「年収」と「幸福度」の関係性。年収いくらあると幸せ? 2倍になったら幸せなのか?/99.9%は幸せの素人③

暮らし

更新日:2021/2/2

この本1冊で今の不安や悩みが解決されるとしたら…? シリーズ20万部突破の『神メンタル』『神トーーク』の星 渉氏と、幸福学研究の第一人者・前野隆司教授の共著。科学的に自分で自分を幸せする「すごい裏ワザ」が満載! 読んだ日から行動にうつせる「即実践! 行動のレシピ」付き。

99.9%は幸せの素人
『99.9%は幸せの素人』(星渉、前野隆司/KADOKAWA)

「お金が全てじゃない」を言い訳にしたい

誰だって本当は「お金はほしい」に決まっている

 ちょっとここで私の話をさせてください。

 今でこそ私は、7つの事業を展開し、著書も2冊で20万部を超えるベストセラーになりましたが、会社員を辞めて起業した時は、何をどうやったらお金が稼げるのかが、まったくわかりませんでした。

 当時の私は、10カ月間も無収入の状態……。

 この時ほど「お金がほしい!」と考えた日々はありません。

 それと同時に、たびたび「お金が全てじゃない」と口にしていたものです。

「お金が全てじゃない」と自分に言い聞かせることで、「理想とする生き方を実現しようと思って起業したけれど、その結果、無収入が続いている情けない自分」を自己防衛していたわけです。

 1億円もらえるなら誰だってもらいたいはず。当時の私も迷うことなくもらったと思います。いや、ちっぽけなプライドが邪魔して少しは迷うふりをするかもしれませんが……。

 ただ、事実として、お金は私たちを幸せにしてくれます。それは科学的な調査でも明らかになっているのです。

 ノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のダニエル・カーネマン名誉教授が、人は収入が増えれば増えるほど感情的にも幸せになることを明らかにしてくれています

99.9%は幸せの素人

 お金はあったほうがいい。

「お金が全てじゃない」は〝キレイごと〞ですよ、本当に。

 私も、無収入生活から脱して収入を得られるようになった時は、本当に、とてつもなくうれしかったものです。何かの〝ご褒美〞としてしか飲めなかった「金麦(発泡酒)」を毎日飲めるようになったことが最高にうれしく感じたことを今でも覚えています。

 だからこそ「お金が全てじゃない」なんて〝キレイごと〞を言わないで、お金は稼ぐべきなのです

 お金は人を幸せにしてくれます。

 ……年収800万円までは

 

 もう一度言います。

 年収800万円になるまでは、お金は私たちを幸せにしてくれるので、どんどん稼ぎましょう。

 

「お金の限界」を明らかにする衝撃の研究結果

 カーネマン教授は「年収7万5000ドル(日本円にして約800万円)までは、収入が増えれば増えるほど幸福度は比例して大きくなる」ことを科学的に明らかにしました。

 ところが、実はこの話には続きがありました。

 カーネマン教授の結論は、「年収800万円付近を境に、それ以上収入が増えても幸福度はほぼ変わらない」だったのです。

99.9%は幸せの素人

 そう、人の幸せに関しては、お金にも限界があったわけです。

 とはいえ、年収800万円までは収入が増えれば増えるほど幸せになるのですから、まずはそこまでお金を稼げるように工夫すべきです。

 

 ただし……。

 お金を稼いでも、「幸せになる人」と「幸せにならない人」がいます

 

「年収が2倍」になるために私たちが支払う代償

「もっとお給料、上がらないかなぁ〜。年収を今の2倍にしたい」

 誰しもが思ったことがあるはず。

 では、それが現実になったらあなたの幸福度は、どれくらい増えると思いますか?

 

A 2倍以上  B 1.5倍  C 1.3倍  D 変化なし

 

 まあ、それなりに幸福度は上がると思いますよね?

 だって〝(年収)2倍〞ですから。私も想像しただけでウハウハです。

 しかし、カナダのブリティッシュコロンビア大学のエリザベス・ダン准教授と米ハーバードビジネススクールのマイケル・ノートン教授の共同研究でわかったのは、次の事実。

 

「年収が2倍になっても、私たちの幸福度はたった9%しか上昇しない」

 

 えっ?……たった9%?……驚きですよね。

 ただ、次のように考えると納得できる部分もあります。〝年収を2倍〞にするためには、どれだけの努力が必要で、どれだけの時間と労力がかかるでしょう?

 睡眠時間を削り、仕事に打ち込む時間を増やす必要があるかもしれません。家族との時間を犠牲にする必要があるかもしれません。休日も毎日出勤して、残業も増えるかもしれません。

 多大な努力と労力、そして犠牲のうえで得ることができた2倍の年収……。

 何かを犠牲にして得た2倍の年収では、幸福度もさほど上がらないというのは、納得できる話です。

 

 これが、たとえば「独身で今の仕事にやりがいを感じていて、持てる時間の全てを仕事に費やしても失うものはない!」という人だったら、問題ないでしょう。起業したばかりの頃の私が、まさにそんな状況。知り合いも頼れる人もいない東京で、1人無収入の生活。仕事以外にやることはありませんでしたから。

 一方で、家族との時間や、子育て、友人、趣味の時間を大切にしたいという人だったら、話は別。大切な時間を犠牲にして年収が増えても、幸福度が増えるか? と言われれば……微妙なところです

 

 では、いったい私たちはどうすべきなのか?

・年収800万円まではお金を稼いだほうが幸せになれる
・年収が2倍になっても、たいした幸福度は得られない

「……結局、お金は稼いだほうがいいのか、稼がないほうがいいのか。どっちなの⁉」

 そのように心の中で思ったそこのあなた!

 まさにこれが「〝お金を稼ぐ努力〞は必ずしも私たちを幸せにする努力ではない」ことの裏付けでもあるわけです。

<第4回に続く>