ゲーム業界を熱く描いた『東京トイボックス』が、eスポーツをテーマにした新シリーズとしてスタート!

マンガ

更新日:2020/7/10

東京トイボクシーズ
『東京トイボクシーズ』
(うめ/新潮社)

“eスポーツ”。今から20年前にその名前が生まれ、1980年代から日本はゲーム大国のひとつとして、そして今ではようやく世の中にも浸透した競技となった。競技の誕生以降、SIGUMA氏を皮切りに、全国区へ存在価値を広めたカリスマ格闘プロゲーマー・梅原大吾氏、そして新世代の東大卒プロゲーマー・ときど氏と、続々と日本人プロゲーマーが誕生。国内のみならず世界で旋風を巻き起こしている。しかし世間では、“テレビゲームは遊びの範囲内”という認識も強く、“アスリート”として広く受け入れられていないのも現実だ。一方、eスポーツを教育現場へ持ち込む動きもある。プロゲーマーを育てるためのeスポーツ専門学校が誕生したり、eスポーツを部活として採用し、そのための環境が用意され放課後ネットゲームの練習をする高校も続々出てきた。最近では“eスポーツの甲子園”と呼ばれる大会「STAGE:0」が行われるほどだ。

 注目度が急上昇しているeスポーツ界を舞台に、かつてゲーム業界で情熱を注ぐ人たちの熱いドラマを描いた有名作品が、新たにリスタートした。『東京トイボクシーズ』(うめ/新潮社)をご紹介! 要潤さん主演で2度も実写ドラマ化を果たした名作『東京トイボックス』のシリーズ最新作だ。


 本作は、eスポーツ科を新設した私立の名門校を舞台に、若きプロゲーマーが挑む青春群像劇だ。ゲームで得た賞金で生活をするスタイルを貫きながら、海外のチームで脚光を浴び活躍する15歳のプロゲーマー・TOMCATこと安曇野蓮(あずみのれん)。ある日、蓮のところへ2人の男女が訪ねてきた。彼らの目的は、eスポーツ業界に新たな風を吹き込むべく、eスポーツ科を新たに設立した私立名門高校へのスカウトだった。しかし、今の生活スタイルを崩したくない蓮はそのスカウトを断ることに。

 それまで純粋にゲームに勝つことにガムシャラだった蓮に、あるとき所属チームは信じ難いプレイの“演出”を提案する。強い違和感を訴えた蓮に対して、チームからは衝撃の通告が…。蓮はスカウトされた高校進学へと導かれていくのだが、果たして、蓮の入部が日本のeスポーツ界の起爆剤となるのだろうか? アマチュア高校生プレイヤーと共に高校eスポーツの頂点とプロゲーマーとしての再起を目指す蓮の姿が見ものだ!

 この新シリーズで、eスポーツを盛り上げようとする仕掛け人は、前作の登場人物でもある。それが安曇野蓮をスカウトした人物のひとり、仙水伊鶴なのだ! 前作の主人公とこの伊鶴やクリエイターたちの間にはある“ゲーム作品”を巡るさまざまな制作上の戦いがあり、複雑で熱いドラマが描かれてきた。そして月日は流れ、今作。安曇野蓮がプロゲーマーとして活躍し、世界3000万人がその決勝戦を見守るゲームタイトル――それが、前作で作られて格ゲーとして生まれ変わった「サムライキッチンX(エックス)takeout」というゲームである! ここにもまた前作との関わりがあり、ファンにとっては非常に胸を熱くさせてくれる設定だろう。もちろん新作から読み始め、遡ってシリーズ前作を読むことも楽しみのひとつだ。

 さて、安曇野蓮が1期生となり始動する名門・私立白郷学園eスポーツ科。そのドラマは、入学式から始まる。壇上に上がった蓮の生徒代表の挨拶では、eスポーツ界を嘲笑うような世間に対するこれからの抱負が熱く語られ、他の学科の生徒や保護者、教師陣も圧倒する。見事な名シーンの誕生だ。この挨拶を聞いていたひとりが、親が敷いたレールを辿るような人生を送っていると感じていた同期生でゲーム初心者の神崎真代。きっと蓮と共に高校eスポーツ界を駆けていく重要人物となってこの青春物語を盛り上げてくれるだろう。

 高校eスポーツ科の未知なる行方に終始ワクワクさせられる今作。世間がゲームを“スポーツとして”認めるような、痛快な逆転への連続コンボをぜひ見せて欲しい――と、筆者も先日偶然に購入したゲーミングチェアに座りながらこのレビューを書いている。座り心地最高! ストレスなく長時間集中して作業ができるこの椅子が人気があるの、すごく理解できる…。

文・手書きPOP=はりまりょう

【こちらも読みたい】
カワイイ表紙は「地獄絵図」への前フリ!? 伝説のトラウマ級サイコ漫画が満を持して蘇った!