鳥の羽ばたきをマネした飛行機! 4年の開発の末に…/ざんねんな兵器図鑑・極⑤

社会

公開日:2021/5/22

ざんねんな兵器図鑑・極』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第5回です。開発者が大真面目に考えて作った結果、出来上がった“見た目も性能もざんねん”な兵器たちをご紹介。陸・海・空のユニークすぎるざんねん兵器の世界へようこそ!

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ざんねんな兵器図鑑・極
『ざんねんな兵器図鑑・極』(世界兵器史研究会/KADOKAWA)

ざんねんな兵器図鑑・極

所属:イギリス 年代:1942年

 本機は、イギリスのボールトンポール社が提案した対地攻撃機の1つです。とにかく武器を胴体に詰め込むため、邪魔なプロペラは後ろに置き、翼も後ろへ傾け、補助としてカナード翼*を前方に配置しています。

 これだけでもかなり独特な見た目をしていますが、本機の真骨頂は奇想天外な脱出装置にあります。プロペラが後ろにあると、機体からパラシュートで脱出する場合、パイロットがプロペラに巻き込まれる危険性があります。本機はその解決方法として、胴体の前半分が口のようにパカッと開き、パイロットが下に滑り落ちるようになっていました。しかし、この設計では最悪の場合、戦闘中にいきなり胴体が開いてパイロットが落下してしまう危険があったため、本機は不採用となりました。

*主翼を後ろに配置した際、水平尾翼の代わりに取りつける前翼のこと。

ざんねんな兵器図鑑・極

所属:フランス 年代:1936~1939年

 鳥は翼を羽ばたかせて空を飛びます。その動きに着目し、自分の翼を羽ばたかせて空を飛ぼうとした飛行機がいました。フランスのルネ・リュー技師が開発した「アレリオン」です。この飛行機にはプロペラがなく、2枚の主翼が鳥のように羽ばたき、その力だけで飛行するのです*。

 本機は4年にわたって開発されましたが、1回も飛べませんでした。それもそのはず、鳥は体重が軽く、風切り羽やその他の細かい羽毛を使って飛んでいるのに対し、その羽の動きを表面的に真似しても、空を飛べるわけがないのです。

 最後の飛行試験では、あまりにバサバサと主翼を動かしすぎて翼が折れ、ついに廃棄されてしまいました

*このような飛行機を、「オーニソプター/Ornithopter」といいます。

ざんねんな兵器図鑑・極

所属:アメリカ 年代:1966年

 アメリカのシュワイザー社が開発したX-26は、元々はグライダーで、パイロットの飛行訓練に用いられた機体でした。しかしベトナム戦争が始まると、アメリカは何を思ったか、本機を隠密偵察機に改造することを決定しました

 X-26はグライダーなので、自力で空を飛ぶにはエンジンとプロペラが必要です。小型の機体にその機能を収めるのは無理があったようで、偵察機に改造されたX-26Bは、大きく上に張り出したエンジンから無理やりプロペラを連結させた、とても不格好な機体になってしまいました。実戦でもあまり役に立ったとはいえず、早々に元のグライダーに戻されたそうです。

ざんねんな兵器図鑑・極

所属:ソビエト連邦 年代:1982年

 ヘリコプターはいろんな物を運ぶのに便利ですが、物を運べる量は飛行機に比べると少なめです。ソ連ではその限界を超えるため、普通のヘリとは比べものにならない超巨大ヘリコプター「Mi-32」の計画を打ち立てました

 本機は3つのメインローターを三角形に配置したトライアングル型の構造をしていて、それぞれの頂点からワイヤーを吊り下げて荷物を運びます。普通のヘリコプターが1回で運べる荷物の量は最大2.5t程度ですが、本機はなんとその56倍、最大140tの荷物を運ぶことができました

 しかし、前例のない形のヘリを作るのが難しく、搭乗員がこの機体専用の操縦訓練を受ける必要があることなどから、計画は実現せずに終わりました。

<続きは本書でお楽しみください>

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