メイクをする ということ/巴奎依の社会不適号㉘

アニメ

公開日:2021/4/16

巴奎依
撮影=山口宏之

こだわりが強いと、どうしても完璧主義になってしまいがちで、自分の中でこだわってこだわって、大切に育てたものに人の手が加わってしまうと、急に自分のものじゃないような気がしてきて、さっきまであんなにこだわっていたのに途端にこだわりがなくなり、扱いを適当にしてしまうことがあります。

特に私は、「私に対してのこだわり」が強く
「こういう人になりたいな」という理想が、こだわりすぎた結果、「こういう人でいなくちゃならない」に変わっていってしまいます。

たとえば、服の系統を数年の間で何度も大きく変えてしまうのですが
きっとこれは、私の中の、「こういう人になりたい」が完璧主義ゆえに「こういう人でいなくちゃならない」に変化した結果だと思っています。

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その度にクローゼットの中の服を全部捨てては、また一から買い揃えているので、本当に面倒だと分かっているんですけどね…。

ファッションに関しては自分だけで完結するので、実はそこまで大変なことはなくて、
自分のこだわりに一番振り回されてしまうのは、断トツでメイクだったりします。

このお仕事をしていると、ヘアメイクさんにメイクをお願いすることが多いのですが
ここで自分のこだわりとどう折り合いをつけるかが、私にとってはすごく重要です。

昔はこだわりへの尖り方が今よりもすごく、
ヘアメイクさんの手が加わることさえ許せない時期がありました。

今よりもずっとコンプレックスが強く、プロが施す「長所を生かすメイク」よりも、「短所を隠すこと」に重点を置いていました。

最近は歳を重ねたのもあり、考え方が少しだけ柔軟になり、コンプレックスに対する気持ちも以前より軽くなりました。

とはいえ私のこだわりが厄介なのは、メイクにおける数ミリのズレを許せないところなんです。

色に対するこだわりとか、そういうざっくりしたものであれば言葉で伝えやすいのですが
私はどうしても、「目尻のラインを右目だけ①ミリ下げたい」とか「眉毛が数ミリずれて左右対称じゃない」とかが、本当に面倒くさいタイプで。

そんなの本人にしか分からないし、あまりにも嫌味っぽすぎて、さすがに伝えるのは躊躇います。

だけど顔は、1ミリが命取りですから。
その1ミリが違うだけで、本人の気持ちは180度変わりますし、そもそも顔という限られた小さなパレットの上で、1ミリは大きすぎる。

これが、こだわってしまう理由なんだと思います。

よく漫画とかで、男性が女性に対して「メイク変えた?可愛いね」と指摘して女性が喜ぶシーンなどがあったりしますが、
わたしはあれが全くよく分かりません。

化粧を落としたときに、「すっぴんの方が良いじゃん」というセリフもそう。
私的には、全くもって褒め言葉ではないんです。
だってその人は朝、そのたった1ミリにたくさん時間をかけてきているかもしれないのに。

好意を向けている人がどこか雰囲気が違う、おそらくメイクが違うから褒めたいな、というときは
とにかく「可愛いですね」でいいんです。
「可愛い」という言葉はすでに大きなパワーを持った言葉ですから、褒めるときにはまわりくどいことはしないのがおすすめです。

ともえ・けい
2012年よりA応P(アニメ“勝手に”応援プロジェクト)のメンバーとして活動をスタート。2020年8月2日に、A応Pを卒業。現在、インターFMにて毎週土曜28:30〜「DJサブカルクソ女の音楽解体新書」にてDJ番組を担当、DJCD「A応P BEST DJCD PRODUCED by DJサブカルクソ女」をリリースするなど、「DJサブカルクソ女」としても活動中。社会不適合者(自称)。
公式Twitter:@kei_tomoe
公式Instagram:kei_tomoe_official