学校中の教室に棲む怪異。その観察を強いられた少年少女の恐怖と絶望を描く大人気シリーズ「ほうかごがかり」【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/2/7

ほうかごがかり甲田学人/電撃文庫/KADOKAWA

 ちりちりと精神が、正気がかき乱され、声にならない悲鳴をあげる。突然爆音で鳴り響いた小学校のチャイム。自室のドアの向こうに広がる異次元の学校。おぞましい化け物と、自らに課せられた使命。――あっという間に引きずり込まれてしまった。ひとつも希望のない世界に。どこまでも続く暗闇の、血なまぐさい世界に。

 そんな『ほうかごがかり』(甲田学人/電撃文庫/KADOKAWA)は、『Missing』や『断章のグリム』などで知られるホラーの名手・甲田学人氏による“真夜中のメルヘン”小説。宝島社刊『このライトノベルがすごい! 2025』総合新作部門7位(文庫部門12位)に選ばれた大人気シリーズだ。甲田学人氏の作品を一度でも読んだことがある人は、彼の作品に立ち込める途方もない恐怖をご存じだろう。『ほうかごがかり』も同様。……いや、正直ここまでとは思っていなかった。嫌な方へ嫌な方へとどんどん転がっていく物語。どうしてこんな目に遭わなければならないのか。こんなに理不尽なことってないと思いながらもページをめくる手が止まらない。最新4巻が刊行され、物語が第2部に突入した今だからこそ、まだ『ほうかごがかり』を読んでいないという人は、1巻、第1部から、この情け容赦ない世界に足を踏み入れてほしい。

 小学6年生の二森啓はある日の放課後、教室の黒板に突如として自分の名前が「ほうかごがかり」という謎の係名と共に書き込まれているのを目撃する。誰かのイタズラだろうと思い、帰宅するが、その日の深夜、啓の耳には突如学校のチャイムが鳴り響き、自室の開いた襖の向こうには暗闇に満ちた異次元の学校「ほうかご」が広がっていた。その学校は一見普段通っている小学校のようだが、一歩足を踏み入れれば、絶えず不気味な気配が漂い、教室にはおぞましい怪異が跋扈(ばっこ)し、校庭には無数の墓標が立ち並んでいる。どうやら啓をはじめとする6人の少年少女が「ほうかごがかり」というものに選ばれてしまったらしい。課せられたのは、学校中の教室に棲む「無名不思議」と呼ばれる世にも恐ろしい怪異の管理と記録。毎週金曜日の真夜中12時12分12秒から4時44分44秒までの間、彼らは、それぞれが担当する化け物を観察することになる……。

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 突然訳も分からぬ不気味な「かかり」に選ばれたというだけで理不尽なのに、与えられた使命はあまりにも過酷。「毎週金曜日」だけ、「観察と記録」と聞くと簡単そうに思えるかもしれないが、対峙するのは怪異。見つめ続けて正気でいられるはずがなく、どんどん少年少女の精神は蝕まれていく。かといって目を背けることはできない。記録をしなければ、この怪異は成長してしまう。怪異が成長するのもしないのも「ほうかごがかり」次第。並外れた絵の才能をもつ啓は屋上に潜む怪異「まっかっかさん」を捉えるべく筆を手にするのだが……。

 無限の質量をもって膨大な闇が、絶望が押し寄せてくる。救いはないのか。想像を超える最悪の事態が、次々と襲いかかり、呆然となる。むごいにも程があるだろう。子どもたちひとりひとりの懊悩が、狂う過程が、生々しく描かれ、それらが手にとるように理解できてしまうことが何より恐ろしい。心の底の澱をかき混ぜるように、終始不安をかき立てられ続け、じわ、と冷たい汗が全身に浮かぶ。できることなら逃げ出したい。だけれども、ひとたび読み始めれば、小学生たちを待ち受けている運命から目が離せなくなる。
 ああ、なんと恐ろしい読書体験ができるシリーズなのだろう。未だかつて感じたことのないほどの戦慄に思わず身が縮こまる。読んでいるこちらまで狂わされそうな「ほうかご」の世界を、現実にまで侵食してきそうなそれを、あなたの傍にもぜひ。
文=アサトーミナミ

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