契約社員・パート社員・派遣社員の違いは?「フルタイムパート社員」は法律上存在しない/武器としての労働法③

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公開日:2021/5/8

武器としての労働法』から厳選して全4回連載でお届けします。今回は第3回です。社員、契約社員、派遣、アルバイト、フリーランス…。雇用形態が多岐にわたるなか、「働くこと」のトラブルもまた多岐にわたる時代になりました。トラブルを乗り切るために大切なのは、あなたの働き方を深く知ることです。「泣き寝入りしない」ために、まずは基本知識を学びましょう。

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武器としての労働法
『会社に人生を振り回されない 武器としての労働法』(佐々木亮/KADOKAWA)

「契約社員」は〝期間の合意〟が重要

 会社で「契約社員」と呼ばれている労働者も多くいます。

 しかし、契約社員も法律用語ではありません。そもそも、契約社員といっても、会社で働く労働者は皆、会社と契約を結んで働いているのですから、労働者は全員「契約社員」といっても、おかしくありません。

 ただ、日本では有期雇用の社員を契約社員と呼ぶことが多いようです。正確な理由は不明ですが、おそらく、会社と契約書を交わし、働く期間を決めているのでそう呼ぶようになったのでしょう。

 ここで気をつけたいのは、契約社員は有期雇用が多いといっても、なかには無期雇用の契約社員もいることです。

 もし、あなたが、雇用期間について、会社との間で何の合意もしていなければ、雇用期間は無期ということになります。なぜなら、雇用期間を定めるのであれば、期間の長さをきちんと決めて書面で通知したり、契約書を交わしたりすることが法律上求められているからです。そこで、期間についての合意がなければ、それは無期雇用の契約ということになるのです。

 雇用契約に期間の定めがある場合、契約は「契約期間が満了になったら、その会社での仕事もそこで終了」というような内容だと思います。しかし、実情は有期雇用で働く労働者の多くは契約を「更新」しています。そのため、「有期」といっても、実際には長期間にわたって同じ会社で働き、契約の更新を繰り返しているケースも珍しくありません。

 それなのに期間満了を理由に突如契約を打ち切られる(これを「雇止め」といいます)ことがあり、そうしたトラブルがとても多いのです。

 法律では、期間の定めがある雇用契約を更新する可能性がある場合には、契約書に、「更新する場合あり」と明記し、その更新する判断の基準も明らかにすることになっています。

 基準としてよく記載されているのは、「会社の業績と本人の能力、資質など総合的に考えて更新する場合がある」などという一文です。期間の定めのある雇用契約を締結・更新する際には契約書の更新基準がどのように規定されているか確認するとよいでしょう。なお、契約に期間の定めがない「契約社員」は無期雇用ですから、「更新」というもの自体がありません。

「フルタイムパート社員」はあり得ない

「パート社員」はフルタイムで働いていない働き方をする社員のことをいいます。たとえば、月・水・金だけの勤務である、正社員が1日8時間働いているところ5時間の勤務であるなど、短時間の働き方をしている社員をパート社員といっています。

 ところが、たまに次のような存在の社員がいます。

「フルタイムパート社員」。

 パート社員なのにフルタイムで仕事をしているから「フルタイムパート社員」と呼ばれているのですが、これはもう、法律上ではパート社員とはいえない存在です。パート社員を法律では、短時間労働者といい、通常の社員に比べて短い時間、仕事をしている社員を意味します。〝短い〞というのは例にあげた通り、週3日や、1日5時間という働き方です。

 たまに、「無期雇用のフルタイムパート社員」という人もいますが、会社では正社員として扱われていないだけで、責任の重さはともかく働き方としては一般的な正社員と同じことになります。

 また、「アルバイト」と呼ばれる働き方をしている人も多くいます。しかし、アルバイトは法律用語ではありません。アルバイトと呼ばれる働き方を見ると、その多くはパートタイムと同じ働き方をしています。社会的には、学生やフリーターなどが短期で仕事をするときアルバイトと呼ぶことが多いようですが、法律上は「アルバイト」と呼ばれているかどうかはあまり意味がありません。たとえば、「週3日の学生アルバイト」の場合は、法律上はパートタイム社員というカテゴリーに入ります。

「派遣社員」は働いている会社の社員ではない

「派遣社員」はこれまで見てきたような正社員、契約社員、パート社員に比べて少し複雑な関係にあります。

武器としての労働法

 図1 – 1でわかるように派遣社員をめぐる登場人物には、派遣社員という労働者以外に、派遣元会社、派遣先会社があり、三者の関係になります。他方、正社員、契約社員、パート社員の場合は、労働者と会社の二者しか登場人物はいないので、関係はシンプルです。

 派遣社員が雇用契約を結んでいるのは派遣元会社ですが、実際に働いている会社は派遣先会社です。働いていても、派遣先会社と派遣社員とは雇用契約を結んでいません。派遣元会社と派遣先会社は労働者派遣契約という契約を結び、この契約に基づいて派遣社員を派遣しています。

 この構造では、仕事についての指揮命令は派遣先会社から派遣社員に対して出されます。派遣社員は派遣先会社とは雇用契約を結んでいないのに、派遣先会社の指揮命令に従って仕事をします。そして、労働に対する賃金は実際に就業している派遣先会社からではなく、派遣元会社から支払われます。

 派遣社員と派遣先会社の間には給与のやり取りは一切ないのです。よく考えると、不思議な雇用形態です。

 かつて、このような雇用形態は禁止されていました。なぜかというと、派遣された労働者に支払われる給与が中間搾取(いわゆる「中抜き」)される危険性が高いことや、雇用関係の複雑さゆえに就業中の事故の責任を誰が取るのかがあいまいになってしまうことなどの理由から、危険な働き方と見られていたからです。そのため、「労働者を供給する」ことを業務にするような事業は規制されていました。

 しかし、1985年(昭和60)に労働者派遣法(正式名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」。2012年〈平成24〉に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に改正)が成立し、法律を守ることを条件として規制が緩和され、こうした「労働者を供給する」事業が一部で認められるようになりました。その後、規制緩和が続き、今では派遣社員はすっかりよくある働き方になっています。

 ただ、法律を守るといっても、この働き方の危険性がまったくなくなったわけではありません。今でも派遣社員の低賃金化の問題があり、景気が悪くなると真っ先に「派遣切り」されるなど、非常に弱い立場におかれ、さまざまなトラブルが起こっているのが現実です。

 一方で、派遣という働き方は柔軟な働き方だとの指摘もありますし、正社員ではなく派遣社員として働きたいという労働者側のニーズが強調されることもあります。この場合でも、雇用としての不安定さはほかの雇用形態とは比べ物にならないほど高いというデメリットがあることを、よく理解しておく必要があります。

<第4回に続く>

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会社に人生を振り回されない 武器としての労働法

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:
ISBN:
9784046049728