを経営していました。

 そして母は、老人ホームで働いていました。

 父と母の馴れ初めは、親戚からなんとなく聞いたことがあります。

 母はもともとデート商法まがいの方法で高級布団を売りつける天才で、まんまと父に高級布団を売りつけました。

 一方の父は女遊びの天才で、高級布団を買うことを口実に母とデートを重ね、最終的に2人は結婚に至ったそうです。

 親戚から聞いた話なので、この馴れ初めの真偽は定かではありませんが、当時20歳の父と27歳の母の間に「できちゃった婚」で生まれたのが僕、ということは事実です。

 普段は、父と母は愛し合っていたし、仲もよかったのですが、ケンカが始まるとお互いにヒートアップしてしまう性格でした。

 そして度重なるケンカが原因で、僕が幼稚園児の頃に2人は離婚してしまいました。

 両親が離婚した後、僕は母方の実家に引き取られたり、父方の実家に引き取られたりして、生活の拠点を転々としながら過ごしていました。

 幼稚園が変わるたびに、せっかく仲よくなった友達と、離れ離れになってしまうのが寂しかったのを覚えています。

 しかし、しばらくすると2人は仲直りして再婚し、また3人で暮らすようになりました。

 再び3人で生活できるようになって、僕も嬉しかったのですが、父と母はやはりうまくいきませんでした。

 ある日の夜、父が居酒屋で泥酔状態になり帰れなくなってしまったため、お店から電話を受けた母が、父を迎えに行くことになったことがありました。

 父はもともとアルコール依存症だったのですが、再婚してからしばらくの間は、母の前では飲酒を我慢していました。しかし、この日はダメだったようです。

 酔っ払った父を迎えに行くためにイライラしながら車に乗り込む母と、その気配を察知して恐る恐る後部座席に乗る僕。移動中も、母はずっとイライラしていました。

 ようやく父のもとにたどり着くと、父はのんきに「おーい、ここやー」と手を振っていました。

 僕はおさなごころにも、こりゃダメだ、と思いました。

 母はお店の人に謝りながら、父を助手席に乗せて車を出すと、案の定、車内でケンカが始まりました。

 母が「やっぱりもう無理、離婚する」と言うと、父は「なんでやねん! アホか!」と必死に引き留めました。しかし、母は引き下がりません。

 これはもう離婚するのだろうな、と、子供ながらに感じたのを覚えています。

 しかし、ここで父が一か八かの賭けに出ました。

「そこまで出ていきたいなら、もう俺が出ていくわ!」

 そう言って、父は走行中の車のドアを開け、外に飛び出したのです。

 深夜だったため、周りに車や人がいなかったのは幸いでしたが、車から飛び降りた父は、ゴロゴロゴロゴロと8回転くらい道路を転がっていきました。

 母は衝撃の展開に言葉が出ず、とりあえず父のところまで車をバックさせました。

 車から降りて道の脇で横たわっている父のもとに駆けつけると、父は瀕死の魚のようにピクピク動いていました。

 そしてか細い声で、「殺す気か……」と言うと、よろよろと立ち上がって、もう1度助手席に乗り込みました。

 後日、父から話を聞くと、これは母に離婚の話を忘れさせるための渾身の一発ギャグだったらしいのですが、思いのほか車のスピードが出ていたとのことでした。

 数日後、父と母はもう1度離婚し、母は家を出ていってしまいました。

<第2回に続く>

この記事で紹介した書籍ほか

実家が全焼したらインフルエンサーになりました

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:
ISBN:
9784046046895