絵本専門の本屋さんがおすすめする「クリスマスに贈りたい絵本」11選!

文芸・カルチャー

更新日:2021/12/11

 子どもの頃に繰り返し読んだ絵本、読み聞かせしてもらったお気に入りの絵本はありますか? 大人になって改めて読んでみると、意外な発見や自分の感情に出会えるのが絵本の魅力でもあります。ダ・ヴィンチニュースでは、上白石萌音さん、ryuchellさん、絵本専門書店・出版社の絵本のプロのみなさんに「クリスマスに贈りたい絵本」を選書して頂きました! 大切な人への贈り物に、まだお子さんのクリスマスプレゼントが決まっていないという親御さんの参考になれば幸いです。

 絵本のプロのみなさんには、A~Cの3つのポイントから絵本を選書して頂きました。

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊
B.読んで衝撃的だった1冊
C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

1 あっぷっぷ(福岡県・太宰府)

【選者】絵本の店あっぷっぷ 店長・三角綾さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

大切な友人とそのお子さんへ

【選んだ理由】

 もうすぐクリスマスを迎えるある晩のこと、10人の天使は、おなかをすかせたどうぶつや泣いている子ども、ひとりひとりにそっと手をさしのべます。私たちもそっと助けられているのかもしれない、見守られているのかもしれないなあと、なんだかほっとするような感じがします。とてもやさしい気持ちになれる1冊です。

 絵本の装丁もとても素敵で、絵本の扉を開くと10人の天使の後ろ姿があり、ページをめくるとかわいらしい天使がページの上にひょこっと顔を出します。大切な友人とそのお子さんの幸せを祈りつつ、クリスマスに贈りたい1冊です。

2 ウーフ(香川県・丸亀)

【選者】ウーフ スタッフ山崎洋子さん

C.手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

SDGsに関心を持ち始めた高校生へ

SDGsの学習を始めたので、フェアトレードの商品の取り扱いや仕入れ方法について聞かせて欲しいと女子高校生がご来店。真っ直ぐな眼差しの彼女に勧めたい1冊。

【選んだ理由】

 広い空、瞬く星、渡る風…。プリンセス・ジージーはアフリカの大地を愛する少女。早朝から、母さんと川へ水汲みに出かける。ようやく水場につき、行列を待つ間だけが、友だちとの楽しいひととき。家に辿りつくのは日没の頃。飲み水を沸かし、洗濯や食事の用意を済ませて、やっとジージーは水を飲む。水が身体中に染渡る…。そして、また次の朝、遠くまで水汲みに行く毎日。ジージーは願っている。“冷たくてきれいな水があるといいな いつの日か きっと…”

 蛇口を捻ると水が出るのが当たり前の私たちには、想像もできない暮らしを送る人たちが、世界中には10億人もいる。水汲みの仕事で、教育も受けられない人たちがいることにも、想いを馳せて欲しいという願いから。

ウーフ
香川県丸亀市土器町西5-88
営業時間:10:00~18:00(月曜定休)
TEL:0877-24-4667

【お知らせ】
しあわせな子ども時代を応援することをコンセプトに、1989年こどもの日にオープン。コツコツと愛情を込めて作られたおもちゃと、赤ちゃんから大人まで楽しめる絵本をご紹介するとともに、わらべ歌講習会、ウォルドルフ人形講習会などを開催しています。また、ウーフスタッフがセレクトした絵本の定期便「Book クラブ」を企画しています。年齢、ご希望に合わせた1年間のコースです。絵本選びで悩まれている方、遠くの方に絵本をプレゼントされたい方に。

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3 絵本専門店グリム(静岡県・沼津)

【選者】絵本専門店グリム 副店長・工藤恵理子さん

C.手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

子どもから大人すべての人へ

【選んだ理由】

 壁一面の本棚、棚いっぱいの本、大きならせん階段。なんと魅力的な本屋でしょう。この店長さんはほんやねこ。ほんやねこが早めに店じまいをして、いそいそとお散歩へでかけます。
うっかり窓を閉め忘れたことも気がつかずに。

 突然、強い風がふき絵本がバラバラパラパラとめくれると、シンデレラやラプンツェル、さんびきのこぶた、ピノキオたちが窓の外へ…。おなじみのものがたりの人たちです。でも少し記憶から遠のいていたような気もします。再会がとても嬉しくワクワクしてきます。今一度本の世界へ入りたくなります。

 本を閉じると温かな気持ちで満たされます。カバーを外すと巧みに演出されたおしゃれな表紙。それはこの物語のモノローグといえましょう。贈り物にピッタリです。物語への招待状のような1冊です。

【お知らせ】
【ほんやねこ原画展】
『ほんやねこ』(石川えりこ/講談社)
12月2日(木)~12月23日(木)
緻密で美しく描かれた絵はものがたりの世界。ぜひ、原画でおたのしみください。

4 クレヨンハウス(東京都・青山)

【選者】クレヨンハウス 子どもの本事業部・伊藤保奈さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

たいせつなひとへ

お孫さんとおばあちゃん、おじいちゃんが顔を寄せ合って笑い合ったり、友人と口角泡を飛ばして議論し合ったり、この2年そんなことができないでいます。だれもが、こころのうちにさみしさを溜め込んでいるのではないでしょうか。ゆっくりと絵本を開く、そんなひとときのこころ豊かな時間をプレゼントしませんか。

【選んだ理由】

 黒い表紙に「Merry X’mas」と手書きされたメッセージカードや木の実がレイアウトされたシックな絵本。ページを開くと、五味太郎さんの言葉と、寺崎誠三さんの写真が響き合います。

 目に見えないものなのに、どこかにいる気配がする。冬の凛とした空気の中に。何げない日常の暮らしの中に。それは履き慣れたスニーカーの中かもしれないし、とっくりセーターの編み目の中かもしれない。葉っぱを伝うひとしずくの水の中にかもしれない。とりたてて気にするようなことではないけれど……。そこにあるたしかな大切なことを、もういちど。

 クリスマスを、なにげない日常の愛おしさを、コロナ禍のいま、よりいっそう強く感じます。

クレヨンハウス
住所 東京都港区北青山3-8-15
営業時間 11:00~19:00
TEL 03-3406-6492
1976年の創業当時から、座り読み大歓迎のテーブルのある子どもの本の専門店。45周年を迎えました。ロングセラーを中心に、絵本や児童書が約5万冊。毎月スタッフ全員でおすすめしたい作品を選ぶ「新刊会議」開催。
クレヨンハウス公式オンラインショップで購入

【お知らせ】
クリスマスフェア開催中~12/25(土)
「クリスマスに贈りたい絵本フェア」
今年のクリスマスは、会えない時間が長かった分、大切なひとの顔を思い浮かべながらプレゼントを選びませんか。

5 代官山 蔦屋書店(東京都・代官山)

【選者】代官山 蔦屋書店 キッズコンシェルジュ・瀬野尾真紀さん

B.読んで衝撃的だった1冊

【贈る対象のひと】

大切な存在との別れを知る人へ

【選んだ理由】

 かけがえない存在が「いなくなる」。小学3年生のモモヨが周囲の人に支えられながら、そのことを受け入れていく。ですが、この喪失の物語は、悲しいだけではなく、とても暖かいのです。それは、モモヨを取り巻く人たちが、彼女のことを慈しみ愛しているから。

 三人称でありながら、ひょうきんで飄々としたモモヨの独白を思わせる文体は、未整理でうまく言葉にできないだけで、実は大人が思っている以上に、様々なことをぐるぐると考えている、そんな子どもの頭の中の世界そのものです。

 また、四季の描写はどこまでも美しく、アカデミー賞作家加藤久仁生さんの挿絵とも相まって、自分もその景色の中にいて、モモヨやオイモと一緒に歩いているような、そんな気持ちにさせられます。

【お知らせ】
12月28日(火)まで、代官山蔦屋書店10周年記念としてjunaidaフェアを開催中!
このフェアのために新たに10種類の複製画を作成していただきました。直筆サイン、額装済みでお届けいたします。この機会をお見逃しなく。
junaidaフェアの書籍、グッズはオンラインショップでもお求めいただけます。
フェア詳細:https://store.tsite.jp/daikanyama/event/kids/23046-1739571026.html

6 ちえの木の実(東京・恵比寿)

【選者】ちえの木の実 店長・比留間 万記さん

B.読んで衝撃的だった1冊

【贈る対象のひと】

サンタクロースの存在を信じたい、全ての人へ

【選んだ理由】

 タイトルになっている疑問は、私も子どもの頃に抱きました。それを、こんなにも慈愛に満ちたことばで答えた大人が実際にいたことに、衝撃を受けました。

 1897年、8歳の少女が新聞社に送った一通の手紙。社説を通して伝えられたその返事は、アメリカでは古典のように語り継がれ、日本では絵本になりました。

 私たちの生活を豊かにしているものは、目に見えるものだけではないはず。1人の記者からの深い愛情は、サンタクロースはたしかにいる、ということを信じさせてくれます。子どもからサンタクロースの存在について聞かれた時、この絵本をそっと贈ってみてはいかがでしょうか。大人が読んでも、大切なプレゼントをもらったように感じる1冊です。

ちえの木の実
「一生の友だちになるような本と出会える場所をつくりたい」をコンセプトにしている、子どものためのセレクト・ブックショップです。お客さまのご所望に合わせて、1冊1冊大切に選書のお手伝いをしています。
住所 東京都渋谷区恵比寿西2-3-14 1・2F
TEL 03-5428-4611
営業時間 平日 11:00~19:00/土日祝 11:00~18:00(定休日:毎週火曜日)

【お知らせ】
 なかなかお店に行くことができない、という方には、“木の実便”がおすすめです。お客さまのご希望に合わせて選書し、定期的に本をお届けするサービスです。詳しくは、当店のホームページをご覧ください。また、多くのお声をいただき、2021年11月からおはなし会を再開しました。開催日時については、店頭やSNSでお知らせいたします。

7 つづきの絵本屋(岡山県・倉敷)

【選者】つづきの絵本屋 代表・都築照代さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

心穏やかに、癒されたい人へ

【選んだ理由】

 世界的に活躍する日本画家、千住博さんによる絵本です。まず、表紙の青に心惹かれます。子ジカが流れ星に誘われ、親の元から離れてさまよう、一夜の大冒険。そのうち夜が明けてきますが、ページをめくるたびに移り変わっていく空の色合いは息をのむほどに美しく、まるで画集を見ているかのよう…。左側の白いページは子ジカが進んでいく地図のみで表現され、文字がないからこそ、自由に想像しながら自分だけの物語を紡ぎだせます。

 何だか心がざわざわする昨今だからこそ、ゆっくりじっくり丁寧に味わいたい1冊です。

【お知らせ】
絵本作家accototo ふくだとしお+あきこ
『そんなにみないでくださいな』(KADOKAWA)原画展
日時 12月10日(金)~1月11日(火)
場所 つづきの絵本屋 ギャラリー
※サイン本・グッズ・ミニ原画 販売

8 ティール・グリーンin シード・ヴィレッジ(東京都・武蔵新田)

【選者】ティール・グリーンin シード・ヴィレッジ 店主 種村由美子さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

年齢を問わず大切な友人へ

【選んだ理由】

 クリスマスのお菓子にも欠かせない「くるみ」。そのちいさなくるみを手にのせて、耳をすますと…その中には、「ちいさな宝物」「りすの裁縫箱」「ちいさなおじいさんとおばあさんの家」「ちいさな街」…美しく豊かな想像の世界が広がります。そしてくるみを土にうめると、くるみは根を下ろし、長い時間をかけて大きな木になり、再びたくさんの実をつける。目に見えないものを想像する喜びとつながるいのちの素晴らしさが伝わってきます。

 あなたには、ちいさなくるみのなかに何が見えてくるのでしょうか? 目を閉じて耳を澄まし、五感を通して感じてほしい絵本です。きっと心の中の何かが変わることでしょう。

【お知らせ】
12月1日(水)から26日(日)まで、『あかいてぶくろ』(講談社)いりやまさとし絵本原画展を開催中です。

9 ニジノ絵本屋(東京都・都立大学)

【選者】ニジノ絵本屋 代表・いしいあやさん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

しばらく会っていない友人へ
コロナ前はよく一緒にランチやショッピングに出かけていた友人へ贈りたい1冊。
年末年始のギフトに山羊座の期間(12月22日~1月19日)に贈りたいそんな絵本。

【選んだ理由】

 この約2年の間、SNSでの交流がメインだった友人と久しぶりに会うことになり、大好きなイタリアンのランチを予約しました。私自身、外食自体が久しぶりで、なにか手土産を探していた時に、この絵本に出会いました。

 このサイズの絵本なら、渡した後の荷物の負担も少ない。何かお菓子でも…と、考えましたが、腐らず、気を遣わせることもない、気軽だけどちょっと特別にしたい。カバーを外すと絵本の表情が変わって、日本語とイタリア語のダブル表記なのも、イタリアンのランチの帰りに渡すのにぴったり。何年か経って、この絵本を見たときに今年の冬を思い出してくれたら嬉しいなあと思い選びました。

 イタリアンで友人とランチの予定があるのは、私の中にいる、空想の働く女性です。この女性になりきって選書エピソードを書きました。私自身は、友人と外食するのはもう少し先のお話になりそうです。

 この冬、少し特別な贈り物にぴったりの絵本。クリスマスプレゼントや新年のご挨拶のギフトにもおすすめの1冊です。

【お知らせ】
2022年1月7日(金)~2月2日 (水)『絵本ができるまで展』開催 at ニジノ絵本屋
絵本『種をあつめる少年』の絵本展が開催されます。

絵本『種をあつめる少年』公式サイト:https://nijinoehonya.studio.site/tas
※この絵本の購入情報はこちらのサイトをご確認ください

10 ブックハウスカフェ(東京都・神保町)

【選者】ブックハウスカフェ 店長 茅野由紀さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

誰かの大事な人へ

【選んだ理由】

 なにしろ本のサイズからして、受け取った人は(大きさに)圧倒されるはずだから、どんなラッピングでも、いえ、ラッピングなしでも、インパクト大! そして、繊細なようでしっかりと描かれる絵は、うっとりするほど美しい。物語は、森の動物たちのユニークかつ心温まる友情物語で、大切な人へ贈り、できれば、一緒に読みたいです。

 でも、選んだ理由は実はもう一つありまして。何度も読んでいるうちに、ふと浮かぶ疑問が。登場する仲良しの動物たちは、本来の世界では天敵であったり、季節設定に無理があったり、寿命が短いためお話に矛盾が見えたり…フィクションだから、そこは目をつぶる、とするのも良いですが、そこは、非戦を描く作者ならではの、熱いメッセージが隠されているんじゃないでしょうか。温かな物語のカバーのかかった、社会へ向けた強烈な皮肉が込められた本なのではないだろうかと、つい深読みしたくなるような、味わい深い物語だったのです。

ブックハウスカフェ
東京神田神保町の子どもの本専門店&カフェ。赤ちゃんから大人までの居心地のよさを考えられた広々した店内。1万冊の本がつまった書棚の中央にカフェスペースがあり、軽食からお酒まで楽しめるお店。
住所 東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F
TEL 03-6261-6177
営業時間 11:00~18:00(年末年始を除き、年中無休)
ブックハウスカフェいちおしの絵本や貴重なサイン本などが見つかるオンラインショップはこちら

11 ムッチーズカフェ(東京都・西荻窪)

【選者】Mucchi’s Café(ムッチーズカフェ)店長で絵本専門士の井上まどかさん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

日々の生活でなかなか自分の時間がとりにくい友人へ

【選んだ理由】

 淡いピンクの表紙、なんて穏やかな表情のシロクマでしょう。ひとめぼれして手に取りました。

 シロクマのもとにプレゼントで送られてきた いちご。魅力的でうっとりするいちごの存在感。さらにシロクマには毎年、贈られるいちごの粒の数が増えていきます。
日常的・当たり前に存在するもの、あれ…どうしてだろう、何かが次第に減っている…。

 表紙の装丁はもちろん愛くるしいのですが、ストーリーにもぐっと魅了されます。日々の生活の中で、なかなか自分一人の時間がとりにくい友人へ…。眺めても美しいので表紙を向けて飾ったり、一人の時間を作ってじっくりと読んでもらいたい1冊です。

Mucchi’s Café(ムッチーズカフェ)
東京都杉並区西荻北5-22-6
TEL:03-5364-9190
URL:https://mucchis-cafe.jimdofree.com/

【お知らせ】
メンドリと赤いてぶくろ』絵本原画展 好評開催中!!~12/28まで
詳しくは【お店のHP】を参照ください

イラスト:野瀬奈緒美