ちょっと1回タバコ吸うわ/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』㉑

小説・エッセイ

公開日:2021/9/17

オズワルド伊藤
撮影=島本絵梨佳

大人になってから「趣味はなんですか?」と聞かれて、別にないことが悪いことであるわけがないにもかかわらず、趣味という趣味をあげられずに自分はなんてくだらないんだと肩を落としたことがあるなんて人は確実に僕だけではないはずだ。

なんなら『無趣味村』、バチカンくらいの規模なら『無趣味国』作れる程であると思う。本当に本当に作る必要がないから作らないだけで。作る理由さえありゃこっちもいつでもやってやんよといった心持ちである。

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長渕剛先輩の歌にも、夢は何かと聞かれるのが1番怖い、といった意味のフレーズが登場する。

ざっくり言うと、都会の真ん中で自分を見失いそうになっている男がもがいてもがいて本気で生きてやろうじゃないのという歌である。
このフレーズと全く同じ気持ちになることがある。

趣味はなんですか? と聞かれることが、この世で1番怖く思えた瞬間が何度かあるのである。

前述にもある通り、趣味はなんですか? と聞かれて、趣味を答えられなかった時、なぜだかわからないが自分はとんでもなく薄い人生を過ごしてきてしまったのかという気持ちになる。
まじでただの錯覚なのだが、特に趣味がある人間にこの質問をされるのが苦痛でたまらない。

趣味なんてないと答えた際の、こいつなにが楽しくて生きてるんだろうみたいな顔がとても見てられない。なんか敬語で喋らなきゃいけないような気がしてくるの。基本的に腰が重いオイラだけど、それなりに楽しく人生過ごしてんだからほっといてよって感じ。でもたまにはこっち向いてよって感じ。

ただなにが1番腹立つってね、実は趣味を聞かれた時に、自分の中で唯一これかな? ってのを答えたことは何回かあって、その答えがまるで不正解みたいな空気になった時。これが1番許せないの俺は。答えてんのに。答えてんのにそれは趣味と言えますかねみたいな顔されんの。なんか周りの人達にもこれは趣味ですかね? みたいな確認し始めた人もいたの。新種の虫見つけみたいに。これは昆虫に入りますかねみたいに。

その答えってのが、酒とタバコである。

この2つが唯一、僕が人生で長続きしているコンテンツ。それを趣味と言わずなにを趣味と言えるのかわからないが、少なくとも酒とタバコと答えた時の鼻で笑われてる感じは忘れられないのだ。

どちらも僕が愛してやまない事実は変わりないのだが、どうやら趣味と呼ぶには日常の一部となりすぎているのか、どうにも枠組には入れてもらえないようなのである。

特にタバコに関してはてんでお話にならないといったご様子であった。
この大嫌煙時代に、今もなおタバコを吸い続けてるというのに趣味としても認めてもらえんのか。
僕はこんなにもタバコを愛しているのに。

思えば長い間煙にまみれて生きてきた。

朝起きてタバコ1本。風呂入ってタバコ1本。飯食って1本。歯磨いて1本。とにかく全コマンドが終わる度にタバコに火をつける。ていうか全コマンドタバコに火をつけるまでの助走と言っても過言ではない。
タバコを吸う為に飯を食い、タバコを吸う為に眠りにつき、タバコを吸う為に息をして、タバコを吸う為に生きている。タバコを吸う為にM-1優勝したい。優勝したあとの最初の1本の味を想像しながら今もタバコを吸っている。不思議と優勝したみたいな味する。ん? 俺優勝した? まだ? あっ、まだなんだ。ちんたらやってんじゃねえぞ俺。けつに火着いてんだからこっちは。タバコだけにね。

ここまで言って気づいたことがある。
そりゃタバコは趣味ではない。
タバコとは俺。俺とはタバコなのである。
タバコがピンチの時は誰よりも早く駆けつけるし、逆に俺が困った時は身を灰にしてでも落ち着かせてくれる。
タバコは俺を裏切らないし俺はタバコを裏切らない。吸い続ける。いや、好い続けるのである。

最終的にJTの回し者みたいな発言の連続ではあったが、要するに僕は無趣味なのだ。
それでも全ての瞬間に、タバコさえあれば趣味みたいに楽しめると思えてしまう僕は、やはりJTの回し者なのかもしれない。

一旦辞めさせて頂きます。

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オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020ファイナリスト。


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