戸次重幸「加藤くんの小説を読んでると、『そろそろ僕も……』という気持ちにさせられます」

あの人と本の話 and more

更新日:2017/2/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、現在放送中のドラマ『嫌われる勇気』で刑事・小宮山役を好演している戸次重幸さん。作家&役者・加藤シゲアキの魅力や共演者との秘蔵エピソードなど、ドラマの撮影現場の裏話を語ってくれました。

 戸次さんと加藤シゲアキの小説との出会い。それは、本誌でも語っているように、3年前に自身の小説を書く際に読んだ『ピンクとグレー』が始まりだった。

「そのことを、『嫌われる勇気』の撮影現場で加藤くんにお伝えしたんですね。そしたら翌日に『傘をもたない蟻たちは』をプレゼントしてくださったんです。しかもサイン付きで! 本もすごく面白くて、一気に読んじゃいました」

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 その日以降、撮影現場での休憩中は、「加藤シゲアキ先生へのインタビューの時間になった」そうだ。

「例えば、“毎日忙しいと思うけど、いつ書いてるの?”とか、“いつもオチは先に決めてから書き始めてるの?”とか。この本には6つの短編が収録されているんですけど、ひとつひとつに対して、僕が感動した部分をお伝えし、そのうえで物語の制作裏話を聞かせてもらいました。加藤くんもいい人だから、何でも教えてくれて(笑)。ものすごく贅沢な時間でした」

 おかげですっかりと打ち解けたというふたり。「先日も若者文化に触れるためにアプリの「スノー SNOW」で顔を入れ替えて遊んでました。“Wシゲ”ということで(笑)」と、仲睦まじいエピソードもあかしてくれた。

「今回のドラマの現場は、加藤くんに限らず、びっくりするぐらいみんな仲がいいんですよ。香里奈さんは気遣いも素晴らしくて、クリスマスの時はスタッフや共演者だけじゃなく、エキストラの方にまでプレゼントを配ってましたし。その光景を見て、自分の主演ドラマの時は何もしなかったなぁと反省しましたけど(苦笑)。それに、加藤くんは演技も魅力的で。“リアル”と“オーバー”の中間のいちばんいいところを巧みに表現しているから、共演していて本当に楽しいですね。歌も歌えて、ダンスも踊れて、芝居もできて、小説まで書ける。どんだけスゴい人なんだって思いますけど(笑)。自分ももっともっと頑張らないといけないなと、といい刺激をもらってます」

 その加藤から感化されたことがもうひとつ。

「僕もまた小説を書きたいなって思うようになりました。『ONE 2』でもいいし、また違ったスタイルに挑戦してもいい。とにかく、何かを書きたいなっていう思いが今強いんです。それが実現できるのが、いつになるかはまだ分かりませんが、ぜひ期待していただければと思います」

(取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之)

戸次重幸

とつぎ・しげゆき●1973年北海道生まれ。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。俳優として活動するかたわら、脚本家、演出家としても活躍。14年には小説『ONE』(KADOKAWA)も上梓した。現在、公開中の映画『一週間フレンズ。』に出演。公開待機作に『ゆらり』(17年夏公開予定)、『エキストランド』などがある。
ヘアメイク=横山雷志郎(Yolken) スタイリング=九(Yolken)

 

『傘をもたない蟻たちは』書影

紙『傘をもたない蟻たちは』

加藤シゲアキ KADOKAWA 1300円(税別)

居酒屋で見かけた、自分の腕にカラースプレーを吹きかける女。美大に通う文登は、その後、深夜の川沿いで橋脚にグラフィティを描く彼女と偶然再開し、やがて満たされない“何か”を埋めるように、本能的に惹かれあっていく……(「染色」)。NEWSの加藤シゲアキが人間の「生」と「性」をリアルに描いた6つの短編集。

※戸次重幸さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ3月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

ドラマ『嫌われる勇気』

原案/岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社) 脚本/徳永友一、大石哲也、ひかわかよ 出演/香里奈、加藤シゲアキ、戸次重幸、椎名桔平ほか フジテレビ系で毎週木曜22時より放送中 
●150万部を超えるアドラーの心理学書『嫌われる勇気』を刑事ドラマとして大胆にアレンジ。女刑事・蘭子(香里奈)は己の信念のみで行動する“アドラー女子”。そんな彼女が独自の視点で事件の深層を見極め、次々と真実を暴きだしていく。
(c)フジテレビ