高級チョコレートの値段が高い理由4選/教養としてのチョコレート

暮らし

公開日:2025/2/12

日本唯一のチョコレートジャーナリストが贈るチョコの「意外な秘密」!

チョコレートには、魅力的な物語と歴史が秘められています。

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身近なのに意外と知らないチョコレートの教養、健康効果、歴史、カカオの謎をチョコレート専門家がわかりやすく解説。

チョコレートの本当の姿や素敵な一面を学べる一冊『味わい深くてためになる 教養としてのチョコレート』から、興味深いトピックス4選をお届けします!

※本作品は『味わい深くてためになる 教養としてのチョコレート』 (市川歩美/三笠書房) から一部抜粋・編集しました

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『味わい深くてためになる 教養としてのチョコレート』
(市川歩美/三笠書房)

「高級チョコレート」の値段の謎

 ある日、高級チョコレート専門店に足を運び、ショーケースを覗(のぞ)くと、まるで宝石のようにキラキラと輝くチョコレートボックスが並んでいました。箱の中には五粒のチョコレート。お値段を見ると、なんと二〇〇〇円! 「え、一粒四〇〇円もするの!?」と驚いてしまいました―。

 このような経験、したことはありませんか? 
 私はこれに似たお話を、よく男性からお聞きします。以前、メディアでご一緒したタレントさんもそうでした。「一粒で原宿から亀有(かめあり)まで行けるやん」とか「牛丼が食べられるで」と彼はおっしゃっていました(笑)。
 日本では「板チョコは一枚一〇〇円程度」というイメージが根強いです。三〇年以上つづいたデフレやチョコレートメーカーさんの努力によって、板チョコの価格が長年あまり変動してこなかったことが、このイメージを作っているのでしょう。
 日本は高級チョコレートを、より高価だと感じてしまう国なのかもしれません。

こだわり抜いた「原材料」と「製造コスト」

「高級チョコはなぜこんなに高いの?」とは、メディアの方からよくいただく質問です。高級チョコレートの値段が高い理由を四つあげてみます。

 まず一つ目は、こだわった原材料の価格が反映されるためです。
 高級チョコレートブランドのショコラティエ(チョコレート職人)は、味のプロフェッショナルです。カカオやチョコレートもそうですが、フルーツやナッツ、スパイスや乳製品など、あらゆる選び抜いた素材が使われます。
 例えば、いちごを使うにしても、どんないちごでもいいわけではありません。ショコラティエが認めた特定の生産者や農園の、希少ないちごだけを使用することもあります。お酒も風味を重視してプレミアムなものを選べば、その分、原材料の価格は上がりますね。
 原材料費が高くなれば、必然的にチョコレートの値段は上がっていきます。

 二つ目は、一般的に「少量生産で手作りのものほど、価格は高くなる」傾向があるからです。チョコレート職人が手作業で作る場合だと、時間と手間がかかっているため価格は上がります。
 さらに、小規模なブランドであれば小ロットで生産を行なうため、原材料の調達コストが高くなる傾向があり、結果としてチョコレートの価格は上がります。これはチョコレートに限ったことではありませんが、一般的に大ロットよりも小ロットで生産される商品は、コストがかさむため価格が高くなります。

 三つ目は、特に輸入チョコレートの場合です。
 遠方からチョコレートをベストな状態で輸入するためには、特別な保存技術や輸送方法が欠かせません。こうした日本への輸送費やチョコレートの保存費用も、チョコレートの価格に影響を与えています。

心惹かれる「ブランドの世界観」

 最後の四つ目ですが、ラグジュアリーな高級チョコレートブランドは独自の世界観を作り、それを維持するためにコストをかけているからです。
 高級ブランドが提供するのは、チョコレートの味だけではありません。実際に訪れてみると感じられると思いますが、店の立地、インテリア、パッケージ、接客までを含めた「豊かな体験と時間」という価値を顧客に届けています。
 世界的に有名な高級ホテルやラグジュアリーなファッションブランドが、チョコレートを手がけていることも多いです。スタッフの美しい制服やテーブルに飾られたフラワーアレンジメント、カトラリー、紙袋、リボンをはじめ、すべてのディテールに美意識が行き届いているのが、高級チョコレート店なのです。
 チョコレートブランドには、味だけでなく、その世界観にもファンがついています。高級チョコレートの価格には、私たちに豊かな時間と体験を提供するためのコストも含まれているわけです。

カカオの不作によるチョコレートの値上がり

 ちなみに、チョコレートの価格といえば、二〇二三年秋から「カカオ豆の国際価格の高騰」が問題となっています。
 カカオの値段が高騰している主な理由は、世界の主要なカカオ生産国である西アフリカのコートジボワールとガーナでの、カカオの不作です。その影響でカカオ豆の価格が上昇し、それに伴ってチョコレートの価格も世界的に上昇傾向にあります。日本のチョコレート商品も同様です。
 さらにカカオだけでなく、乳製品や卵、果物、ナッツの価格も上昇し、輸送コストも上がっています。そのため、おそらく今後数年は高級チョコレートに限らず、身近なチョコレートも徐々に値上がりしていくことになりそうです。

<第2回に続く>

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